2021.03.25

研究レポート

Web広告は直接CVで評価すればよい。アトリビューションの実態調査

Web広告は直接CVで評価すればよい。アトリビューションの実態調査

調査に至った背景

Web広告のアトリビューション分析に意味はあるのか?

Web広告におけるアトリビューション分析とは、日頃から目にしている直接CVだけではなく、過去にどこかで見たことがあるという間接CVも追いかけることで適切な予算配分をおこなうべく実施されるものである。

しかしながら、アトリビューション分析の結果はしばしば「直接CVが取れていない広告も一部CVに貢献していると広告主へ説明するための材料」として使われており、次なるアクションへ活かされていないことも多い。

そこで今回は「複数社のアトリビューション分析結果から具体的にどのような示唆が得られるのか」「現場では実際どのようにアトリビューション分析がおこなわれているのか」という2つの観点から、Web広告におけるアトリビューション分析の実態を調査。成果につなげるためにはどのように実施されるべきかを明らかにする。

調査内容

Ⅰ. Googleアナリティクスの「コンバージョン > モデル比較ツール」データよりアトリビューション分析を実施

AIアナリスト登録企業のGoogleアナリティクスより「コンバージョン > モデル比較ツール」のデータを抽出。CV数が十分にある10社を対象に「有料検索」「ディスプレイ広告」経由のCV数をモデル別に洗い出した。

使用したモデルはGoogleアナリティクス上に予め存在する以下の7つだ。

アトリビューション分析モデル

また、データ抽出条件の詳細は以下のとおりである。

データ抽出条件詳細

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Ⅱ. アトリビューション分析がどのように実施されているのかアンケート調査

広告主あるいは広告代理店の立場でWeb広告に携わっている方を対象に、アトリビューション分析にどれほど時間をかけているのか、分析結果をどのように活かしているのかなどをアンケートにて調査した。

アトリビューション分析がどのように実施されているのかアンケート調査

Web広告の運用実態調査と同じアンケート内で調査を実施

調査結果

Ⅰ. 複数社のアトリビューション分析結果から見えた傾向

直接CVと間接CVの比較

Googleアナリティクスで標準的に用いられている直接CVを見るモデル「最後の間接クリック」を基準とし、間接CVを見るモデル「起点」や「線形」などとCV数を比較した。

有料検索
最後の間接クリック」を基準とし、間接CVを見るモデル「起点」や「線形」などとCV数を比較
基準との比較値の散布図

「Google広告のラストクリック」のCV数が基準よりも総じて多いのは、有料検索=Google広告中心であることを考えると当然の結果だろう。

次に、「起点」のCV数も基準より平均108.8%多かった。この差をどう捉えるべきかは、基準となるCV数のボリュームとCVの定義によって変わる。たとえば、基準となるCVが年間100,000件であれば9,000件の差であり、年間100件であれば9件の差だ。前者であれば広告の予算配分に加味すべきであり、後者であればその必要はないだろう。さらには、CVの定義が商品購入なのか、ホワイトペーパーダウンロードなのかによってもビジネスへのインパクトは異なる。

また、C社のように「線形」「減衰」「接点ベース」など中間接点を加味するモデルが揃って高い数値となるケースも見受けられた。ただし「線形」「減衰」「接点ベース」など中間接点を加味したモデルのみCV数が多いケースは存在せず、初期接点から有料検索に触れていると推測される。

参考までに、「google / cpc」「yahoo / cpc」などメディア別に細分化したCV数も散布図へ落とし込んだが、ほぼ変わらない結果となった。

※基準の年間CV数が20未満のデータは除く

メディア別に細分化したCV数
ディスプレイ
メディア別に細分化したCV数
基準との比較値を散布図

ディスプレイは全体的に基準よりもCV数が下回っているが、有料検索同様「Google広告のラストクリック」「起点」が一部上回るケースがあった。また、D社のように「線形」「減衰」「接点ベース」が揃って高い数値となるパターンも見受けられた。

このCV数の差をどう捉えるかは、先程と同じく基準となるCV数のボリュームとCVの定義によって異なるため、各社にて吟味が必要である。

また、こちらも「google / display」「yahoo / display」などメディア別に細分化したCV数を散布図へ落とし込んだが、差が顕著に表れた程度で全体の傾向は変わらなかった。

※基準の年間CV数が20未満のデータは除く

メディア別に細分化したCV数

直接CVと間接CVの相関

基準である「最後の間接クリック」モデルにおける直接CV数と、「起点」や「線形」モデルにおける間接CV数には大なり小なり差があったが、続いて “直接CVと間接CVに相関関係はあるのかどうか” も調査をおこなった。

定量的に相関の有無を確認するため、サイト全体のセッション数から簡易CV率を算出して相関係数(※)を導いた。

※相関係数:2種類の変数における関係性の強弱を表す指標。-1以上1以下の値をとる。1に近いと正、-1に近いと負の相関があり、0に近いと相関がない。

有料検索
CV率一覧
基準↔各モデルのCV率の相関係数
相関係数

相関係数は0.98以上とほぼ1に近く、基準と各モデルには強い正の相関があると言える。CV率をプロットした散布図においてもデータが一直線上にきれいに並んだ。

「google / cpc」「yahoo / cpc」などメディア別に散布図へ落とし込んでも変わらない結果となった。

関係
ディスプレイ
CV率一覧
基準↔各モデルのCV率の相関係数
相関係数

有料検索同様、ディスプレイも相関係数が0.98以上とほぼ1に近く、基準と各モデルには強い正の相関がある。

「google / display」「yahoo / display」などメディア別に細分化し散布図へ落とし込んだ結果、基準↔起点グラフの0.1%以下の領域でややバラつきが見受けられたが、総関係数は0.99と変わらず高い数値だった。

相関係数

基準↔起点グラフの0.1%以下の領域を拡大してみると、トレンドラインの下にややはみ出たデータが4つ存在した。Google・Yahoo!・LINE・Criteoとメディアはバラバラだったが、最も外れた位置にあるCriteoの「起点」が基準に対して低いのは、リマーケティングに寄るものだと考えられる。

基準↔起点

以上より、有料検索・ディスプレイいずれも直接CVと間接CVには強い正の相関関係があるとわかった。つまり直接CVがとれる広告は間接CVもとれる広告であり、逆もまた然りである。

参考

以下、参考までに広告経由以外のアトリビューション分析結果も紹介する。

オーガニック検索

「起点」のみ基準をやや上回るケースが見受けられた。検索エンジンで情報収集しているうちに初期接点を持つが一度離脱し、別のチャネルを経由してCVに至る、といったユーザー行動が影響していると予想される。

参照元サイト

基準よりCVが多いことはほぼなかった。参照元サイトにおいて意欲が高まった状態で自社サイトへ流入し、そのままCVに繋がっている可能性が高い。

ソーシャルメディア

オーガニック検索同様、「起点」のみやや多い傾向にある。

Ⅱ. アンケート結果から見えたアトリビューション分析の実態

調査Ⅱでは、実際にWeb広告に携わる方々がどのようにアトリビューション分析に取り組んでいるのかアンケート調査をおこなった。

Q. 現在、アトリビューション分析をおこなっていますか?

アトリビューション分析をおこなっているのは60人中15人と4分の1に留まった。

以下の設問にはアトリビューション分析をおこなっている企業にのみ回答してもらった。

Q. 現在、1ヶ月あたりどれくらいの時間をかけてアトリビューション分析をおこなっていますか?近いものを選んでください。

Googleアナリティクス等で簡単にデータを確認できるため、アトリビューション分析にかけている時間は1ヶ月あたり1時間未満が半数以上だった。

Q. 現在アトリビューション分析をおこなっている場合、どのモデルを見ていますか?※複数回答可

代表的なモデルともいえる終点・起点・線形が多い結果となった。

Q. アトリビューション分析の結果はどのように活かされていますか?※複数回答可

「直接コンバージョンがとれていない広告も一部貢献していると周囲に説明するときに使っている」という回答が87%と非常に多く、「起点や中間接点となっている広告の予算配分を決めるときに使っている」と回答したのは33%に留まった。

Q. アトリビューション分析には意味があると思いますか?

アトリビューション分析を実施している人にとっては「どちらかというと意味がある」という回答が67%を占めた。

本調査の提言

「起点」や「線形」モデルのCV数を見ると、広告の間接効果は確かに存在することがわかる。しかしながら直接CVと間接CVには強い正の相関関係があり、「直接CVは全くのゼロだが間接CVだけたくさん獲得している広告」は基本的に存在しない。これはつまり、わざわざ間接CVを確認せずとも、直接CVを見ればその広告の有用性を判断できるということだ。

また、実際にアトリビューション分析に取り組んでいる人のアンケート結果を見ると、分析結果は関係者への説明材料として使われていることが多いとわかった。広告の予算配分に活かせるケースももちろんあるが、特に年間CV数1,000件以下の企業においてはアトリビューション分析の前後でとるべき施策の判断は変わらないことが多いだろう。次なる改善につながらない分析なのであれば、過度に時間を割くのは避けるべきだ。

ソウルドアウト株式会社 上席執行役員 長谷川氏のコメント

ネット広告代理店の現場プレーヤー時代、お客様から広告予算をお預かりし、Web広告を出稿いただいてきた。商材を理解し、ユーザーを理解し、媒体とメニューを選び、シミュレーションを作り、バナーの訴求も提案する。発注をいただけた時の喜びは忘れられない。期待も当然大きい。

掲載開始報告の電話口で「結果が楽しみですね!」なんて、やりとりをして、数日後。広告効果測定ツールの管理画面を見ても、直接CVがほとんど発生していない。激しく胃が痛み、脂汗が流れる。何度リロードしても結果は変わらない。運用型でなければ差し替え不能。もう取り返しがつかない。ゲームオーバーだ。そんな経験がある。何度もある。

報告レポートの考察コメントを書く時、ふと脳裏をよぎる「間接効果」のキーワード。その都度、アトリビューション分析について真剣に学ぶことになる。

本調査は、そんな切実な状況に置かれた代理店担当が抱く、一縷の望みをことごとく打ち砕く結果となっている。「直接CVは全くのゼロだが間接CVだけたくさん獲得している広告」は基本的に存在しない。これが真実。実績データで証明された。相関係数は0.99。ぐうの音も出ない。

直接CVが無かったWeb広告を、見えない間接貢献の可能性を理由に正当化することは許されない。もし、そんな報告をしてくる代理店担当者がいたら、この調査のURLをそっと返信して欲しい。

ただ、その担当者が、実力不足を反省し、結果に真摯に向き合い、原因を分析、考察し、次の提案を持ってきたら、一度は聞いてあげて欲しい。厳しい目で評価して、筋が良ければ、ぜひ検討していただきたい。挑戦と失敗から生まれた提案は成功につながっているかもしれないからだ。

WACUL 取締役CIO 垣内のコメント

間接効果のある広告は、直接効果も高いため、結果的にアトリビューションを見る必要はない。

皆さんは、30日以内に見た広告を1つでも覚えているだろうか?大半の人は昨日見た広告すら覚えていないだろう。クリックした広告ならまだしも、表示されていただけの広告など覚えているはずがない。もし覚えているとすれば、それは買おうかどうか迷ってクリックし、買う直前まで悩んで、そこから買うのをやめたような場合である。こうした広告からは直接CVも間接CVも等しく発生するのだ。

一方で、世の中には認知効果を狙った広告というのもあるし、それが全て無駄だとは思わない。しかしそうしたインパクトがあって魅力的な広告からは、当然のように直接CVも発生するため、結局はアトリビューションを見ても見なくても評価が変わらないという現象が起きる。

もしアトリビューション分析をしなくて不安だという人は、Googleアナリティクスのモデル比較ツールを1ヶ月に1回確認すれば良い。見ても見なくても大して変わらないことがすぐ分かるはずだ。

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