2019.07.03

研究レポート

B2Bサイトにおけるコンテンツマーケティングのあるべき姿についての提言

-SaaSを扱うB2BサイトでのSEOコンテンツ本数と成果の関係についての調査

調査に至る前提

SaaSを扱うB2B企業でコンテンツによるSEOが注目されている

コンテンツマーケティングは株式会社WACULも含め多くのB2B企業で用いられており、特にSaaSを扱うサイトとの親和性が高い。事実、世界のトップSaaS企業のうち、89%がコンテンツマーケティングに取り組んでいる。(Cobloom, ”The State of SaaS Content Marketing 2017”)SaaSを扱うB2BサイトでコンテンツによるSEO(以下、コンテンツSEO)が盛んな理由として、以下の3点があげられる。

第1に、競争が激しいビッグキーワードでなく、スモールキーワードでの流入増が期待できる。スモールキーワードは具体的で語句数が多く、競合が少ないために順位を上げやすい。

第2に、検索ユーザーのニーズと自社サービスの合致度が高めやすく、優良な見込み客にアクセスできる可能性が高い。

そして第3に、個人(アフィリエイター)と比べて、法人は専門性の高い確かな情報を展開しやすい。充実したコンテンツをサイト内に増やすことで、知識・経験の豊富さをアピールでき、購入・契約に繋がる確率が上がる。

コンテンツSEOは本当に成果に貢献するのか

コンテンツSEOでは、初期投資やかかる労力が大きいため、中長期施策というイメージが強く、手軽には始められない。実際、検索エンジンの評価が安定して、成果が出るまでには時間がかかり、初期段階はコンテンツ数自体が少ないので集客数も乏しくなる。また、成果の出るやり方がわからず、徒労に終わる企業も少なくない。

このような理由から、コスト、時間、労力に対して相応な効果が出るのか疑問に感じ、短期視点の施策を優先しがちである。しかし、先進的な企業はすでに取り組んでおり、いずれ多くの企業が取り組んでいくと思われるため、可能な限り早く始めて先行者利益を得ることが望ましい。
そこで本レポートでは、本当に成果につながるコンテンツSEOの取り組み方をコンテンツの内容や本数と効果の関係に着目して調査した。

調査内容

SaaSを扱うB2B企業を対象とし、SEOコンテンツ形式によって分類した

株式会社WACULの提供する、AIがWebサイトの診断から改善提案まで自動で行う「AIアナリスト」上に登録されている28,000件のサイトの中から、SaaSを扱うB2B企業という形でサイト特性を絞ってサイトデータを抽出し、企業横断的に分析を行った。この対象に絞った理由は以下の通りだ。

  • B2Bビジネスでは商品、サービスを購入するまでの検討期間が長く、判断が慎重なのでブランドへの信頼度が意思決定に大きな影響を与えると考えられるため
  • B2Bにおける顧客は企業のWebサイトを情報源として活用することが多く、売上貢献度が高いため
  • B2Bでは専門性が高いことが多く、SEOコンテンツを展開しやすいため
  • ECサイトでは商品数を増やすことで自然とサイト内容が充実してSEOにつながるが、SaaSを扱うBtoBサイトでは同じやり方は難しく、情報コンテンツにより充実化させる必要があるため

SEOコンテンツを含むサイトの中でもコンテンツの形式が様々であるため、下表の二種類に分類して調査した。情報ノウハウ提供型は、コンテンツに専門性・独自性があり、自社の知見を提供しているものである。特徴として、人気キーワードでのアクセスだけでなく、アクセス数の少ない多数のキーワードでのアクセス数を積み上げていくという点がある。一方で読み物型は専門性・独自性は比較的低く、コンテンツ一本が軽く時事性の高いものが多い。各型の概要を図表1に示す。

図表1:SEOコンテンツの分類

SEOコンテンツの本数と訪問数・CV数の関係を調査した

調査の流れは以下の通りである。

  1. SEOコンテンツの本数とコンテンツページを入口とした訪問数の関係
    SEOコンテンツの本数が増加するとき、コンテンツページを入口とした訪問数はどのような挙動を示すのか明らかにする。
  2. コンテンツ形式別で見た本数と成果(訪問数・CV数)の比較
    SEOコンテンツの成果への貢献度を、既存のコンテンツ本数に対する「コンテンツページを入口とした訪問数、CV数」によって評価した。この貢献度をコンテンツ形式別で比較することで、どちらの形式の方が効率よく成果を挙げられるか判断する。

調査結果概要

Ⅰ.SEOコンテンツの本数とコンテンツページを入口とした成果(訪問数・CV)の関係

  1. 訪問数の増加はCV数の増加に貢献する
  2. SEOコンテンツ本数の増加に伴い、コンテンツページ入口訪問数は加速度的に増加する

Ⅱ.コンテンツ形式別で見た本数と訪問数、CVの比較

  1. 読み物型ではコンテンツ本数が166本以下、情報ノウハウ型では59本以下の時、本数と成果の相関がやや小さく成果が不安定である
  2. 情報ノウハウ提供型は読み物型に比べ、コンテンツ本数に対する成果(CV数)が13倍である
  3. 情報ノウハウ提供型における訪問数は、読み物型の4.58倍CVへ貢献する

調査結果詳細

Ⅰ.SEOコンテンツの本数とコンテンツページを入口とした訪問数の関係

1.訪問数の増加はCV数の増加に貢献する

下図から分かるように、ユーザーがウェブサイトへ流入する際に入口となるページがコンテンツページである割合(コンテンツ入口訪問数割合)が増えるほど、「コンテンツページから訪問してCVに至った数/全CV数」の割合(コンテンツ流入CV数割合)は増える(図表2)。したがって、コンテンツページを入口とした訪問数が増えれば成果についても高くなると言える。

なお、図表2でコンテンツ入口訪問数割合(%)が0~20→20~40のときコンテンツ流入CV数割合(%)は減少しているが、初期段階はGoogleに評価されていないなど不安定な要素が多いためであると思われる。

図表2:コンテンツ流入CV数割合(%)とコンテンツ入口訪問数割合(%)

2.SEOコンテンツ本数の増加に伴い、コンテンツページ入口訪問数は加速度的に増加する

図表3では読み物型におけるコンテンツ本数と訪問数の関係を示している。図表3からわかるようにav二次関数で近似でき、その数式はy = 0.306x^2 + 395.32xと算出された。つまり、コンテンツ本数の増加(x)に対して訪問数が加速度的に増加することがわかった。

図表3:読み物型におけるコンテンツ本数と訪問数の関係

次に、図表4では情報ノウハウ提供型におけるコンテンツ本数と訪問数の関係を示している。図表4からわかるように、情報ノウハウ提供型の数式も二次関数で近似でき、その数式はy = 6.3085x^2 + 439.52xと算出された。つまり、読み物型と同様に、コンテンツ本数の増加(x)に対して訪問数が加速度的に増加することがわかった。

図表4:情報ノウハウ提供型におけるコンテンツ本数と訪問数の関係

図表5では情報ノウハウ提供型、読み物型を合わせた全体の結果を図示している。加速度は情報ノウハウ提供型では12.617x+439.52、読み物型では0.612x+395.32と算出された。つまり、式からも図表5からも分かるように、情報ノウハウ提供型の方が本数増加に伴い加速がどんどん急になっていくと言える。

図表5:コンテンツ本数と訪問数の関係

※図表3~5では、コンテンツ本数0~200本のデータ量が多いため、見やすくするために横軸を対数目盛りで表示している。

Ⅱ.コンテンツ形式別で見た本数と成果(訪問数・CV数)の比較

1.読み物型ではコンテンツ本数が0~166本、情報ノウハウ型では0~59本の時、本数と成果の相関がやや小さく成果が不安定である

様々な区間でコンテンツ本数と訪問数の相関係数を算出したところ、本数が少ない初期段階は相関係数がやや小さく不安定であることがわかった。したがってコンテンツSEOを開始してから、相関係数が0.7以下である時期を初期段階と定義して、別途分析した。情報ノウハウ提供型ではコンテンツ本数0~59本の区間、読み物型ではコンテンツ本数0~166本の区間が初期段階となった。

初期段階区間で線形回帰したところ、相関係数は情報ノウハウ提供型で0.67、読み物型で0.52であった。これらの結果を図表6にまとめた。また、調査結果Ⅱで詳しく述べるが、全区間での本数と訪問数の相関係数はどちらの型でも0.98以上となった。したがって、全区間と比較すると初期段階では相関はあるがやや小さい。ここから、莫大な本数になれば安定した成果が出るものの、初期段階ではサイトによって成果の出方に少しバラつきがあることが予想される。

読み物型と情報ノウハウ提供型を比較すると、初期段階と判断できる区間は大きく異なる。つまり、同じ頻度でコンテンツを作成していくとき、読み物型よりも情報ノウハウ提供型の方が初期の不安定な時期が短く、早く安定した成果を出せることが予想できる。さらに初期の相関係数の大きさの違いから、初期でも情報ノウハウ提供型の方がより安定していることが考えられる。

図表6:初期段階におけるコンテンツ本数と訪問数の関係

2.情報ノウハウ提供型は読み物型に比べ、コンテンツ本数に対する成果(CV数)が13倍である

図表7では、コンテンツ本数、1本当たりのコンテンツページ入口訪問数([コンテンツページを入口とした訪問数] / [コンテンツ本数])、コンテンツページから訪問してCVに至った数の平均値を図示している。

平均コンテンツ本数は、読み物型が情報ノウハウ提供型の3.2倍であった。しかし成果は情報ノウハウ提供型の方が大きくなった。結論を述べると、情報ノウハウ型は読み物型に比べ、平均コンテンツ本数に対する平均訪問数の大きさが8.7倍、平均コンテンツ本数に対する平均CV数の大きさが13倍であると算出された。具体的な算出の手順は以下に記載する。

まず、平均訪問数は、読み物型においては平均コンテンツ本数の1.1倍であるが、情報ノウハウ提供型においては平均コンテンツ本数の9.6倍と算出された。ここから、情報ノウハウ型は読み物型に比べ、本数に対する訪問数が8.7倍であることがわかった。また、平均CV数は、読み物型においては平均コンテンツ本数の0.15倍であるが、情報ノウハウ提供型においては平均コンテンツ本数の1.9倍となった。ここから、情報ノウハウ型は読み物型に対して、本数に対するCV数が13倍であることがわかった。

図表7:二種類のコンテンツ形式別成果の比較

3.情報ノウハウ提供型における訪問数は、読み物型の4.58倍CVへ貢献する

全訪問数は図表7のコンテンツ本数×一本当たりの訪問数で算出できる。そこで、[CV数] / [全訪問数]の割合は、情報ノウハウ提供型では0.253%、読み物型では0.0553%である。これらの割合を「訪問がCVに貢献する大きさ」と定義し両型を比較すると、情報ノウハウ提供型が読み物型の4.58倍である。

ここで、コンテンツ本数と訪問数、CV数の相関係数を算出したところ、図表8のようになった。読み物型では、訪問数よりCV数の方がコンテンツ本数との相関が弱いことがわかる。この表からも、読み物型と比較すると、情報ノウハウ提供型のほうが訪問数の増加がCVに繋がりやすいと考えられる。

図表8:コンテンツ本数と訪問数・CV数の相関係数

調査から得られた知見

  • ウェブサイトが持つコンテンツ本数が増えるほど、コンテンツページを入口とした訪問数は加速度的に増える。
  • コンテンツ本数が少ない段階(初期段階)では本数と訪問数の相関は弱いが、本数が増えると安定して成果が出るようになる。
  • 読み物型よりも情報ノウハウ提供型の方が効率的に成果(少ないコンテンツ本数で大きい成果)を挙げられる。(情報ノウハウ提供型は読み物型に比べ、コンテンツ本数に対する成果(CV数)が13倍である)
  • 情報ノウハウ提供型における訪問数は、読み物型の4.58倍CVへ貢献する。

本調査の提言

コンテンツSEOはコンテンツ本数が増えていくことで、加速度的に成果が高まる施策である。一方、初期段階では成果は出にくい。したがって、長期的な投資として取り組む必要がある。このとき、ただ本数を増やすのではなく、ユーザーにとって有益な質の良いコンテンツを増やしていくことでより効率的に成果につながる。

具体的には、法人ならではの強みを生かして、より成果に繋がりやすくユーザーにとって有益な専門性の高い情報ノウハウ提供型のコンテンツに取り組むべきである。さらに成果を高めるには、一度リリースしたコンテンツの成果状況を見ながら、CVに貢献していないコンテンツのリライトやCV導線・迂回導線の見直しなど、チューニングを行うべきである。

また、コンテンツ経由での訪問者は検討の浅いユーザーのため、CV設計を見直すことも重要である。CV例として資料請求・見積り依頼・無料トライアル・問い合わせ等が挙げられるが、それぞれCVの難易度に差がある。CVの障壁が高すぎると得られるCV数は少なく潜在顧客を得られないだろう。最適な難易度のCVを設計し、コンテンツに合わせて設置することが重要である。

提言のまとめ

  • コンテンツSEOは長期的な投資として取り組むべき
  • より効率的に成果をあげるために、ユーザーにとって有益な専門性の高い情報ノウハウ提供型コンテンツを積み重ねるべき
  • リリース後も、成果状況を見ながらコンテンツのリライト、CV導線・迂回導線の見直しを行うべき
  • コンテンツ訪問者の検討度合いに合わせたCV設計を行うべき

調査方法詳細

調査ツール AIアナリスト(WACUL)
調査対象 SaaSを扱うBtoBでSEOコンテンツを持つ23サイト
調査時期 2019/01~2019/05

株式会社ベイジ 代表 枌谷氏 コメント

BtoBに限らないが、マーケティングの課題を突き詰めていくと、「コンテンツ」に議論が行きつくことは多い。

例えば展示会で名刺交換してリードを集め、その後メルマガを配信しようとすると、どんなコンテンツをメルマガに載せるべきか、ということで悩む。

同じようなことは、ホワイトペーパー、webサイト、オウンドメディアにもいえる。いかに成功率が高い「定石」と言われる施策であっても、そこに載るコンテンツの問題をクリアできなければ、マーケティング課題を解決することは難しい。

これほどまでに重要なコンテンツだが、そこに話が及ぶと、明快な解決策が出てこなくなり、思考は停止する。なぜなら、コンテンツの質を定量的に測ることは難しく、良質か良質でないかを見極めるのは、多くの面で人の感覚に頼らざるを得ないからだ。また、成果がでるタイミングが見えにくく、長期戦を強いられる中で、「本当にこのまま続けることに価値があるのか?」という不安にも襲われやすい。

結局「コンテンツは大事だね」と念仏のように唱えるコンテンツ教に入信しながらも、自らの救いとなる具体的な経典の存在は誰も知らないまま、コンテンツという名の唯一神を信じているというのが、今のBtoBマーティングの実態ではないだろうか。

このような背景を踏まえると、マーケティングの中で活用されるコンテンツが普遍的に抱える問題を定量的に調査した本レポートは、重要なアウトプットではないかと思う。現行技術の中でデータトレースできる領域ということで、テーマはコンテンツ全般ではなく「コンテンツSEO」に絞られてはいるが、その結果は本質的だ。

コンテンツ本数が増えるほど、指数関数的に訪問やCVが伸びるということを、感覚的には理解しているマーケターは多いだろう。しかしそのことが、数多くのサンプルから定量的に証明されたのははじめてではないだろうか。このような高精度なデータの裏付けは、成果が出ずに暗中模索しているコンテンツチームに、一つの光明をもたらすだろう。

またコンテンツ内容として、「読み物型」ではなく「情報ノウハウ提供型」の方が有利というのも、重要な知見である。成果が見えず試行錯誤していると、制作負荷の高い「情報ノウハウ提供型」ではなく、「読み物型」に走るケースもある。書き手によっては、「読み物型」の方が書きやすく、SNSでのシェア数などでは「読み物型」の方が、成果が出ているように錯覚するケースもあるだろう。

弊社も多くの記事をSNS上でバズらせた経験があるが、実は半年や1年という長い目で見ると、いずれの記事も、SNSからの流入数より、オーガニック検索での流入の方が圧倒的に多い。つまり、SNSのシェア数に惑わされず、書き手にとっての書きやすさにも流されず、「情報ノウハウ提供型」のコンテンツを根気よく配信すべし、とこのレポートを読み解くことができる。これもまた、迷走するコンテンツチームの有益な指針となるだろう。

このように本レポートは、コンテンツを課題とする多くの企業の悩みを晴らし、正しい施策に正しくリソースを投下していく、一つの契機になるのではないかと期待できるものである。

※この研究レポートはWACUL社提供のAIアナリストに登録されたサイトデータを元に作成されました。
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