2019.06.14

研究レポート

B2Bサイトのフォームにおけるベストプラクティス研究

調査に至る前提

以前の研究レポートでもB2Bサイトにおけるウェブマーケティングの重要性に触れたが、今回は資料請求や無料トライアルなどの申し込みフォーム(以下フォーム)の最適化に着目した。なぜなら、フォームは資料請求や無料トライアルなどの企業側のゴールの直前のプロセスであり、改善が企業の成果に直結するからである。また、フォーム通過率は企業による差が大きく、特に1件の受注が多額となるB2Bにおいては、数%の改善でも効果が大きいと考えられる。

ユーザーをCVに到達させるために企業側が行うプロセスとして、集客、フォーム到達、フォーム通過の3点がある。本レポートでは最後のプロセスであるフォーム通過に着目した。

図表1:CV到達までのプロセス

本レポートでは、まず既存のフォームにおいてどのような改善案が考えられるのかを明らかにする。その上で考えられる改善案を実行した際に、フォーム通過率にどの程度の改善が見込まれるのか定量的に明らかにする。

本レポートの調査結果によると、調査対象21件のフォーム通過率の平均値は20.37%、中央値は20.8%、最大値は34.4%であった。この結果から、フォーム通過率の目標値を25%とし、その達成に向けてどのような対策が適切なのかについて提言する。

図表2:調査対象フォーム21件のフォーム通過率平均値・中央値・最大値

調査結果概要

調査対象となったのは、企業のB2Bサイトの資料請求フォーム、無料トライアルフォーム、21件である。これらのフォームはどちらも営業につながるという点で共通しており、平均値、中央値がほぼ同じ値であるため、今回の調査では同一の分析対象とした。図表3はフォーム種類別の通過率の平均値、中央値、最大値である。

図表3:フォームの種類別の通過率平均値・中央値・最大値

分析結果より、特に効果があると思われた改善策は以下の2点である。

第1に、フォームのタイトルの改善である。多くの場合、資料請求や無料トライアルのフォームに到達するには、ページ内のボタンを押す必要がある。しかし、いくつかのサイトにおいてはボタンの文言と、ボタンをクリックした直後に遷移するフォームのタイトルが異なる場合がある。

例えば、資料請求のために資料請求ボタンを押したが、遷移したフォームには「お問い合わせ」と表示されるパターンが存在する。このような文言の不一致が起こる要因としては、企業がコスト削減の理由で一つのフォームを問い合わせと資料請求で兼用しているということなどが考えられる。しかし、このような文言の不一致はユーザーの混乱を招いたり、不信感を抱かせる可能性がある。

資料請求が目的のユーザーが、遷移直後のページで「お問い合わせ」という文言を見た場合、もしかするとそのユーザーは「自分の目的と合致していない」と判断し、すぐに離脱してしまうかもしれない。

その実証のため、まず第1に、遷移直後で文言の不一致がみられる場合と、文言が一致している場合それぞれで、通過率の差があるかを検証した。

第2に、フォームの入力項目数の削減である。企業側としてはユーザーについて可能な限り多くの情報を入手したいものだが、ユーザー目線で考えれば、入力項目数が多いと負担を感じたり、多くの個人情報を提供するリスクを考えるなどして、フォームから離脱してしまうかもしれない。そこで、フォームの入力項目の数によってフォーム通過率にどれほど影響するかについても同様に検証した。

調査結果から以下の3点を提言する。

I.ボタンとフォームの文言の一致は必須である。

  1. 文言の一致によって、平均フォーム通過率は約1.3倍になる

II.入力必須フォーム項目数は少なければ少ないほど望ましい。そのため入力項目は会社名、氏名、連絡先など入力が容易なものに限定すべき。企業が必須項目と任意項目を使い分けることにはあまり意味がない。

  1. フォームの入力項目数とフォーム通過率には負の相関がある
  2. 任意項目を含めた全入力項目数とフォーム通過率の相関関係は、必須の入力項目数とフォーム通過率の相関関係とほぼ等しい

III.入力必須項目を減らすことによるリードの質を見極めるための情報の不足は、フォーム完了後の情報取得によって補完すべき

  1. フォーム通過後のユーザーは、高い確率でその後の情報入力を行う

調査結果詳細

ページ遷移前後の文言の一致とフォーム通過率の関係

I.ボタンとフォームの文言の一致は必須である。

  1. 文言の一致と不一致によって、平均フォーム通過率は約1.3倍になる

一般的にボタンの文言とボタンクリック直後に遷移するページの文言が異なる場合、フォーム通過率は低下すると考えられる。分析の結果、その傾向は正しいことが導かれた。分析対象の21件のフォームのうち15件においては文言が一致しており、6件のフォームに関しては遷移前後で異なる文言が表示されていた。

文言が一致しているサイトのフォーム通過率平均は約21.7%であったのに対し、一致していないサイトの平均は約16.6%であった。調査対象フォームの半数以上ですでに文言の一致は実践されており、これ以上のロスを生まないためにも早急に改善すべきポイントと言える。

図表4:移動後の文言一致・不一致によるフォーム通過率の差異

また、文言の不一致が見られるフォームでは、「資料請求」「無料トライアル」「お問い合わせ」などのユーザーからの申し込みを一つのフォームで管理しようとしている場合があった。例えば、あるフォームでは「資料請求」「無料トライアル」「お問い合わせ」など複数のボタンがサイト内に配置されているが、そのいずれのボタンを押しても「各サービスお問い合わせフォーム」というページに遷移する。フォームには「お問合わせの種類」という項目があり、その項目欄でユーザーが問い合わせの種類を選択するように指示されている。

このようなフォームの形態では、企業側には様々な種類の問い合わせを一元的に管理できるという長所があるのかもしれないが、ユーザーの中にはイメージと異なるフォームが表示されたと感じ、離脱してしまう場合も考えられる。

以上の結果より、ユーザーの視点を重視し、ボタンとフォームの文言を一致させることは成果を高めると言える。

フォーム項目数とフォーム通過率の関係

II.入力必須フォーム項目数は少なければ少ないほど望ましい。そのため入力項目は会社名、氏名、連絡先など入力が容易なものに限定すべき。企業が必須項目と任意項目を使い分けることにはあまり意味がない。

  1. フォームの入力項目数とフォーム通過率には負の相関がある
  2. すべての入力項目数とフォーム通過率の相関関係は、必須の入力項目数とフォーム通過率の相関関係とほぼ等しい

次にフォームの入力項目数とフォーム通過率の関係について考察する。一般的にフォーム項目数が少なければ少ないほどユーザーの負担が軽くなるため、フォーム通過率は向上するのではないかと考えられる。調査結果からもこの傾向は正しいことが示された。

まずは入力フォーム項目数とフォーム通過率の関係についてである。前述のボタンとフォームの文言が一致していないサイトを対象範囲から除外したフォーム16件を対象とし、分析を行ったところ、フォームの入力項目数とフォーム通過率には強い相関がみられた(相関係数は約-0.757)。つまり、入力項目数が少なければ少ないほど、フォーム通過率は上昇するということである(1項目減らすごとに通過率は約2%pt向上)。

入力項目が少ないフォームでは、求められる情報がメールアドレス一つのみであったり、メールアドレス、パスワード、従業員数の三つであったりするなど、最低限の項目にとどめられている。一方、入力項目数が多いフォームでは、サービス導入予定時期、現在の管理状況、サービスを知ったきっかけなどの項目もあり、入力必須となっている事例も見られた。

図表5:フォーム項目数(すべて)とフォーム通過率

次にフォーム項目の入力が必須か否かが与える影響についてである。リードの質を見極めるために、企業側は任意項目でユーザーの基本情報以外の追加的な情報を取得しようとする場合が考えられる。そこで、入力が必須の項目数とフォーム通過率の関係を分析した。

その結果、こちらも負の相関が示されたが、その相関の強さ(相関係数)は前述のフォーム全項目の場合とほぼ同じである。つまり、ユーザーは項目の入力が必須かどうかではなく、絶対的な項目数に影響を受けると考えられる。この結果に基づけば、企業側が必須項目と任意項目を使い分けるということにはあまり意味がないと言える。

図表6:フォーム項目数(必須)とフォーム通過率

注:「フォーム項目数(すべて)とフォーム通過率」と「フォーム項目数(必須)とフォーム通過率」の分析結果から、図表7のようにそれぞれでほぼ同じ分析結果が得られたため、フォーム項目を必須と任意で使い分けることはあまり意味がないと判断した。

図表7:「フォーム項目数(すべて)とフォーム通過率」と「フォーム項目数(必須)とフォーム通過率」の相関の比較

III.入力必須項目を減らすことによるリードの質を見極めるための情報の不足は、フォーム完了後の情報取得によって補完すべき

  1. フォーム通過後のユーザーは、高い確率でその後の情報入力を行う

分析結果より、フォーム項目は入力が必須かどうかにかかわらず、少なくすることがフォーム通過率の向上につながることが示された。しかし、企業側としてはフォームの項目数を減らすことにより、得られるリードの質を特定しづらくなることが懸念される。

フォーム項目数を減らしつつ、ユーザーから追加で得たい情報を取得する方法として、以下の2つの方法が考えられる。

第1に、申し込み後に別の手段で追加情報を聞くという方法である。登録の段階ではユーザーの心理的負担を極力軽減するよう最低限の情報取得に絞り、一度情報登録を行った後で、例えばインサイドセールスをかける際にヒアリングして取得する、などという方法が考えられる。

第2にフォームの完了画面で追加情報の入力を求めるという方法である。フォーム通過直後のユーザーは通過前のユーザーよりもサービスの利用に対して前向きである可能性が高い。そのタイミングで取得したい情報を入力させることが可能であると考えられる。

株式会社WACULのデータによれば、同社のサービス「AIアナリスト」でのフォーム完了後のアンケートの回答率は約6割である。これに基づけば、フォーム通過後のユーザーはフォーム通過後に企業側から追加の情報入力を求められても高い確率で情報入力に応じると考えられる。

6割程度のユーザーがフォーム通過後の情報入力を行っているというこの調査結果は、必須でない入力項目はフォーム通過後に移動させるという改善策の有効性を示していると言えるだろう。

本調査から得られた知見

  • フォーム通過率の向上は、企業が目標とするCV数の増加に直結するため、早急に改善が求められる。
  • フォーム遷移ボタンとフォームタイトルの文言を一致させると通過率は約1.3倍になる。
  • フォーム入力項目数と通過率には強い負の相関があり、1項目減らすと通過率は約2%pt向上する。
  • フォーム設計において入力必須項目と入力任意項目を使い分けることにはあまり意味がない。
  • 入力必須項目を減らすことによるリードの質を見極めるための情報の不足は、フォーム完了後の情報取得によって補完すべきである。

調査方法詳細

調査ツール AIアナリスト(WACUL)
調査対象 SaaSを扱うB2Bサイトのフォーム21件
調査時期 2019/01~2019/05

株式会社才流 代表取締役社長 栗原氏 コメント

BtoBマーケティングで欠かすことのできない、Webサイトやランディングページ。その最重要ゴールの1つが、「コンバージョン」だ。

今回調査した「フォーム」は、「コンバージョン」の一歩手前にあり、BtoBマーケティングにおいて、最も重要なページの1つと言っても過言ではない。

しかし、本調査によると、フォームに到達したユーザーのうち、なんと80%近くが離脱しているという。見込み度の高いユーザーが訪れるはずのページで、大半が離脱している現状は、

  • 直前のボタンとの差異があり、ユーザーが迷ってしまうフォーム
  • マーケティングデータを効率よく蓄積したい、という企業側の都合で作られた、項目数が多く、入力負荷が高いフォーム

など、ユーザーフレンドリーでないフォームが多いことを示している。

逆に、今回の調査で明らかになった通過率が高いフォームは、

  • ボタンとフォームのタイトルが一致している
  • 入力項目が少ない
  • 企業が追加で聞きたいことがあれば、フォームの入力完了後に聞いている

など、ユーザーにとって使いやすい、という至極当たり前の点で共通していた。

マーケターとして成果を上げたいなら、ユーザー視点に立つ必要がある。それがわかる調査結果だったと言えるだろう。

今回明らかになったフォーム通過率改善のベストプラクティスを、小手先のテクニックと捉えるのは勿体ない。自社のマーケティングコミュニケーションをユーザー視点に変えていく。そのための第一歩として、本調査結果が活用できるだろう。

※この研究レポートはWACUL社提供のAIアナリストに登録されたサイトデータを元に作成されました。
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