WACUL Marketing DX Days Report【Day3】ECにおけるデジタルマーケティングの定石

WACUL Marketing DX Days Report【Day3】ECにおけるデジタルマーケティングの定石

WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長・垣内が執筆した『デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか?』の出版記念イベント・WACUL Marketing DX Days。各業界に精通したゲストをお招きし、デジタルマーケティングの定石を4日間にわたり語り尽くしました。

当記事では、『【Day3】“ECにおける” デジタルマーケティングの定石』の様子をお届けします。

コロナ禍で盛り上がりをみせるECですが、店舗やカタログといった別のチャネルももつ大手企業では、実際どのようにECを活用しているのでしょうか。ビジネスにおいてECがどんな役割を担っているのか、EC担当者が成果を出すためにやるべきことはなんなのかを、ディノス・セシール石川さん・アダストリア田中さんよりお話しいただきました。豊富なご経験にもとづく貴重な示唆の数々を、ぜひお楽しみください。

パネリスト

石川 森生

(株)ディノス・セシール CECO / 株式会社bydesign 取締役CGO 石川森生

株式会社ディノス・セシール CECO / 株式会社bydesign 取締役CGO

SBIホールディングス入社後、SBIナビ(現ナビプラス)の立ち上げ。その後、ファッション通販・マガシークでマーケティング責任者として、サイトリニューアルやサイト改善PDCA確立、広告CRM最適化、海外の最先端ソリューション導入推進。タイセイのWEB部門を分社化し、TUKURUを創業。2016年2月にディノス・セシール入社、CECOとして既存の枠組みを超える、サスティナブルなECビジネス構築というミッションを実践。2020年7月より株式会社bydesign・取締役CGO。

田中 順一

株式会社アダストリア マーケティング本部 本部長 田中 順一

株式会社アダストリア マーケティング本部 本部長

カタログ通販、インターネット広告代理店を経て、2011年にアダストリアに入社。WEB事業を中心に従事し、自社ECサイト「ドットエスティ」の成長を牽引。現在は、マーケティング本部長としてEC、データ、デジタル戦略などを統括する。

モデレーター

垣内 勇威

株式会社WACUL 取締役CIO 垣内 勇威

株式会社WACUL 取締役CIO

東京大学卒。株式会社ビービットから、2013年に株式会社WACUL入社。改善提案から効果検証までマーケティングのPDCAをサポートするツール「AIアナリスト」を立ち上げ。2019年に産学連携型の研究所「WACULテクノロジー&マーケティングラボ」を設立し、所長に就任。現在、 研究所所長および取締役CIO(Cheif Incubation Officer)として、新規事業や新機能の企画・開発およびDXコンサルティング、大企業とのPoCなど、社内外問わず長期目線での事業開発の責任者を務める。

はじめに

本日のテーマ

垣内本日はECに関して4つテーマを挙げました。

まずECは当然売上を追うものだと思われがちですが、店舗やカタログがあるとそれだけじゃないケースもあるため、改めて2社にEC活用の目的をうかがいます。2つめは、ECはリピーターの獲得が非常に重要なビジネスですが、デジタル上でファンを作れるのかどうか。3つめは、商品と価格をいじれない場合、成果を出すためになにができるのか。最後は他の回同様ECで成果のでる仕事/でない仕事をお聞きできればと思っています。

石川さん、田中さん、どうぞよろしくお願いいたします。

1. 各社ECの目的は?

1. 各社ECの目的は?

垣内早速ですが、各社のECの目的やKPIをお聞きします。とくにリアル店舗があるECだと、ECはチェックするがそこでは買わずに結局リアル店舗で買う、というお客様もたくさんいらっしゃるかと思いますが、全国に店舗を持つアダストリアさんにおいてはECの役割をどう位置づけてらっしゃいますか?

田中一言でいうと「顧客接点」と定義しています。ECでお買い物をしてくださる方は年々増えていて、このコロナ禍でさらに加速しているので、「最大の顧客接点」と捉えています。接触頻度が高いお客様は当然そのブランドのファンであることもあり、顧客単価が高い傾向にあります。売上だけではなく、どうしたらこの顧客接点をよくできるのか、増やせるのかという観点でECに向き合っています

垣内ECで見て店舗で買うとか、店舗で見てECで買うとかって可視化が難しいと思うんですが、どう管理されていますか?

田中シンプルに、ECもリアル店舗も両方使うお客様、近くに店舗がないためECでしか買わないお客様、ECは使わずリアル店舗のみで買うお客様という3つに分けてデータを見ています。どの数字が伸びたらブランドにとって、お客様にとっていいのかをつねに考えながら試行錯誤している感じです。

垣内ユーザー軸でデータを管理されているんですね。この業界って店舗とECがお客様を奪い合ってケンカすることが多いと思っているんですが、両方使うお客様の場合、店舗とECで評価を取り合う、みたいなことは起きないのでしょうか?

田中もちろん店舗とECにそれぞれ売上目標はあります。ただ、弊社はあくまでお客様と、ブランドが主役。ブランドの売上が伸びる状態をみんなで作っていきましょう、という考え方をアダストリアは持っています。そうなると店舗とECはケンカしようがないというか、店舗がどうECがどうはお客様には関係ないというか。

Web限定プライスダウンとか、1つのチャネルだけ有利なことやり続けると、お客様が迷ってしまうじゃないですか。これって本質ではないので、ブランド全体の数字を上げるためには何をすべきかを考えなきゃいけないですよね。

こういう発想なので、店舗とECが協力して顧客接点を増やす仕組みづくりは積極的におこなっています。たとえば、リアル店舗における会員獲得がめっちゃ多いんですよ。リアル店舗でブランドのファンになってくれて「じゃあ会員にもなろう」っていう動線ですね。どの店舗からどれぐらい会員が獲得できているのかはデータがとれるので、数字がよい店舗の声がけ内容をヒアリングして横展しています。

垣内すばらしいですね。店舗とECがしっかりコミュニケーションをとり、ブランド単位で組織が結束されているのが肝なのかもしれませんね。参加者からのご質問で「アダストリアさんのカルチャーは大変すばらしいものですが、評価制度はちゃんと連動しているのでしょうか?」ときていますが、可能な範囲でお答えいただけますか?

田中そうですね、たとえばいま店舗で働いているスタッフは店頭での接客をおこないながら、デジタル上でも スタイリングをアップしてブランドを紹介するっていうのを当たり前にやっています。これもデータで計測できるので、貢献したスタッフを表彰する、みたいなことはやっています。全部を細かく評価することはできませんが、測れる部分は定量化して「すごいね!」って言える風土を作っている感じですね。

垣内店頭の売上は当然評価するけれども、それにプラスして表彰制度などを使ってデジタルへの貢献を推奨されているということですね。

ここから石川さんにもお聞きしていきましょうか。ECの目的ってどう捉えてらっしゃいますか?

石川一般論でいうと、各社が持っているビジネスアセットによってやっぱり異なりますよね。単なる決済の場所と捉えると「ワンクリックで買えたら勝ち」みたいなところにしか行き着かないんで、そうじゃなくて、Webの特性を活かしてお客様に+αの体験価値をどう提供できるのか、という視点でECを活用できるといいのかなと思っています

ディノス・セシールはプライベートブランドも持っていますが、言ってしまえばどこでも買えるようなコモディティ商材の取り扱いが多い総合カタログ通販です。そんななかで我々に余剰時間を使ってもらうためにはどうしたらいいのかいつも考えているんですが、Webだけでなんとかしようとするのは結構難しいんですよ。一方で、ポストに送り届けたカタログをめくっていただいている瞬間だけは、ちょっと大げさですけどAmazonや楽天すら入る隙のない状態を作れている。こうしたカタログにおけるお客様の購買行動をもっと楽しく便利にするためにWebをどう使うのかをいつも考えていますね。

垣内WebだけやっているECの場合、カタログを送ってみるのってありなんでしょうか?

石川いやぁ、やめたほうがいいんじゃないですか(笑)。僕もここに来る前に何度か試したことがあるんですが、出し方を間違えると基本的には黒字になって返ってきません。めちゃくちゃお金かかりますからね。お客様は多少つかめたとしても、ノウハウがないと採算には乗らないでしょうね。

垣内なるほど(笑)。ディノス・セシールさんはカタログとWebを両方使うお客様がいるなかでどうKPIを設計されているのでしょうか?

石川評価KPIという意味では、実はECはさっさと白旗をあげていて、会社として売上をつけていないんですよ。ディノス・セシールの売上管理はカタログとテレビの2つです。カタログの売上のうちWebが何%・電話が何%と、Webは電話の横にある決済手段として捉えています。もちろんWebチームのKPIとしては管理会計的にECの売上を追っていますけどね。

垣内 なるほど、無駄な争いが起きないようKPIを設計されているんですね。

石川さんに質問がきていますね。「カタログユーザーは減少していると思うんですが、それに対してどういうアプローチをしていますか?」。こちらいかがでしょうか?

石川ロングスパンで見るとカタログのお客様が徐々にシュリンクしているのは事実です。ただうちもアダストリアさんと一緒で、カタログもWebも見てくださっているような接触頻度の多いお客様は事実としてLTVが明らかに高い。だから僕らの基本戦略は、単一のチャネルでしかコミュニケーションを取っていなかった時代よりも、デジタルを使ってもっといろんな接点を増やして、LTVを伸ばし凹んだ部分をカバーしていくことです。カタログが減っている分ECで新規顧客を獲得すればいい、みたいな発想は基本的にもっていません。

既存のLTVが伸びれば新規顧客獲得の限界CPAが上がっても耐えられるようになるので、鶏たまご論でいうと明らかにリテンションが先なんですよ。

垣内石川さん、最後3秒ぐらいでバババッと言っちゃった部分、大事なのでもう少し詳細に説明いただいてもいいですか?(笑)

石川あぁすみません(笑)。我々は店舗もないですし、いまの時代書店やコンビニにカタログを置かせてもらったとしてもなかなか手に取ってもらえない。となると、やはりWeb広告で新規顧客を獲得する割合が高いんですね。1人の新規顧客を獲得するのにここまでお金をかけていいよ、そのなかで最大化してねっていう方針で広告を運用しています。

そのCPAって、獲得したお客様がいったいいくら我々に利益をもたらしてくださるのかから逆算しますよね。お客様が年間に1万円しかお買い物しない場合と、10万円お買い物する場合とでは新規顧客獲得にかけていいコストが当然変わりますと。つまりLTVが高まると限界CPAを上げることができますよね。利益が出ないお客様を広告で獲得していくことにはなんの意味もないので、やっぱり重要なのはCRM、リテンションです。

垣内丁寧な解説ありがとうございました。ちょうどリテンションという言葉も出たところで次のテーマにいきましょうか。

2. デジタルでファンを作れるのか?

2. デジタルでファンを作れるのか?

垣内結局ECで大切なのはどうファンを作るか、ですよね。もちろん店舗やカタログを含め取り組まれていることだと思いますが、デジタルはそのなかでどんな役割を担っているのかをお聞きします。石川さん、デジタルでファンって作れますか?

石川業種業態によってはWebしかタッチポイントがなくやらざるを得ないところもありますが、デジタルだけでファンを作るってとても難易度が高いですよね。ディノス・セシールの場合は、繰り返しになっちゃいますがやっぱり生命線であるカタログのお客様とのコミュニケーションの質を上げていくのがすごく大事。そう考えるとWebでなにか無理をする必要はなくて、たとえば紙面の制約上カタログに入れられなかった情報を補完するためにWebを使います。洋服でいえば正面のシュッとしたカットだけでなく、バックスタイルや素材の情報をWebでカバーする。それがWebに来てもらう理由になるのかなと。

デジタルだけでなんとかしようとすると「ARを駆使してカタログやテレビを超えるコンテンツを作り出しましょう」みたいな発想になりがちですが(笑)そこまでやる必要って全然なくて、買い物体験をより便利にする方を優先すべきかな、と思います。

田中そうですよね。僕は結局ファンってブランドや人にしかつかないと思っているんですよ。だからECだけでファンを作ることは難しい。あくまでブランドありきで、店舗かECどちらかで買ってもらえればいいという考え方なので、そのなかでECの役割はなにかっていうと、利便性を上げてお客様の購買行動を後押ししてあげることなんですよね。

垣内なるほど。デジタル以外のリアルな接点があるのならファン作りはそちらでやりましょう、ということですね。今CRMについて質問がきてまして「購買頻度の低い商材のCRMはどのようにされていますか?」とのことですが、石川さん、家具のECの方は実際どのように対応されていますか?

石川基本的に大物家具だけでCRMをきかせようとするのは不可能ですよね。安いからダイニングテーブルをもう一台買おう、はありえない(笑)。だから、どういう商材があったらダイニングテーブル買った方々にお声がけしても喜んでいただけるかな、みたいな視点で商材を開拓していくのが重要だと思っています。

垣内やはり商品開発になるんですね。家具とセットとなると、インテリア系の商材でしょうか。

石川そうなりますね、チェアとか。極論、水でもいい(笑)。めちゃくちゃうまいコーヒーとか、やっぱりリピート購入されますから。

垣内極論ですね(笑)。田中さんはどうでしょう?

田中うちも家具の取り扱いがあるんですが、「こんなライフスタイルどうですか?」っていうブランドの文脈に沿っているなら他にもいろんな提案をしていいと思っています。お客様の暮らしがよくなるなら家具だって洋服だって水だっていい。そういう風に考えていますね。

石川それめちゃくちゃ重要なことですよね。僕がやっている『かなでもの』という家具のECも、お客様がどう空間を彩っていけるのか、という発想で商材を揃えています。CRM軸で商材を見ているのは、僕が一応マーケティング担当だからです(笑)。

3. 商品/価格を触れないECで勝負できるか?

3. 商品/価格を触れないECで勝負できるか?

垣内次のテーマにいきましょうか。ここまでひたすらブランドとかCRMとかECに限らない話をしちゃっているんですが(笑)部署が縦割りで商材も価格もいじれない!というEC担当者が売上を伸ばすためにどんな勝負ができるか、ぜひ教えていただけますか?

石川僕もディノス・セシールのなかで商材いじれないですからね。やっぱりコンテンツを磨くしかないんじゃないでしょうか。メールマガジン、LINE、アプリと自分たちが持っているリテンションをかけるためのチャネルすべてにおいて、どれだけ最適化されたコンテンツを用意できるのか。究極これ以外ないんじゃないですかね。

垣内コンテンツを磨くとは、ディノス・セシールさんでは具体的にどうやっているのでしょうか?

石川ディノス・セシールでは「今このタイミングで我々はどういう暮らしの提案をしなきゃいけないのか」をずっと考え続けています。この商材であなたの暮らしがこうよくなりますよ、っていう提案がコンテンツになるわけですね。なのでクリスマスや新生活など世の中のイベントに合わせたコンテンツは大量に持っていますし、縦にも横にも商材が広いので組み合わせも無限です。「そうそう、ちょうど今こういうのに興味があるのよね」と思ってもらえるような、消費者感覚に合ったコンテンツをいかにタイミングよく出せるのか。これがすべてです。

垣内今日「お客様」っていう言葉が何回も出てきていますが、その顧客感覚はどう養ってらっしゃるんでしょうか?ECって、ともすると売れ残った商品の在庫処分セールとかやりがちじゃないですか。そういう発想にならず、お客様に最適な提案をするためにやっていることを教えていただけませんか

石川お客様の目に触れるメディアをコントロールするチームと、商品責任を持つチームを切り分けています。前者はあくまでお客様目線で考えることが絶対で、「どうしてもこの商品の在庫を処分したい」という商品チームからの圧力には屈しません。お客様にとって有益な商品が優先的にECのいい場所に載る。こうしていい商品が売上を作っていく循環を組織として作っています

垣内すごい組織体制ですよね。売れない商品はどうするんですか?

石川こういう商品作んないでねってフィードバックするだけです。

垣内なるほど(笑)。田中さんはいかがでしょうか?商品・価格がいじれない場合、どうやって勝負しますか?

田中店舗であってもデジタルであっても、差別化ポイントの1つは「スタッフがおすすめの商品を絞ってあげること」だと思っています。昔から変わらないんですけど、結局、人がなにかを選ぶ時って、選択肢が多すぎる場合は絞ってほしいし、誰かに背中押してもらいたいじゃないですか。ジャケット100個どうぞ!っていうよりも、おすすめの3個を選んで紹介してもらいたいですよね。誰々がおすすめしているという価値を付ける、選びやすくなるっていう価値に変わる。ちなみにこの時、おすすめする側もファンを裏切れないので、本当にいいものしかおすすめしなくなるのが究極。

垣内おもしろいですね。アダストリアさんではスタッフのみなさんが「こういう方にはこの洋服がおすすめです!」と情報発信していくことで付加価値をつけていると。

ちょっと話がズレますが、石川さんは昔からサイト内のレコメンド機能について試行錯誤されていましたよね。その人にカスマイズされたレコメンドによって売上が伸びる!みたいなことって起こり得るのでしょうか?

石川レコメンド機能自体はいろんな意味であったほうがいいと思っています。やっぱりいろんな商品を比較検討したい人が多いので類似商品は辿れるべきですし、内部SEO的にもリンクされていたほうがいい。

ただし残念ながらレコメンドエンジンのアルゴリズムにはぶっちゃけどこも差がないと思っています。そういうビジネスを自分で立ち上げた時期もありましたけど、まぁ、差はないですね。ドンピシャで好みのものが計算されて出てくれば売上につながりそうな気がしますけど、散々試した結果、レコメンドエンジンで計算した商品一覧とカテゴリの売上トップ10ってほぼ変わらないですからね。精度が低いのか、お客様も移り気だからそもそも分析できないのか。

垣内夢ないですね(笑)。AIに詳しい先生に聞いたときは「変数が多すぎるからインプットしきれていないんじゃないか」って言っていましたね。

ちょっと質問に1つ答えましょうか。「ライブコマースがくると言われていますが、どう思われますか?」と。田中さんいかがでしょうか?

田中ライブコマース、僕はくると思いますね。ただ内容がおもしろくなければどれだけ生中継されても見ないので、やっぱりコンテンツは一番大事です。あとはリアルタイムかそうじゃないかをちゃんと使い分ける必要があると思います。リアルタイムだとどうしても視聴数が限られるじゃないですか。ただ、お客様からのコメントをひろうのですごく喜んでもらえますよね。アーカイブだと商品を本当に購入するかどうか検討するときに見返す、みたいな使われ方をする。そうした違いを理解してKPIを整理してやるならいいな、と思っています。

石川うちもようやくライブコマースを始めました。実は約4年前に新規顧客獲得目的で実演販売動画をアドネットワークに流したことあったんですけど、全然ダメで。今は既存顧客のケアとしてやっていますね。ここから売上がいくら出たかはぶっちゃけどうでもよくて、やっぱりディノス・セシールのコンテンツに時間を使ってくださること、マインドシェアがこちらに向くことが中長期でみた時に大事だと思っています。

あとライブ配信って、どれだけ準備してもなんかボロが出るんですよ。お客様から「白いパンツと合わせているけど絶対黒スカートの方がいい」とか「照明の光が強すぎて白に飛んでいます」とか鋭いコメントもどんどんきますし(笑)。でもこの現場が一生懸命バタバタやっている感じと、カタログで見るディノス・セシールの気取った印象にギャップがあるようで。「なんだかこの感じおもしろいね」というお客様からのコメントを見て、あぁこれがライブ配信のよさだなと感じました。

田中やっぱりライブ配信ってマス向けにはやらないほうがいいですよね。

石川そうそう、そうするとおもしろさが減っちゃうんですよ。

田中いろいろチャレンジして失敗しながらも思ったのは、ライブこそテーマを絞るのが大事っていうことです。たとえば「身長150cmで似合う洋服が難しい」という方に、同じ悩みをもったスタッフがライブ配信しますっていうと自分ごと化して見てもらえるしすごく盛り上がるんですよ。なんとなくマス向けに一発バンとやっても響かない。お客様に求められている狭いテーマで、それを何個やれるかだと思います。

垣内デジタルマーケティングってこういう新しい手段がよく流行りますが、お二人とも明確な目的をもち、本質的にコンテンツがどうあるべきか考えられているところがすばらしいですね。

4. ECで成果の出る仕事/出ない仕事とは?

4. ECで成果の出る仕事/出ない仕事とは?

垣内最後のテーマにいきましょう。ECで成果が出る施策出ない施策、いろんなものを書き出してみましたが、SEOのサイト構造大改革ってぶっちゃけ効果あると思いますか?田中さんいかがでしょう?

田中メーカーなのかモールなのかで変わると思うんですけど、アダストリアでいうと正直SEOって全然意識してないです。ブランドビジネスなんで、

ブランド名で「検索 一位」がとれていたらそれでよくない?っていう発想なんですよ。「ワンピース」っていう一般ワードで一位とってPV増やしたい、みたいなことは一切やりません。それよりお客様が日常的に触れるSNS含め、顧客接点を作るほうが大事かなと。いかにお役様の日常のタイムラインに入り込めるか?を考えた時に、

今増やし、磨いて置いた方が良い 接点は何か?を考えてます。

垣内石川さんはどうお考えですか?

石川ブランドに関しては完全に田中さんと同意見ですね。ブランドがたっていればSEOをやる必要がないというか、勝手に検索上位に上がりますからね。ECパッケージを使っているのであれば最低限はおさえられているでしょって話だし、スクラッチで作るとしてもその規模でやるなら誰かしらSEOを見ていると思うので、そういう意味ではサイト構造がイケてないから改修しましょうっていう提案はちょっとナンセンスかなと。

みんな「ワンピース 通販」みたいなボリュームの大きいカテゴリ系の一般ワードで検索上位をとりたいわけですよね。Googleのアルゴリズムは日々変わっているので一概には言えませんが、やっぱり商品数がものをいうわけですよ。めちゃめちゃおしゃれなワンピースを10個持っているECよりも、なんだかわかんないブランドも含め1万個ワンピース持っているモールがやっぱり強いんですよね。

垣内石川さん、その昔SEOで1位とるために商品担当に交渉して商品用意させていましたよね(笑)。

石川そうそう。1カテゴリあいていたから、そのカテゴリに商品1,000個突っ込んでSEO1位とろうみたいなね。他のカテゴリにもシャワー効果でふっていくから広告換算するとめっちゃ安いんですよ。

田中すごい(笑)。

石川カテゴリ系のキーワードはやっぱり商品数が多いところ、あるいはドメインエイジが古いところが勝っちゃうので、もし本当にSEOを頑張りたいのであれば、「運動会に着る服」とか、ピンポイントな切り口でひたすらコンテンツを作るしかないと思います。実は僕らはこの5年で粛々とそういうコンテンツを2,000個ほど作っていて、1年間ほぼすべてのイベントに絡めたコンテンツを網羅しています。これによってSEO経由の流入は増えているし、受注も増えています。

垣内ご質問で「コンテンツって投資のわりには還元されないっていう話もありますが、どうお考えですか?」ときていますが、いかがでしょう?

田中コンテンツ1つ1つを短期的な売上で評価すると費用対効果はあわないかもしれませんね。ただ3年後どういう姿になりたいから今こういうコンテンツを作るんです、と信じてやりきらないといけない話だと思います。

石川このコンテンツ作るのにいくらかかって、回収するために売上がこれだけ必要で……って僕らは全然見ていないですよ。もっとBS的に判断しています。資産となるのがデジタルコンテンツの最大の特徴じゃないですか

垣内ありがとうございます。今日のまとめとしては、ECはあくまで顧客接点の一つであり、その接点を増やしていくことが大事ですと。接点が多いとLTVがあがり、新規顧客を獲得するためのコストも増やせる。また、ECはファン作りは難しいけど買い物体験の利便性を上げることならできる。……ECでできることできないことをしっかり整理できた時間だったのではないかと思います。

石川さん、田中さん、今日は本当にありがとうございました!

【Day3サマリ】ECにおけるデジタルマーケティングの定石

1. 各社ECの目的は?

  • アダストリア社は「顧客接点」、どうしたら顧客接点をよくできるのか、増やせるのかという観点でECと向き合っている
  • ディノス・セシール社は、生命線でもあるカタログのお客様の購買行動を楽しく便利にするためにECを活用している
  • 両社ともに顧客接点が多い方がLTVが高い、つまりデジタルでやるべきは接点を増やしLTVを伸ばすこと

2. デジタルでファンを作れるのか?

  • ECだけでファンを作ることは難しい
  • 買い物体験をより便利にすることで選ばれる理由を作ることはできる
  • ブランドの文脈に沿った他の商材を提案することでリテンションをかける

3. 商品/価格を触れないECで勝負できるか?

  • 消費者感覚に合ったコンテンツをいかにタイミングよく出せるのかが大事
  • スタッフがおすすめ商品を絞ってあげることで付加価値をつける

4. ECで成果の出る仕事/出ない仕事とは?

  • SEOの構造変革はナンセンス
  • SEO流入狙うならピンポイントな切り口のコンテンツを作るしかない
  • コンテンツは資産としてみる、単体で費用対効果は求めない

総括

  • ECは顧客接点の一つ、その接点をよりよく増やしていくことで顧客のLTVを上げることが大事