2020.06.09

研究レポート

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第2弾 追い風をうけた業界・向かい風の中の業界 日本はニューノーマルに向かうのか

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第2弾 追い風をうけた業界・向かい風の中の業界 日本はニューノーマルに向かうのか

1. 緊急事態宣言は1ヶ月程度延長。コロナショックの風は業界別に二極化

5月20日に研究レポート『「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第1弾 追い風をうけた業界・向かい風の中の業界、100サイト緊急調査!訪問数が前年比10倍も』を発行した。前回レポートでは4月末までのデータをもとに、コロナショックの風邪を受けた業界をピックアップし、そのトレンドを示した。

日本政府は5月25日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を継続していた東京など首都圏の1都3県と北海道でも、31日までという当初の期限を迎える前に解除した。これで日本全体が、4月7日から実に特別な7週間程度を経て、緊急事態宣言下の世界から脱した。しかし、依然として経済社会活動は完全な再開とはいかず、感染状況などを見極めながら段階的に普段の活動に戻っていくことが求められている。

当社は「AIアナリスト」を2020年5月31日現在で、日本のWebサイトを中心に3.2万サイト以上に提供し、1ヶ月で約47億セッションのデータを保有している。そこから見えるデジタルマーケティングの動向について、WACUL Technology&MarketingLab.からレポートしていこうと思う。

2. コロナ禍で、デジタルマーケティング観点で、追い風もしくは向かい風はどれだけ強く吹いたのか

第2回の本レポートにおいては、ゴールデンウィークを含む5月の1ヶ月の実績を含めて訪問数およびCVRの推移を、業界およびセグメント別に見ていく。特に動きのあった業界をピックアップしてお伝えしたい。復旧に向かう1ヶ月で、ニューノーマルと呼ばれるような社会規範を塗り替える方向に動くのか、はたまた一時のピークとして記録されるだけで、結局元の姿に戻るのか。リモートワークを継続する大企業がある一方、早期にリモートワークを取りやめた大企業もある。社会はどちらに向かうのか、予断を許さない。

当社の提供する「AIアナリスト」では多数の企業のアクセス解析データの分析を行っている。そこには、訪問数だけでなく、CVに至るまでのビッグデータが存在する。その中で、特にコロナ禍で影響を受けたであろう業界やセグメントの中で、コンバージョンポイントが極端な事例ではない100サイトをピックアップして分析を行ったので、その結果を報告したい。

各業界およびセグメントについては複数社の数値を合算し、2019年2月を100とする形で指数化してる。また、各社のWebサイトのコンバージョン(CV)は、資料請求やお問い合わせなど、様々ではあるため、平均値はあくまで参考データとなる。ただ、今回集計対象としたWebサイトのCVに違いはあれど、ざっくりとしたトレンドは見てとることができるだろう。

2-1. B2Bクラウドは4月ほどではないが5月も前年同月比166%と高い需要がみられる

B2Bクラウドサービスは、図1のとおり5月は129ポイントと、季節性をものともせず高水準を維持している。絶対値でみると落ち込んでいるようにも見えるが、B2Bクラウドはゴールデンウィークで落ち込みやすい業界である(誰もGWの休暇中にB2Bサービスを探さない)。そのため、前年同月比をみてみると(図2)、5月は前年同月比166%と4月の同199%からは少し落ち着いたものの、依然として高いことが分かるだろう。5月はゴールデンウィークがあることもあり、通常B2Bクラウドにとっては閑散期。前年度比では好調を維持した。

CVRの推移についても見てみると(図3)CVRについても同じ傾向が見える。訪問数は増えていることは確認済みであるので、CV数も相当数増加していることが読み取れるだろう。

図表1:B2Bクラウド業界の訪問数推移
図表2:B2Bクラウド業界の訪問数推移(前年同月比)
図表3:B2Bクラウド業界のCVR推移(前年同月比)

2-1-1. 遠隔会議システムは2-3月からもう一段強い需要が4-5月でみられる

B2Bクラウドの中で爆発的な需要の拡大を見せていた遠隔会議システム。この遠隔会議システムにはzoomのようなリモートワーク中でもWeb会議を行えるシステムであったり、PCを使って電話をすることができるIP電話のシステムであったりが含まれている。こうした、遠隔での会議や通話に関するクラウドシステムがとても好調に推移している。こちらは図4のとおり、5月も約1,000ポイント程度の高水準。前年同月比は5月は893%と、4月の1,144%を上回る水準。依然としてコロナ需要とでも言うべき強い引き合いがあるようだ。

また、図6のようにCV数の前年同月比は需要の急増した2-3月にも増して、4-5月は7-8倍と、情報収集だけでなく、より強い興味関心がうまれているのだろう。

遠隔会議システムについては、コロナショックの中で強い引力でもって多くの企業に広く受け入れられている。遠隔会議というものは、社会に定着し「ニューノーマル」となるだろう。

図表4:遠隔会議システムの訪問数推移
図表5:遠隔会議システムの訪問数推移(前年同月比)
図表6:遠隔会議システムのCVR推移(前年同月比)

2-1-2. HR-Techも同様に、4-5月も前年同月比170-180%の高水準を維持

HR-Techは人事・労務管理や評価システムなどを含む、近年多くのスタートアップがしのぎを削り、テレビ広告などにも積極的な投資を行っているセグメントである。このセグメントでも、図7-8のとおり、その盛り上がりが落ち着きを見せていた年末から4月にかけて急速に訪問者数を伸ばし、その勢いそのままに5月も高水準を維持している。前年同月比でみると、4-5月でも勢いに陰りがあるようにはみえず、高水準を維持している。特に評価関連のツールの需要が月を追うごとに伸びてきている。企業によってはリモートワークの継続を行うこととなり、こうした遠隔でも人事管理を行いやすくなるサービスの需要が高まっていると思われる。

リモートワークというものが各企業に広がり、そのリモートワークの中でしっかりと成果を出していくことを目指す企業が増えている。人材管理についてもクラウドでという流れはニューノーマルとして、定着する可能性があるだろう。

図表7:HR-Techの訪問数推移
図表8:HR-Techの訪問数推移(前年同月比)

2-1-3. グループウェアは4月になってから大きく上昇

グループウェアはSlackのようなチャットサービスなど、メールに置き換わるようなものを集めたセグメント。こちらは、4月に急速に伸び、落ち着きを見せている(図9)。前年同月比では、4月は238%を超える水準であった一方、5月は198%と少し落ち着いてきた水準である。

また、図11のとおり、グループウェアに関してはCVRは上下動が非常に小さく、訪問数の増減に関わらず、CV数も同様の傾向を辿っている模様だ。

図表9:グループウェアの訪問数推移
図表10:グループウェアの訪問数推移(前年同月比)
図表11:グループウェアのCVR推移(前年同月比)

2-1-4. 営業・マーケ系はCVRも安定しており、ゆるやかな追い風といえるか

営業・マーケティング系のクラウドツールは、5月はまた2020年初頭の水準に落ち着いてきた(図12)。安定的な成長軌道といえ、ほかのセグメントに比べるとバブルといった感はないのが特徴だ。CVRも前年同月比で100%前後で安定的に推移しており、大きな影響が出ていない。営業まわりで需要は強いと言えど、広告宣伝費の抑制など「攻め」の投資は控える傾向も見られるため、コロナ禍においては、ゆるやかな追い風といえるかもしれない。

図表12:営業・マーケの訪問数推移
図表13:営業・マーケの訪問数推移(前年同月比)
図表14:営業・マーケのCVR推移(前年同月比)

2-1-5. 意外に需要の安定しない事務効率化ツール

事務効率化ツールは実は追い風も向かい風も受けているセグメントである。3月は訪問数は前年同月比107%で、CV数は同29%と大きく低迷していた。これは事務効率化の中でも導入に時間のかかる“コア業務”に近いツールでCV数が減少したことによるもの。やはり大きな意思決定をすることが難しくなった企業は、情報収集も含め、需要の急速な減退がおこったのだろう。

図表15:事務効率化の訪問数推移(前年同月比)
図表16:事務効率化のCVR推移(前年同月比)

2-2. 旅行業界は3月に前年比-60%下落と大きな打撃。特に閉園等に見舞われたレジャー施設系は急減

旅行業界は、コロナショックが向かい風となって甚大な被害を受けている。外出自粛をうけて、移動先での宿泊、アクティビティなどすべてのセグメントが苦しんでいる。特に海外旅行などはまったくできず、ゴールデンウィークも皆、ステイホームであった。

旅行業界に関連するWebサイト全般(ポータル、交通、施設、宿、旅行代理店)は、2019年12月には117ポイントあったものが、みるみると減少。4月には41ポイントまで減少、緊急事態宣言の解除されつつあった5月にやっと54ポイントに戻ってきた。

図18のとおり、前年同月比で見ても4月は-65%、そして5月は少し戻しての-55%となっている。大底は脱したものの、まだ夜明けは遠いようだ。

また、CVRも低下傾向。これまで100ポイントを割り込むことのなかった旅行業界も、2月と4月は100ポイントを割り込むなど、予約などのコンバージョンに至るまで、足はさらに遠のいているようだ。

図表17:旅行業界の訪問数推移
図表18:旅行業界の訪問数推移(前年同月比)

2-2-1. 最初に回復を見せたのは緊急事態宣言後に営業再開しつつあるレジャー施設

多くのレジャー施設は、緊急事態宣言以降は閉鎖を余儀なくされ、宣言解除後にゆるやかに営業再開しはじめた。そのため、従来通りの営業は出来ていないが、Webサイトへの訪問数も、4月には34ポイントまで落ち込んだものの、5月は64ポイントまで回復。前年同月比でみても、4月は-7割まで落ちたが、5月には-4割まで回復してきている。

また、施設の多くは緊急事態宣言下では営業できず、いつ営業再開するかもわからない状況だったため、予約などのCVポイントが実質的にほぼ機能しない状態であった。しかし緊急事態宣言の終了もあり、CVも戻ってきている。5月のCVRは前年同月比4割減ではあるものの、4月の同9割減からは大きく回復していると言えるだろう。

図表19:レジャー施設の訪問数推移
図表20:レジャー施設の訪問数推移(前年同月比)
図表21:レジャー施設のCVR推移(前年同月比)

2-2-2. 旅行代理店は依然として厳しい状況が続く

最も明確にコロナショックの悪影響がみられるのが、旅行代理店である。訪問者数は4月に22ポイントまで落ち込んでいたが、5月も26ポイントまでしか戻っていない。前年同月比で8割減の状態が継続している(図23)。ゴールデンウィークには夏季休暇の旅行先の検討などをする人も多い時期であったはずだが、今年は残念ながらまったくその傾向がなかった。CV数(ツアー予約)も同様に、4月に9割減となったまま、5月も回復を見せる様子はなく、依然として厳しい状況が続いている。

図表22:旅行代理店の訪問数推移
図表23:旅行代理店の訪問数推移(前年同月比)
図表24:旅行代理店のCVR推移(前年同月比)

2-3. ブライダル業界は3月に前年比-60%下落と大きな打撃。

ブライダル業界も向かい風を受けている業界である。コロナ禍では多くの新婚カップルが、結婚式をあげるのかを悩み、新婚旅行のキャンセルをするなど、人生の大きな転機を左右されるような出来事になってしまった。

そんな中、ブライダル業界についても、3つのセグメントに分けて状況を見ている。ひとつは結婚指輪、そして結婚式場や結婚式プロデューサーなどのプランナー、最後にフォトウエディングである。フォトウエディングは前撮り/後撮りなど、結婚式そのものだけでなく、結婚する2人の記念写真をとるようなサービスである。

これら3つのセグメントの4月5月の動きをみると、少し動きに差があった。それは前年同月比で、回復したのが結婚指輪、横ばいがフォトウエディング、そしてプランナーがさらに下落しているのである。結婚を控えていた人々の多くはその決断を先送りしていたのかもしれないが、徐々にそういった層がまずは結婚指輪からと動き出しているのだろうか。コロナの感染抑制がうまくいくのか分からない中での決断は難しいだろうが、ぜひ幸せになってほしいものである。

図表25:ブライダル業界の訪問数推移(前年同月比)

3. 風を捉えられているのかの判断を

特定分野に注目して、市場動向を探っているが、これらの数値をもとに、自分達がうまく対処できているのかを判断するのにぜひ活用していただきたい。たとえば、B2Bツールを提供する企業であれば追い風を力にできているのかという視点である。自社もしっかりと風を会社の帆で受け止め、推進力に変えられているかどうかで、数年後の市場の中での自社の立ち位置が代わっていく。一方、向かい風の業界であっても、デジタル活用などでニューノーマルへの対応をうまく行えた企業は、落ち込む他社を尻目に、成長曲線を描くことも可能だろう。ぜひみずからの立ち位置を再確認するのに、活用していただければ嬉しい限りだ。

各種参照データ

1. 業界とセグメント区分

本レポートにおいてデータ収集を行った100サイトの分類(業界およびセグメント)は以下の通り

業界とセグメント区分

2. すべてのセグメントにおいて、複数の企業のWebサイトデータをベースに指数を構築している

3. CVのポイントについては、お問い合わせ、資料請求、無料トライアル、予約など、各Webサイトによって違うが、本レポートでは単純合算をしている