2020.10.13

研究レポート

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第4弾 GoToキャンペーン東京解禁で再加速する観光業、リモートワーク関連B2Bは定着フェーズへ

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第4弾 GoToキャンペーン東京解禁で再加速する観光業、リモートワーク関連B2Bは定着フェーズへ

1. 「GoToTravelキャンペーン」東京追加の影響とリモートワークの追い風をうけるB2Bサービスの動向を調査した

WACULテクノロジー&マーケティングラボでは、これまで3回にわたって、Webサイトのアクセス解析データから、コロナショックの影響を推し量るレポートを相次いで発信してきた。

第1弾と第2弾では、追い風を受けるリモートワーク関連やデジタル関連のサービスの急伸とともに落ち込む観光業の動向をレポートした。また第3弾では、日本政府は7月10日、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光業界の消費を喚起する「Go To Travel キャンペーン」を、7月22日に開始したことを受けて、その落ち込んでいた観光業がどこまで回復したかをレポートした。

そこで今回は、10月1日にGo To Travelキャンペーンから除外されていた東京が加わることとなった9月の観光業のWebサイト動向、そして緊急事態宣言がなされリモートワークが急激の広まった際に特に大きく盛り上がったB2Bソリューション、特に遠隔会議システムのサービスサイトを見にいく訪問者数の状況についてレポートしていきたい。

当社は「AIアナリスト」を2020年9月30日時点で、日本のWebサイトを中心に約3.4万サイト以上に提供し、月間48億セッション程度のデータを保有している。

2. GoToTravelキャンペーン東京解禁でまた状況の変わった観光業

Go To キャンペーンは、新型コロナウイルスによって打撃を受けた飲食業や観光業を支援するために政府が実施する施策である。その中で、特に観光業を支援するものが「Go To Travel キャンペーン」で、7月の4連休からスタートした。しかし、当初は感染者数の多い東京都発着を除外して行われることとなり、約1400万人がこのキャンペーンに参加できないこととなった。実に日本の人口の10%以上にのぼる。

しかし、10月1日からついにその東京都発着にも本キャンペーンが解禁された。10月からの解禁について、そのニュースは9月上旬に各種メディアで報じられた。そこで第4弾の本レポートでは、9月の観光業界のWebサイトで、世の中の興味関心が特に表れる訪問数はどう動いたのかを調査した。「AIアナリスト」を利用する中で、観光関連サイトをピックアップし、旅行ポータルサイト、旅行代理店、宿泊施設、レジャー施設の4分類にわけて調査を行ったので、その結果を報告したい。

多くの人は、近場で遊ぶならばレジャー施設のWebサイトを訪れる。しかし、宿泊を要する場合には旅行ポータルサイトで情報収集し、その場で予約する、もしくは直接ホテルのサイトに行ってべストレートで予約をしたり、航空券などが必要となるような海外旅行など遠方への場合には旅行代理店のサイトへと向かうと考えられる。

前回レポート時点の7月時点では、少しは出かけてもよいかなと考える人が多いのか、レジャー施設は前年同月水準を取り戻しつつある一方、遠方への旅行はまだ回復したとは言えない前年同月比マイナス水準であった。

しかし、9月までのデータを見ると、また少し違った状況が見えてきた。それは旅行関連のしっかりとした回復である。特にGo To Travelキャンペーンのポイント還元が容易に得られるポータルサイトの急伸は目を見張るものがあろう。先に回復を見せていたレジャー施設(前年同月比+13%)を上回る前年同月比+21%と大幅に伸長。また、宿泊施設・旅行代理店も前年同月比-90%など酷い状況に陥っていたところから、9月には同-10%前後まで回復してきている。

2-1. 観光業界全体は前年同月水準まで回復。訪問数の回復がコンバージョンまでしっかり結びついている

本レポートでは、観光業界を4分類して調査したが、まずはその観光業界全体のトレンドを見る。すると、4月の前年同月比-65%を底に回復し、6月には同-29%、そしてGo To Travel キャンペーンの発表された7月には同-4%と、ほぼ前年同月比水準まで回復している。しかし、従来もっとも観光業界の盛り上がる8月には、7月から訪問者数が減少し、前年同月比で見ても減少している。Go To Travelキャンペーンの影響は一過性に過ぎず、前年同月を取り戻すには至らなかったのかと思われた。しかし、東京解禁が発表された9月には観光業界のWebサイトへの訪問数は再加速して増加。前年同月を超えるのはおろか、2019年以降の過去最高値を記録した。

図表1:観光業界の訪問者数推移

また、訪問数が回復するだけでなく、コンバージョンレート(コンバージョン数/訪問数、CVR)まで回復しているのが印象的。情報収集にとどまらず、訪問した人々はしっかりと予約など購買行動にまで到達していることがわかる。

図表2:観光業界のCVR推移

詳細は後段にて述べるが、観光業界を4分類して、それぞれをブレークダウンして見ると、面白い動向がみえた。

まず、すべてに通じてみえた傾向は2つある。ひとつは、ほとんどのセグメントで7月までの急回復が8月に落ち着き、9月に再加速している点である。また、もうひとつは、前回7月までは「近場の遊び場」関連であるレジャー施設が大きく回復していて、旅行系がそれを追いかける形であったため、Go To Travelの効果はあれど、まだ本格的な回復に寄与したとは言えないように見えていた一方、9月までのデータを見ると、旅行情報を載せたポータルサイトが大きく伸びている点があげられる。これはGo To Travelキャンペーンの恩恵を受けられるものに興味関心が集中したことで、そちらの勢いが増したことが理由であろうと思われる。

2-2. ポータルサイトが絶好調

次に回復を見せたのは旅行ポータルサイトであった。もともと情報サイト関連が多いこともあり、こちらは底であった2020年4月も前年同月比-50%と、他に比べると大きな落ち込みはなかったが、6-7月と順調に回復。やはりGo To Travel キャンペーンやコロナ疲れからであろうか、2020年7月には前年同月比+7%とプラスに転じた。その後も快進撃は止まらず、9月には同₊21%まで回復した。これはまさにGo To Travelキャンペーンの賜物であろう。

図表3:旅行ポータルサイトの訪問者数推移

ただ、CVRは前年同月比はマイナス圏であるものの、4月を底に順調に回復をみせてはいる。そのため、アクセス数の増加はコンバージョンにつながっていて、絶対値としても回復している。

図表4:旅行ポータルサイトのCVR推移

2-3. レジャー施設は再加速もポータルには及ばず

7月までGo To Travel キャンペーンとは関係性の薄いレジャー施設が強く回復したが、その後は落ち着きを取り戻している。8月は前年同月比で若干のマイナス圏に落ち込み、また9月にはプラス圏に戻るなど、上下が激しくなっている。

図表5:レジャー施設の訪問者数推移

2-4. GoToトラベルの本命、宿泊施設は前年同月水準に戻せず

Go To Travel キャンペーンの本丸である宿泊施設は、前年同月比-25%程度の落ち込みが続いていたが、9月に大きく回復してきた。そして実数値としても、例年水準に近づいてきた。一時の厳しさを脱し、一息つける水準まできたといえるだろうか。

ホテル業界はリゾート系やビジネス系、そして東京都内かそうでないかによって、トレンドに違いはある。中でも都内ではないリゾート系列は回復のトレンドが続いているようだ。

図表6:宿泊施設の訪問者数推移

2-5. 旅行代理店は長いトンネルをついに抜けた

最も厳しい状況にあった旅行代理店だが、ついに大きく回復してきた。2020年4月は前年同月比-79%、5月も同-77%、Go To Travel キャンペーンが開始された7月でも同-41%であったが、9月には同-12%まできた。

また、CVRは4月を底に継続的に改善している。7月以降は前年同月比でプラス圏に突入、そして7月には前年同月比で1.8倍程度まで強くなっている。訪問数の回復が強くCVに至っていることが分かろう。

Go To Travelキャンペーンで、長いトンネルをついに抜けだしたといえるだろうか。

図表7:旅行代理店の訪問者数推移
図表8:旅行代理店のCVR推移

3. B2Bクラウド業界はバブル状態からは落ち着くも依然好調。パニックバイから実需水準への移行期か

緊急事態宣言時から、リモートワークの急速な普及や対面営業の難しさなどから、遠隔会議システムなどのB2Bクラウドソリューションが爆発的な普及を見せていた。そうした業界は今、どうなっているのだろうか。

訪問数を見てみると、4月のバブル的な状況からは落ち着きつつあるものの、前年同月比+50%水準を維持している。これは、一時的なバブルともいうべき「パニック・バイ(=とにかく導入しよう!というような、混乱状態での購買行動。緊急調達)」の局面を越えて、ゆるやかに定着の兆しを見せているのかもしれない。

図表9:B2Bクラウド業界の訪問者数推移

また、B2Bクラウド業界にはECパッケージ、グループウェア、営業・マーケ、遠隔会議、事務効率化、情報収集、人材管理のセグメントがある。この中で、4月の緊急事態宣言下では、遠隔会議システムは最も爆発的な需要を生み、訪問数は前年同月比10倍を超えていたが、その後は月を追うごとに落ち着きを見せるなど、B2Bクラウド全体と同じ傾向を見せている。一方、グループウェアのように、9月になって再度訪問者数の増加がみられるものもあるのが興味深い点だった。

3-1. 遠隔会議システムは前年同月比10倍以上というバブルから今は4倍水準で安定

4月の緊急事態宣言下で前年同月比で10倍を超えた遠隔会議システム。当時は、とにかくリモートワークができる体制を作るうえで最初に導入が必要となり、企業が殺到したセグメントであろう。

それ以降は徐々に落ち着きつつあるものの、7-9月は安定的に前年同月比で4倍水準を保っており、社会における定着フェーズに入ってきているといえるだろうか。

図表10:遠隔会議システムの訪問者数推移

3-2. グループウェアが再加速。リモートワークの長期化で需要がしっかりついてきている模様

社内の情報共有を行うクラウドサービスであるグループウェアについて見てみると、B2Bクラウド全体の動向とはまた違った傾向があった。

グループウェアはピークこそ緊急事態宣言下の4月といえど、前年同月比は+150%(2.5倍)程度であり、7月には前年同月比+50%まで落ち着いてきていた。しかし、そこから再加速を見せており、9月には前年同月比+100%(2倍)に至るなど、4月の水準に近づいているのだ。B2Bクラウド業界の7セグメントで9月にもこうした強さを見せたのは唯一グループウェアだけであった。

パニックバイがおさまる中で、リモートワークを続ける企業がコミュニケーションの円滑化を考える中で、メールなどのこれまでの連絡手段より、よりよい非同期コミュニケーションを求めつつあるのかもしれない。

図表11:グループウェアの訪問者数推移

4. コロナショックで社会が変化する“変曲点”を越えて、徐々に新しい社会が構築されているだろうか

社会を急変させた新型コロナウイルスの蔓延、そして4月の緊急事態宣言など、春は社会の“変曲点”であった。そしてその変曲点を夏に越え、この秋は新しい社会が定着していく時だろうか。その定着の第一歩がこの9月なのかもしれない。

また、次の注目すべき点はこのGo To Travelキャンペーンの着地であろう。補助金によって火をつけたはいいが、そうしてつけられた勢いが、その後もしっかり残るのか、それともキャンペーンの終了と共に終わってしまうのか。

そして、B2Bクラウドに関しては、新しい働き方・新しい社会の中で、真に求められるものは、今後静かに需要増が起こりそうだ。遠隔会議システム、そしてグループウェアの次は何が求められるだろうか。そこで求められるものはきっと、新しい社会においては“普通”のものになれるものかもしれない。

※この研究レポートはWACUL社提供のAIアナリストに登録されたサイトデータを元に作成されました。
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