2022.07.06

研究レポート

【マーケティングDX部門に関する実態調査を実施】4割以上が「DX部門」を設立するも、事業部との連携に課題を抱える実態が明らかに。「作業支援」を求める事業部門に対し「全体最適」を望むDX部門で認識のズレが顕著 〜連携において「人間関係に課題あり」がDX部門は2割だが、事業部門は5割と高い傾向〜

本調査のサマリ

1) 4割(39.8%)が部署を横断して「マーケティングDXを推進する部署」があると回答。この部署でデジタルマーケティングを担うのは3~10人の少数精鋭型

2) 横断部門は、上流の戦略策定も行っているが、下流の手を動かす作業に従事していたり情報システム部門のようにIT導入業務に関わる部分が多いのが実態

3) DX横断部署は、戦略策定に適したメンバーではなく、マーケティング・データ分析に長けた人材が集められていることから、戦略策定も行うものの、コンテンツ作成やデータ分析などの実務に追われている実態

4) DX横断部署と事業部門では認識のズレが多々ある。お互いに自部署については「人手が足りない」ことを課題と認識しているが、お互いの部署に対して、DX横断部署は「事業部のビジネス理解が足りない」、事業部は「DX横断部署のデジタル知識が足りない」ことを課題としている。ともに自部署については「人の“数”が不足している」と考えるが、他部署に対しては「人の数ではなく“知識/理解”が不足している」と考えている

5) 「作業支援」を求める事業部門に対し「全体最適」を望むDX部門で認識のズレが顕著。事業部門から見たDX横断部署の仕事は「各施策のサポート」や「ツール導入」などの裏方としての支援であり、戦略策定など上流にまつわる仕事はできていない認識がある

6) 連携において「人間関係に課題あり」がDX部門は2割だが、事業部門は5割と高い傾向。DX横断部署が思っている以上に事業部門は心をひらいていない実態。

調査の背景

近年は、世界的に最新鋭のIT技術を活用した製品、サービス、ビジネスモデルが続々と生まれ、市場がめまぐるしく変化している。ビジネスの現場でもこうしたIT技術を活用することによって、ビジネスモデルそのものや事業オペレーションの変革を起こす、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まっている。

そうした環境変化を受けて、経済産業省は2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置。同年9月に『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を発表した。レポートの中では、2025年には既存システムの老朽化や人材不足が顕在化し、DXが実現しない時には日本全体の経済損失は年間最大12兆円にのぼると試算している。

DXの重要性が企業に徐々に浸透しつつある中、企業はその重要性を徐々に認識してきていたが、新型コロナウイルスの感染症拡大がこの流れを加速させた。これまで以上に様々なビジネスや組織で「DX」が必要とされている。特に、コロナ禍においてリアルでの接点を失った企業は、マーケティングDXの必要性を強く感じるようになった。

そんな中、大企業を中心に、事業全体を横串で通し、組織横断でマーケティングDXを進めるDX組織、もしくはデジタル推進組織の立ち上げが進んでいる。しかし、こうしたDX組織は必ずしもすべてが成功しているとは言えない。

WACULでは、企業のDX専門部門に対し、マーケティングのDXコンサルティング支援を提供する中で、DX部門と事業部門との連携に課題があるケースが多いことから、同様の課題が多くの企業で起こっているのではないかと考え、DX部門と事業部門の協働に関する認識や、連携を取る中でどのような課題を抱いているのかなど、認識のズレを明らかにするためにアンケート調査を実施した。

調査の詳細

1) 4割(39.8%)が部署を横断して「マーケティングDXを推進する部署がある」と回答。この部署でデジタルマーケティングを担うのは3~10人の少数精鋭型

今回、デジタルマーケティングに関わる企業の担当者 123名に対してアンケート調査を実施したところ、部署が2つ以上ある組織を横断して「マーケティングDXを推進する部署がある」と回答したのは4割(39.8%)と、企業がデジタル施策に対する対応の必要性を感じ、DXを推進するミッションを社内の何かしらのチームに課していることがわかった。

以下では、「マーケティングDXを推進する部署がある」と回答した4割(39.8%)のアンケート結果にフォーカスして、DX部門と事業部門の関係性を深掘りしていく。

このDXを推進する部署において、デジタルマーケティングを担当する人員の規模についても聞いた。横断部署をつくる企業でも、デジタルマーケティングのチーム規模は3~10人の少数精鋭で運営することが多い。決して潤沢とはいえないチーム規模であることが分かる。

2) 横断部門は、上流の戦略策定も行っているが、下流の手を動かす作業に従事していたり情報システム部門のようにIT導入業務に関わる部分が多いのが実態

実態を見える化するために、デジタルマーケティングを担うとする人々が具体的に何を行っているのかについて調査したところ、DX部門は上流である戦略策定もやっているものの、KPIなどの設定よりも、むしろコンテンツ作成やデータ分析、ツール導入など、下流の手を動かす業務を行う部署になっている実態であった。同様に、事業部門内にいるデジタル担当者は、ツールの導入やデータ分析など、実務に近いIT関連の業務を行っているケースが多いことが分かった。

3) DX横断部署は、戦略策定に適したメンバーではなく、マーケティング・データ分析に長けた人材が集められていることから、戦略策定も行うものの、コンテンツ作成やデータ分析などの実務に追われている実態

DX部門のメンバー構成について、DX部門のメンバーが得意とするスキルを聞いた。「戦略策定」よりも「(デジタルに限定しない)マーケティング」「データ分析」が得意な人たちとなっている。上流に強みを発揮するタイプより、あくまでデジタルに限定しないマーケティング全般やデータ分析などに特化した人材であることが分かる。

一方、社内調整が得意という人が3番目にあがるのが興味深い。このスキルは“組織横断でプロジェクトを進める”ためのスキルとして、最も重要といっても過言ではないが、その点を押さえて配置をしている企業が45%いるということが分かる。

DX部門と事業部門はお互いにうまく業務を分けながらコラボレーションができているのかを確認するために、それぞれに同じ質問をしたところ、相互の意識のズレが見られた。これは横断部門を作ったもののうまくいかない要因となっていると考えられる。

まず、DX部門は「デジタル戦略策定」を担いたいと考えているが、事業部門はもう少し具体的な「オフライン/オンラインの連携方針策定」を求めている。デジタルに閉じた戦略を考えて行うのがDX部門だと本人は考えているものの、事業部門としてはデジタルにとどまらず事業部横断が必須である「オフライン/オンラインの連携」の支援を求めている。O2Oやオムニチャネルといった言葉に代表される、オンラインとオフラインをいかに連携させるかが問われる昨今において、この課題の解決がDX部門には求められているのだろう。DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉において、強いアクセントを“デジタル”に置くのか、“トランスフォーメーション”に置くのか、そのミッションの与え方や全体へのアナウンスを通じた意識統一が行われていないことを示しているだろう。

4) DX横断部署と事業部門では認識のズレが多々ある。お互いに自部署については「人手が足りない」ことを課題と認識しているが、お互いの部署に対して、DX横断部署は「事業部のビジネス理解足りない」が、事業部は「DX横断部署のデジタル知識が足りない」が足りないことを課題としている。

次に、横断部署であるDX部門の課題を、DX部門自身と事業部門のそれぞれがどう感じているかを聞いた。ほかの問いに対しては比較的共通のものが散布図の右上に向かって連なっている。しかし、それぞれから最も高い比率で挙がる声をみると、DX部門が「人手が足りない」というリソース課題を挙げている一方で、事業部門は「事業部のビジネス理解の不足」という頭脳の問題だと感じている点が興味深い。

逆に、事業部側の課題をそれぞれがどう捉えているかも聞いた。当人である事業部門は「人手が足りない」ことが課題だと感じているが、横断部署は「デジタルマーケティングの理解が足りない」と考えている。知識はあるが人手が足りないだけなのか、知識が足りないのであって人手の問題ではないのか、ここでも相互認識のズレが露見した。

“デジタルマーケティングの理解ができる人材”の不足が多くの企業において課題になっているが、こうした人材の不足感は当社が事業を展開している中でも頻繁に聞くため、これは人材市場全体の課題といえる。

5) 事業部門から見たDX横断部署の仕事は「各施策のサポート」や「ツール導入」などの裏方としての支援であり、戦略策定など上流にまつわる仕事はできていない認識がある

また、事業部門は、横断部署が予算策定にまでは入り込んでいないと認識しており、個別施策のサポートやツール選定など、あくまで施策のサポートを担っていると感じている。社内会議の設定や進捗確認などプロジェクトマネジメント関連の業務を行うという立場だと考えているのである。

6) 連携において「相談できる」以上の関係だと答えたのはDX部門は2割だが、事業部門は5割と高い傾向。DX横断部署が思っている以上に事業部門は心をひらいていない実態

横断部署は事業部との仲について、「相談できる」以上の関係だと答えたのが7割以上であるのに対し、事業部は同様の回答が5割にとどまる。トランスフォーメーションを実現するためには、お互いの関係性を近くし相互の理解を深めていくことが土台となるが、現実的にはDX部門が思っている以上に事業部門は心をひらいていない可能性がある。

本調査からの提言

調査の結果、デジタル・トランスフォーメーションを成し遂げるために組織横断でDX/デジタル施策を推進する部門(以下、DX部門)を置いても、DX部門と事業部門の間で認識の齟齬が生まれてしまうことが多く、結果として横串部門であるDX部門は成果が出しづらくなってしまっていることがわかった。

特に、DX部門は「戦略・KPIの設計やシステム基盤の構築」などの大きな絵を描くことをやろうとしているのに対して、事業部門はDX部門を「コンテンツづくりなどの作業を行ってもらうための下請け」のような立ち位置で捉えていることが問題といえる。

これらの認識のズレを解消し、全体としての成果を最大化するためには、1.DX横串部門を置いたときのミッションとそれに紐づく期待される業務の明確化、権限の付与、2.トップダウンや社内広報によるDX部門の社内認知の獲得、3.事業部門との相互理解を促すための現場同士のコミュニケーション交流、4.ミッションに合わせたスキルセットを持つ人材の登用の4つが求められていると考える。

WACUL 代表取締役 垣内のコメント

私がDX部門のパートナーになり、事業部門を支援するというプロジェクトをこれまで数多く経験してきたが、成功の鍵は常に泥臭い「信頼関係」の構築だった。

多くの場合、事業部門は「売上」または「顧客満足度」にコミットしている。DX部門は、逆説的だがデジタル活用に固執せず、事業部門への貢献にコミットすることで「信頼関係」が生まれる。具体的には、「売上」なら短期で少しでも数字に跳ねるQuick Winの達成が有効だったし、「顧客満足度」ならDX部門と事業部門が一丸となって顧客調査を企画・見学することが有効だった。

「DX」は手段に過ぎず、その押し付けは事業部門にとって迷惑でしかない。DX部門が成功するには、事業部門のKGI・KPIへの貢献を前提とする「ペイフォワードの精神」が不可欠である。

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