2020.05.14

研究レポート

ECのCVR改善に寄与する特集ページのベストプラクティス研究

ECのCVR改善に寄与する特集ページのベストプラクティス研究

調査に至った背景

効果検証されてこなかった特集ページのノウハウを明らかに

右肩上がりに成長を続ける日本国内のEC市場。先日公開した研究レポート「ECの競争激化とSEO依存の限界への提言」では、アパレル業界を例に特集ページがECのCVR改善に有効であることを提言した。

しかしながら特集ページは「季節ごとのルーティン」「売れ残った商品の在庫処分の手段」として取り組まれることが多く、どのようなコンテンツがよりCVR改善に寄与するのか、十分な効果検証が行われてこなかった領域といえる。

そこで当調査では、AIがWebサイトのアクセス解析から改善提案まで自動で行う「AIアナリスト」に蓄積されたECのデータをもとに、特集ページをパターン別に分析。CVR改善の武器として特集ページを作成する際に役立つノウハウをまとめた。

調査内容

特集ページを経由した場合と商品一覧ページを経由した場合のCVRをパターン別に比較

当調査では、特集ページを経由した場合と商品一覧ページを経由した場合のCVRを、特集ページのパターンごとに比較する。

前提として、過去の研究レポートと同じく今回も最も市場規模の大きいアパレル業界を例に進める。特集ページのパターンは、対象となったアパレルEC16サイトの全特集ページを確認した結果以下の11種類とした。

図表1 : 特集ページのパターン一覧

また、特集ページの比較対象として商品一覧ページを取り上げる。商品一覧ページは「あるテーマのもと商品をまとめて紹介する」という機能において特集ページと重なるが、表現の幅に大きな違いがある。商品一覧ページはシステムにより自動生成されるため比較的無機質だが、特集ページは意図的に紹介する商品に優先度をつけたり情報量を充実させたりすることができる。

細かな調査条件は以下のとおりである。

データ抽出元 AIアナリスト
対象サイト アパレルEC 16サイト
対象ユーザー スマホからトップページに流入したリピーター
データ抽出期間 2018年12月〜2019年11月の1年間

補足:特集ページは「新規ユーザーからの検索流入」を目的に作られることもあるが、多くのECにとって、圧倒的な商品点数を誇る巨大ECよりも検索上位に表示されることは容易ではない。よって今回の調査では、特集ページの目的を「リピーターのCVR改善」においた上で対象ユーザーを設定した。

調査結果

商品一覧ページよりもCVRが高い特集ページは11パターン中9パターンあり、最大2.7倍増

アパレルEC16サイトに対し、商品一覧ページを経由した場合のCVRに対して特集ページを経由した場合のCVRを比較した値(CVR増加率)を洗い出し、最小値・中央値・最大値をグラフ化した。(図表2)

短い横棒で表される中央値が1を超えている場合「商品一覧ページよりも特集ページの方がCVRが高い」といえるが、ご覧のとおり11パターン中9パターンで1を超える結果となった。総じて特集ページがCVRを高める上で有効であることがわかる。

また、縦棒が長い=最小値と最大値の開きが大きい「福袋」「ブランド」などは、値引き額や取り扱うブランドによってCVRの良し悪しに影響が出ていると考えられる。

図表2 : 特集ページのパターン別CVR増加率

「セール」「福袋」など値引きを伴う特集と「雑誌掲載」「コラボ」特集は特にCVRが高い

値引きを伴う「セール」「福袋」特集や、外部パートナーと連携した「雑誌掲載」「コラボ」特集はCVR増加率が1.5倍以上と高い。なかでも「福袋」は2.7倍と11パターン中最大の増加率だ。ただしこれらの特集はWeb担当者だけで企画推進することが難しく、作成に時間がかかってしまうのが課題である。

「コーデ」「カテゴリ」「ブランド」など既存商品の組み合わせですぐに取り組める特集でもCVRは増加する

一方、既存商品の組み合わせで成り立つ「コーデ」「カテゴリ」「ブランド」特集でもCVRは1〜1.5倍増加している。調査したサイトのうち、3パターンいずれかの特集ページに取り組んでいるECは5割強に留まった。CVRを改善したいと考えるWeb担当者なら、まずはここから着手することをおすすめする。

「新着」「ランキング」特集は商品一覧ページよりもCVRが低い

「新着」「ランキング」特集はCVR増加率が1未満、すなわち商品一覧ページよりもCVRが低い結果となった。特に「新着」特集はCVR改善率0.7倍と11パターン中最小の値だ。

これには「購入意欲がなくとも毎日のようにサイトを訪れては新着商品をまずチェックする」という、リピーターによくあるユーザー行動が影響していると考えられる。いかに典型的な行動であるかについては以下の事例にて紹介している。

ECで売上だけ見るのは危険? – O2Oのユーザ行動を解明したプラザスタイルのDX(デジタルトランスフォーメーション)事例

関連施策

フッターから特集ページへ回遊させることでCVR改善

流入はあるもののCVに繋がりにくい「新着」特集や商品一覧ページは、CVRの高い特集ページへ積極的に回遊させることで有効活用できる。回遊を促すベストポジションはずばりフッターだ。

ユーザーはなにかしらの目的をもってWebサイトを訪問する。アパレルECのリピーターの場合、「新着商品」「気になる商品の値引き状況」「気になるけど売り切れていた商品の再販状況」などをチェックすることが目的であり、トップページから流入した後はまず目当てのページへ直行する。

回遊させるポイントは、ユーザーが目的を達成した後、「次はなにを見ようかな……」と心のスキが生じるタイミングで次の選択肢を提示することだ。この心の動きが起こるのがまさにフッターであり、回遊の一等地といえる理由だ。

実際に大手ECの商品一覧ページのフッターを見るとユーザーを回遊させるための工夫が凝らされていることがわかる。

図表3 : フッター活用事例

CVRの高い特集ページが作れたとしても、そもそもの流入がなければ成果には繋がらない。特集ページの活用は「新着」特集や商品一覧ページのフッターから回遊させる施策とセットで取り組んでいただきたい。

本調査の提言

ECの特集ページはリピーターのCVR改善に寄与する。特にCVRが高まるのは値引きを伴う「セール」「福袋」特集や、外部パートナーと連携した「雑誌掲載」「コラボ」特集だ。

また、既存商品の組み合わせで成り立つ「コーデ」「カテゴリ」「ブランド」特集にもCVR改善効果がある。これから特集ページを作成する場合はまずはここから取り組むことをおすすめする。

当然ながらこれらの特集ページは流入がなければ価値を発揮できない。トップページだけではなく「新着」特集や商品一覧ページのフッターからの動線を作ることで、積極的に特集ページへ回遊させることが重要だ。

ディノス・セシールCECO 石川氏 コメント

本レポートにもある通り、ECサイトにとって特集などの静的コンテンツは非常に重要だ。レポートではCVRという指標について調査がなされているが、特集ページが果たす役割は多岐に渡る。

私が関わるサイトでは、主に以下のような観点で特集ページに役割を持たせている。

  1. (主に)新規顧客の集客
  2. 既存顧客へのリテンション
  3. 閲覧ユーザーのCVR向上

1については、コンテンツマーケティングの文脈と合流する。ECサイトが得意とする商品一覧ページ等の動的ページをLPとした自然検索流入では取りきれないセッションをいかに獲得するか。例えば季節性のある特集やコーディネート提案などを静的コンテンツとして保有することで得られる顧客接点は、ECサイトの基礎的な集客力を醸成する。
2については、EC事業にとって最も重要である。既存の顧客とコミュニケーションをとる中で受注を獲得することが利益最大化の要諦であるが、何もネタがないのにアプローチはできない。常に顧客への提案を複数持つことができれば、断続的なアプローチを可能とし、利益体質なビジネスを構築できるであろう。
3については、本レポートに詳細がある通り、特集の最も純粋な効用といっても良いだろう。その特集によってもたらされた商品提案によって、顧客の潜在ニーズが顕在化し、「欲しい」と思う効果が得られるかどうかが指標となる。

このように、特集ページには様々な効果が期待される。EC事業者はぜひとも特集コンテンツを低コストで大量に生成するための仕組みや体制作りに取り組んでいただきたい。

株式会社ディノス・セシール CECO 石川森生

1984年生まれ。SBIホールディングス入社後、SBIナビ(現ナビプラス)の立ち上げ。その後、ファッション通販・マガシークでマーケティング責任者として、サイトリニューアルやサイト改善PDCA確立、広告CRM最適化、海外の最先端ソリューション導入推進。株式会社タイセイのWEB部門を分社化し株式会社TUKURUを創業。2016年2月にディノス・セシール入社と同時にCECOに就任。既存の枠組みを超える、サスティナブルなECビジネスを構築するというミッションを実践、現在に至る。

WACUL 取締役CIO 垣内のコメント

おそらくどのECでも「特集」自体は運用しているでしょう。しかし「特集」のあるべき姿が論じられているケースは全くと言っていいほど見かけません。

今回の研究で一番価値があったのは、「カテゴリ」「コーデ」「ブランド」などいつでも量産できる特集ページが、CVRを引き上げ効果を証明したことです。

これらの特集は、何かイベントがなくても、常日頃からブラッシュアップし続けられます。ECパッケージの刷新などを検討する前に、主要カテゴリだけでも、即座に静的な特集ページを作ってしまえばよいのです。

Amazonや楽天などのプラットフォーマーが強大化する中で、それ以外のECはリピーターを大切にしなければなりません。そのためには、特集ページの作り込みが欠かせません。

WACUL 取締役CIO 垣内勇威(@yuikakiuchi

1984年生まれ。東京大学を卒業後、株式会社ビービットに入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに多数携わる。2013年に株式会社WACULに入社、取締役に就任。WACULでは、AIを活用したWebサイト分析サービス「AIアナリスト」の立ち上げに関わり、現在は「AIアナリスト」を基盤とした、新たな価値創造・事業創出をすべく、新規事業インキュベーションの責任者を担当。