2020.11.19

研究レポート

成果を出す人がGoogleアナリティクスで使う機能は10個だけ。アクセス解析の実態調査

成果を出す人がGoogleアナリティクスで使う機能は10個だけ。アクセス解析の実態調査

調査に至った背景

Googleアナリティクスにおいて「成果を上げるために見るべき機能」を明らかに

マーケティングに携わる人であればほとんどが触っているであろう代表的なアクセス解析ツール・Googleアナリティクス。しかしながら他者がどのように利用しているのか知る機会は意外と少なく、「なんとなく数字をチェックしてはいるが改善策を見つけられていない」「たくさんある機能を使いこなせておらず苦手意識がある」という方も多いのではないだろうか。

そこで今回は、アクセス解析の実態調査としてGoogleアナリティクスに関するアンケートを実施。CVR改善など、成果を上げるために使うべき機能・使わなくてもよい機能を明らかにした。

調査内容

Googleアナリティクス活用ユーザーにアンケート調査を実施

マーケティング担当者など普段からGoogleアナリティクスを活用している方を対象に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼。

また、Googleアナリティクス活用歴10年以上の有識者であり、当WACULテクノロジー&マーケティングラボ関係者である3名の経営者からも同様のアンケートに回答してもらった。

  • 研究顧問:株式会社ディノス・セシール CECO / 株式会社bydesign 取締役CGO 石川森生氏
  • 研究パートナー:株式会社ベイジ 代表 枌谷力氏
  • 所長:株式会社WACUL 取締役 CIO 垣内勇威
回答対象者 Googleアナリティクスを活用している方(マーケティング担当者など)
有効回答数 73人 + 有識者3人
回答期間 2020年10月6日〜23日

※Googleアナリティクスのバージョンについて:新バージョン「Googleアナリティクス 4 プロパティ」ではなく、従来の機能を前提に調査を実施している。

調査結果

習熟度

今回のアンケート回答者のGoogleアナリティクス習熟度は以下のとおりである。

アンケート回答者のGoogleアナリティクス習熟度

利用場面

Q.Googleアナリティクスはどんな場面で利用していますか?(複数回答可)

複数の場面で利用している回答者がほとんどで、特に「打った施策の効果を検証するとき」が最も多くの票を集めた。

利用頻度

利用頻度についてはGoogleアナリティクス習熟度によって傾向があるかどうかを確かめるため、以下のセグメントごとにグラフ化した。

  • 有識者
  • 歴が3年以上のベテラン / 1年未満の若手
  • 苦手意識がある / ない
  • CVR改善経験が何度もある / ない
Q.Googleアナリティクスを利用する頻度について、最も近いものを選択してください。

全体と比較すると、「ベテラン」「苦手意識なし」「CVR改善経験あり」層の利用頻度が高いとわかる。特にCVR改善がある人たちは約半数が1日に1回Googleアナリティクスを利用しており、熱心にアクセス解析に取り組んでいるといえる。また一方で、有識者に限っては経営者ということもあり、少ない頻度で効率よくチェックしようという姿勢が見受けられる。

以降の調査結果はCVR改善のために使うべき機能・使わなくてもいい機能を明らかにするために、CVR改善経験ありユーザー(25名)と有識者(3名)がGoogleアナリティクスで使っている機能・使っていない機能を見ていく。

使う機能・使わない機能

下図赤枠「リアルタイム」「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」における(最下層は含まない)全39機能について、利用頻度を尋ねた。

赤枠「リアルタイム」「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」における(最下層は含まない)全39機能について、利用頻度を尋ねた

結果を集計し、以下の基準にて各機能に◯☓を付与した。

半数の14名以上が「1週間に1回以上使う」と答えた機能(10機能)
半数の14名以上が「ほとんど使わない」あるいは「使ったことがない」と答えた機能(15機能)
-(空欄) ◯☓どちらでもなく、回答が割れたあるいは1〜3ヶ月に1回の頻度で使われている機能
表1:GoogleアナリティクスでCVR改善のために使うべき機能・使わなくてもいい機能

「リアルタイム」「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」という大カテゴリごとに見ると、圧倒的に「集客」系の機能が使われていることがわかる。一方、「ユーザー」系の機能はベータ版が含まれていることも影響しているだろうが、あまり使われていないことが明らかとなった。

また、機能とは別にクロス集計でよく使う指標(=セグメントやセカンダリディメンションでよく選択する指標)についても質問したが、以下の回答が得られた。

Q7. クロス集計の際によく使う指標を教えてください。(=セグメントやセカンダリディメンションでよく選択する指標を教えてください。)(複数選択可)

こちらの結果からも、ユーザー属性より流入経路などの集客周りがチェックされていることがわかる。

使う機能をCVR改善経験の有無別に比較

さらに考察を深めるために、CVR改善経験なしユーザー(26名)がよく使っている機能を洗い出し、「使うべき機能」とギャップがあるかどうかを確認した。

以下の表2は、有識者含むCVR改善経験ありユーザーの回答から導き出したGoogleアナリティクスで使うべき機能・使わなくてもよい機能をまとめた表1の右に、「CVR改善経験なしユーザーが1週間に1回以上使う機能TOP12」を追加したものである。

表2:表1右に「CVR改善経験なしユーザーが1週間に1回以上使う機能TOP12」を追加

ギャップがあった、すなわちCVR改善経験なしユーザーだけがよく使っている機能は以下のとおりだ。

  • リアルタイム > 概要
  • ユーザー > ユーザー属性
  • ユーザー > 行動(新規顧客とリピーター)
  • 集客 > ソーシャル
  • 行動 > 行動フロー

有識者3名にこれらの機能を使わない、あるいはたまにしか使わない理由を追加でヒアリングしたところ、以下のような回答が得られた。

リアルタイム > 概要

  • テレビCMなどスパイクが起きる期待があるときだけ眺めて楽しむ。(石川)
  • 記事がバズっている時しか見ない。「同時に500人も見ている」ということを知れると喜びが増すが、それ以外に使い道はない。(枌谷)
  • テスト計測くらいでしか見ない。趣味で熱帯魚を観賞するようなもの。(垣内)

ユーザー > ユーザー属性、行動(新規顧客とリピーター)

  • 年齢や性別といったデータは推測値であり正確ではない。そもそも年齢や性差が購買に影響を与えている商材でない限り、これらの情報が有益な考察やアイデアに結び付くことはほぼないので見ない。新規顧客とリピーターは集客やコンバージョンなど他のレポートで確認できるため、あえてこのレポートだけを見ることはない。(枌谷)
  • 特別な商材でもない限りコンバージョンに大きな影響がない。(垣内)

集客 > ソーシャル

  • ソーシャルは直接の集客だけを目標にすると効果を見誤ることが多いため注意が必要。(石川)
  • ソーシャルメディアで企業やブランドを認知した際、必ずしも直接遷移するとは限らず、むしろ指名検索などに転換されることが少なくない。それ故に、アクセス解析上で「ソーシャル」からの流入数を見ることはほとんど意味がない。それどころかソーシャルの効果を過小評価してしまう可能性がある。(枌谷)

行動 > 行動フロー

  • サイト内の特定ページもしくはプロセスについて改修案を立てたり効果検証したりする際にたまに使う程度。(石川)
  • 入口から出口に向かう途中経路は人それぞれであることが多く、ここからコンバージョンに繋がる有益な示唆を得られることはほぼないため見ない。(枌谷)
  • 細かすぎて改善につながらない。木を見て森を見ずになる。(垣内)

本調査の提言

GoogleアナリティクスでCVR改善のために見るべきは主に「集客」系の機能であり、「行動」「コンバージョン」系の機能は概要を見るだけでも十分だと言える。集客周りのデータが重視されているのは、流入元やランディングページはCVRに直結するものであり、且つ変動性が高いからだ。

また一方で、「ユーザー属性」や「行動フロー」など、CVに影響しないもののよく見られている機能が存在することもわかった。言ってしまえばこれらの機能を眺めている時間は無駄であり、捨てるべきだ。当レポートで明らかになった見るべき機能を参考に、ぜひアクセス解析の密度を高めてほしい。

ディノス・セシールCECO / 株式会社bydesign 取締役CGO 石川氏のコメント

本レポートには10個とあったが、私が使うのは1個+αだ。それはずばり、

集客 > すべてのトラフィック > チャネル

だけ。これにセグメント設定したり、各セカンダリディメンションで少し深掘りをするくらい。あとのものは日々の定点観測ではほとんど使わない。理由は身も蓋もないが、数字を眺めていても売上は上がらないから。日々のサイトの健康状態をチェックするにはここだけで十分である。

もちろん、サイト改修で特定のページについて手を入れる期間の前後は「行動」系のレポートも見る。いずれにせよそれくらいだ。

ぜひマーケティングを生業にしている方には、商品やサービス、それらを表現するためのコンテンツ、それを顧客に届けるためのタッチポイント増強に時間を費やし、顧客の目に見える部分のレベルアップを優先していただきたい。

株式会社ベイジ 代表 枌谷氏のコメント

Googleアナリティクスをはじめとするアクセス解析に関してよく聞くのが「何を見ていいか分からない」「使いこなせない」という声である。このような声の一番の問題は、アクセス解析を使う意味が分かっていないことにある。

まず、アクセス解析は仮説がないとほとんど意味がない。仮説を見出すために最初に大雑把な傾向を掴むこともあるが、以降は仮説を確かめるための解析になる。

だから「何を見ていいか分からない」ということの根本的な問題は、仮説がないことであろう。また、仮説をピンポイントで確認することが主な使用方法なので、「使いこなせない」という考えも間違っている。多くの機能を使いこなす必要はないのである。

そんなアクセス解析は、私は入口と出口の分析にしか使わない。入口とはウェブサイトの流入経路とランディングページの周辺である。出口とはコンバージョンの周辺である。そのため見るレポートはかなり限られている。

さらに、精緻に数字を確かめることもしない。大雑把な傾向を掴むためにしか使わない。アクセス解析の計測基準を突き詰めると、実は案外曖昧なことを知る。ユーザー数は厳密なユーザー数ではない。例えばPCとスマホから閲覧してきた同一人物はアクセス解析上では2ユーザーになる。セッションは30分以内に発生した行動の連続に過ぎず、30分以上席を外してから閲覧を再開すると、再訪問扱いになる。このように、それぞれの数字はアクセス解析の技術的仕様が絡んだ特別な定義がなされていることが多い。そのため、細かな数字に執着しても仕方がない。

ちなみに、私が一番よく使う機能はセグメント機能とセカンダリディメンションである。アクセス解析の真髄は情報をセグメントすると浮き彫りになる差異から、想像力を膨らませて改善のヒントを得ることである。こういったセグメント系の機能さえ使えれば、あとは覚えることは少ない。

最後に、アクセス解析で最も大切なのは「有益な改善のアイデアを出す」ということである。いかにアクセス解析のオペレーションに精通していても、「だから何?」「解析する前からそんなの分かってる」という結論やアイデアしか出てこないのであれば、アクセス解析に時間を費やした意味がない。

個人的には、Googleデータポータルを使ってモニタリングしたい項目だけを1ページで確認できるようにしておけば、Googleアナリティクスを使う機会は一か月に一回も訪れないのでは、と感じている。

アクセス解析が完全に無意味とは思わないが、考え方や使い方を誤ると、時間を無尽蔵に浪費してしまうリスクがある。ツールに振り回されないよう、自分のアイデアと仮説に軸足を置いて活用したいものである。

WACUL 取締役CIO 垣内のコメント

Googleアナリティクスは、「大通り」をざっくり見ることにしか使わない。Googleアナリティクスで細かい経路や属性を見るくらいなら、生のユーザに会ってインタビューした方が遥かに有益だ。私が言う「大通り」とは、主要な流入元 > 入口ページ > 経由ページ > CVの流れである。これ以上に細かくデータを見ても、得られるものはほとんどない。

私は、Googleアナリティクスが日本に上陸した日からずっと使っているが、新機能の9割以上は特に必要ないものだった。ツールの機能があるから使うのではなく、あらかじめ自分が見たいデータを定めてからツールを開くべきである。つまりGoogleアナリティクスの使い方が分からないというのは、見たいデータがないということに等しい。ツール以前に、ユーザとビジネスを理解すべきである。