2020.08.13

研究レポート

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第3弾 GoToキャンペーンは観光業をコロナ前に戻したか?

「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第3弾 GoToキャンペーンは観光業をコロナ前に戻したか?

1. 7月は「GoToTravelキャンペーン」の風が吹いた

WACULテクノロジー&マーケティングラボでは、5月20日に研究レポート『「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第1弾 追い風をうけた業界・向かい風の中の業界、100サイト緊急調査!訪問数が前年比10倍も』を、6月9日には『「AIアナリスト」のデータから見る「コロナショックの影響」第2弾 追い風をうけた業界・向かい風の中の業界 日本はニューノーマルに向かうのか』を発行し、Webサイトのアクセス解析データから、コロナショックの影響を推し量るレポートを相次いで発信してきた。

新型コロナウイルスの新規感染者数は緊急事態宣言発令の期間に減少傾向にあったものの、緊急事態宣言解除後は残念ながら再度増加の傾向を示している。しかし、日本政府は7月10日、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ観光業界の消費を喚起する「Go To Travel キャンペーン」を、7月22日に開始すると発表した。経済と福祉のはざまで、バランスをいかにとるかは非常に難しい問題だ。

当社は「AIアナリスト」を2020年7月31日現在で、日本のWebサイトを中心に3.3万サイト以上に提供し、月間48億セッション程度のデータを保有している。そこから見えるデジタルマーケティングの動向について、レポートしていこうと思う。

2. GoToTravelキャンペーンは、どこまで観光業界の追い風になったのだろうか

Go To キャンペーンは、新型コロナウイルスによって打撃を受けた飲食業や観光業を支援するために政府が実施する施策である。その中で、特に観光業を支援するものが「Go To Travel キャンペーン」で、疑問の声もあがるなか、7月の4連休からすでにスタートしている。

そこで第3回の本レポートでは、観光業界に絞って、Go To Travelキャンペーンによって、大きく落ち込んでいた観光業界のWebサイトで、世の中の興味関心が特に表れる訪問数はどう動いたのかを調査した。当社の提供する「AIアナリスト」では多数の企業のアクセス解析データの分析を行っている。その中で、観光関連サイトをピックアップし、旅行ポータルサイト、旅行代理店、宿泊施設、レジャー施設の4分類にわけて調査を行ったので、その結果を報告したい。

2-1. 観光業界全体は前年同月水準まで回復

本レポートでは、観光業界を4分類して調査したが、まずはその観光業界全体のトレンドを見る。すると、4月の前年同月比-65%を底に回復し、6月には同-29%、そしてGo To Travel キャンペーンの発表された7月には同-4%と、ほぼ前年同月比水準まで回復している。

従来から、8月の夏季休暇期に向かって、サイトの訪問数は伸びる傾向にある。しかし、依然として新型コロナウイルスの感染者数はむしろ増大し、パンデミックの恐怖と隣り合わせではある中で、前年同月比水準を回復したのは、コロナの自粛疲れに加えてGoToキャンペーンの効果があったと考えてよいだろう。

図表1:観光業界の訪問数推移

しかし、以下に述べるが、観光業界を4分類して、それぞれをブレークダウンして見ると、悲喜こもごもといったところがあるのである。

2-2. もっとも強く回復したのはレジャー施設

4分類(ポータル、レジャー、宿泊、代理店)のなかで最も強く回復を見せたのはレジャー施設であった。前年同月比は+40%と大きく回復。Go To Travel キャンペーンとはあまり関係のないレジャー施設がここまで強く回復したのは、これまで閉鎖されるなどしていた施設が、予約をネットで受付して入場者数をコントロールすることで、稼働をはじめたことが大きいだろう。あなたの身の回りでも、予約をとるために何度もサイトを訪問し、躍起になっている人を見かけなかっただろうか。そのためか、7月のCVRは6月のそれより低下していた。また、ゴルフ場などの、コロナの感染リスクが低そうに感じられる施設も訪問数を大きく増やし、前年同月比でプラスに転じるサイトもあった。

図表2:レジャー施設の訪問数推移

2-3. 次に回復したのはポータルサイト

次に回復を見せたのは旅行ポータルサイトであった。もともと情報サイト関連が多いこともあり、こちらは底であった2020年4月も前年同月比-50%と、他に比べると大きな落ち込みはなかったが、6-7月と順調に回復。やはりGo To Travel キャンペーンやコロナ疲れからであろうか、2020年7月には前年同月比は+7%とプラスに転じた。

図表3:旅行ポータルサイトの訪問数推移

2-4. GoToトラベルの本命、宿泊施設は前年同月水準に戻せず

Go To Travel キャンペーンの本丸とも言える宿泊施設はどうだろう。こちらは底であった2020年4-5月は前年同月比-59%と、中程度の落ち込み。そこから、6-7月は大きく回復し-26%となった訪問者数は、以外にも7月もほぼ横ばいの-25%となり、前年比プラスとはいかなかった。

 
図表4:宿泊施設の訪問数推移

2-5. 旅行代理店は苦境が続く

また、旅行代理店は厳しい状況が続いていることが分かった。2020年4月は前年同月比-79%、5月も同-77%とかなり厳しい状況であった。また、6月から大きく回復の傾向はみられるも、7月はGo To Travel キャンペーンがあったにも関わらず同-41%にとどまった。

図表5:旅行代理店の訪問数推移

CV数はどうだろうか。旅行代理店のCVポイントは予約であるため、ほぼ件数と見て問題ない。当社の旅行代理店のCV指数では、4-5月は前年同月比で約-90%で横ばいであった。

実際、観光庁が7月17日に発表した主要旅行会社の5月の旅行取扱高は、JTBが-96.4%、日本旅行が-98.2%と実に厳しい。また、近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT-CTホールディングスの旅行取扱高も4月同-97.4%・5月同-98.8%、エイチ・アイ・エスの国内外の旅行総取扱高の速報値も4月同-98.5%・5月同-98.2%であり、4-5月がほぼ横ばいという傾向は、この当社の指標のトレンドと同じである(金額ベースの実績数値の前年同月比ではもっと悪いが)。

ちなみに、当社指標は6月の前年同月比は-23%、7月は-20%と回復を見せたことを示しているが、それでも前年同月比横ばいの水準までは回復していない。コロナ以前の水準にもどるのはいつになるのだろうか。(必ずしも予約をしてすぐに旅行にいくわけではないため収益への影響は時差があると想定される。また、Go To Travelキャンペーンの東京都除外によってキャンセルが起こったとしても、それはCV数には反映されない)

図表6:旅行代理店のCV数推移

3. 近場のレジャーからの回復。次に回復するのは国内旅行から?

これまで見てきたように、Go To Travel キャンペーンは、回復の追い風となったものの、依然として新型コロナウイルスによって打撃を受けた観光業が元の姿を取り戻すまでには至っていないことが分かった。

一方、少しは出かけてもよいかなと考える人が多いのか、レジャー施設は前年同月水準を取り戻しつつある。これから、近場ならいいだろうと、少しずつ人の往来の距離が長くなるだろうか。そうすると次に回復を見せるのは、電車で行くことができるような国内旅行となるだろうか。

また、今まさに日本が迎える夏季休暇シーズンはどうだろう。動向を注視したい。