2022.02.24

対談

ローソンがアプリ改修の優先度整理を目的に「WACULのデジタル顧客調査」を導入。インストール数が伸長する「ローソンアプリ」の継続利用率アップを目指す 〜ユーザ目線のUI開発の重要性を認識、今後は顧客視点で改修優先度を目利き〜

ローソンがアプリ改修の優先度整理を目的に「WACULのデジタル顧客調査」を導入。インストール数が伸長する「ローソンアプリ」の継続利用率アップを目指す 〜ユーザ目線のUI開発の重要性を認識、今後は顧客視点で改修優先度を目利き〜

対談者の紹介

株式会社ローソン
庄司 考志

2002年株式会社ローソン入社、北海道で店長、店舗指導員を経験後、2010年広告販促部へ異動。セールスプロモーション、オリジナル商品ブランディング、エリアマーケテイング、インバウンドマーケティング、と多岐にわたる分野を経験。2019年よりデジタルマーケティング部でマネジャーとして自社アプリリニューアルに伴うプロモーション全般を指揮。

株式会社ローソン
デジタルマーケティング部 アシスタントマネジャー 吉岡 尚也

2016年に株式会社ローソン入社。システム担当として内製キャンペーンシステムの改善を推進。2017年にWEBプロモーション担当としてWEB・SNSキャンペーンの企画運用に従事し店頭キャンペーンのデジタル化を推進。現在はローソンアプリの企画運用を担当。前職はシステムエンジニア。

株式会社WACUL
取締役 垣内 勇威

東京大学卒。株式会社ビービットから、2013年に株式会社WACUL入社。改善提案から効果検証までマーケターのPDCAをサポートするツール「AIアナリスト」の立ち上げ。2019年に産学連携型の研究所「WACUL Technology & Merketing Lab.」を立ち上げ、所長に就任。現在、 研究所所長および取締役として、インキュベーション事業を牽引。新規事業や新機能の企画・開発および大企業とのPoCなど長期目線での事業開発の責任者を務める。

多岐に亘るマーケティング施策を展開するローソン

垣内 まずは御社のマーケティング施策を伺えますか?

庄司 弊社でのマーケティング施策は、お客様に便利でお得なお買い物をして頂けるよう、アプリやメルマガ、SNS、クーポン、お試し引換券など多岐に亘っています。 中でも、クーポンやポイントが利用できる「ローソンアプリの更なる改善」を目的に、WACULさんに顧客の利用動向調査を依頼しました。

ローソンアプリの抱えていた課題と依頼の背景

垣内 元々、どのような課題を抱えていましたか?

庄司 これまで自社だけで考えてきた施策内容・優先度について、外部の専門家に妥当性を評価してもらいつつ、最適な方法論を学びたかったことがご相談の背景となります。 アプリのインストール数やアクティブユーザ数は計画を上回るペースで伸びていたのですが、継続的な利用率をもっと上げられるのでは?と議論する中で、インストールして3ヶ月後の継続利用率、購入時のポイントカード提示率など、今後「何を指標にどういう優先度で手を打っていくべきなのか」専門家の意見を聞いてみようという話になり、実績が豊富なWACULさんに相談しました。

仮説をもとに改善案を作成

垣内 ローソンさまのマーケティングにおいて、私たちが支援した中のひとつが「アプリにおける課題の調査と、改善案の作成」です。当初私たちが出した仮説は「インストール後の導線やカード提示までの導線が、継続率・カード提示率アップの鍵」でした。 この仮説は「認知的ウォークスルー(※)」と「UI改善のチェックリスト」の2つの方法で導き出しています。この仮説の立て方について特に印象的なことはありますか?

※認知的ウォークスルー

ユーザ行動を多数観察してきた専門家が、自らユーザの立場・状況を想定しながらアプリやWebサイトを利用することで、課題を洗い出す手法。

吉岡 仮説を出す工程で特に印象的だったのが「入力フォーム」の部分です。「入力フォーム1つでも、ここまで定石があるのか」と驚かされました。

垣内 入力フォームはコンバージョンを左右する重要なポイントですからね。弊社でも何度も仮説検証を重ね、チェックリストを作成しています。

垣内 仮説を出した後は顧客調査に進みました。顧客調査をした後に改善案を考えるのではなく、調査前から改善案を考えましたよね。

吉岡 「まず仮説を検討。次に仮説をもとに、改善案を作成。その仮説や改善の方向性が合っているかを調査。」このように仮説と具体的な改善案までセットで作成してから調査しないと「で?次のアクションは?」という調査結果になってしまう。貴社のこの考えには私たちも共感しました。 たしかに、何の考えもなしに「現状アプリの使いにくい点」を調べても「ここが使いにくいとわかった。で、どう改善しよう?」となってしまうな、と。仮に調査データをもとにむりやり改善案を考えても、改善案が正しいかを検証できません。スピード感もおちてしまいます。

実行:顧客調査により、現状アプリの利用状況把握と改善案の検証を実施

垣内 仮説と改善案を用意した次は、いよいよ顧客調査の実行に移ります。今回実施したのは、以下の2つでした。 1)定量アンケートでの現在の利用状況把握 2)定性デプスインタビューでの改善案検証

1)定量アンケートでの現在の利用状況把握

庄司 定量アンケートは、以下の目的で実施しました。

  • 現状のアプリ利用状況を把握する
  • アプリで人気の機能を把握する
  • 定性ユーザ行動観察調査の被験者を収集する

具体的には、主にNPS(※)や利用単価、店舗訪問頻度などのLTV指標をもとに、15種類の他社アプリと比較しながら「アプリの継続利用に貢献している機能」「アプリを使い続ける理由」「適切な通知のタイミング」などを調査する、というものです。

※NPS

顧客ロイヤリティ(サービスへの信頼や愛着)を測る指標。「このサービスを周りの人にどれくらい勧めたいですか?」という質問を0~10の数値で回答してもらい、集計する方法。

垣内 定量アンケートの結果、どのようなことがわかりましたか?

庄司 当たり前ですが、利用されている機能の中では「クーポンやキャンペーン、ポイント」が好評でした。一方、現状それだけでLTVは伸びていません。来店を増やし、LTVを伸ばすなら、スタンプラリーや抽選プレゼントなどの「来店頻度を更に高めるための機能」をもっと利用してもらう必要があると感じています。

2)定性デプスインタビューでの改善案検証

庄司 定量アンケートの次は、現状のボトルネック把握と改善案の検証のために、定性デプスインタビュー(ユーザ行動観察調査)を実施しました。

※ユーザ行動観察調査とは

ユーザの意見ではなく、行動を観察することで、行動理由を事実データで把握できる調査手法です。ユーザ1名を、インタビュアー1名が調査し、別室モニターでクライアント社員に見学いただきます。ユーザに、普段実際に使用するデバイスで、普段どおりサービスを利用してもらいます。経験論的に3~5名の調査で行動パターンは収束していきます。

庄司 「現状のアプリ」と「改善案をもとにUIを修正したアプリ」の2種類を、それぞれ10名の被験者に操作してもらいました。

垣内 定性デプスインタビューの結果はいかがでしたか?

庄司 まず現状アプリについては、ホームページに説明やFAQを用意していたものの、「自分のローソンIDがあるのかわからず、新規登録かログインか選べない」「会員カードを表示できることを知らない」「そもそもアプリにどんな機能があるかわからない。知っていれば使っていた」といったお客さまも一定いらっしゃる状況でした。 私たちとしては「アプリを使えばポイントも貯まるし、クーポンで割引できるのになぜ使われないお客様がいらっしゃるのだろう?」と理由を探していましたが、そもそも「何ができるアプリなのか」すら伝わっていないケースがあることが浮き彫りになりました。 社内にいると、機能を知っている前提で会話が進みますが、ユーザはそんなことは知りません。そのズレが知らず知らずのうちに開発にも影響を与えて「そもそもの機能が直感的に伝わりにくいアプリ」になってしまったのだと思います。

垣内 やはり当初の仮説「初期インストール後の導線&カード提示までの導線」がアプリを利用するネックになっているようですね。導線がわかりにくい結果、機能も見つけられず、理解もされていないと言えます。特に印象に残っている被験者の行動はありますか?

庄司 例えば、データ上は毎日利用しているアクティブなユーザの中でも、実は「奥さんに『お得だから使って』と指示されたから使っていただけ」の人がいたのは印象的でした。毎日利用してくれているにも関わらず、本人の意思はまったくなかったんです。アプリを気に入っているのは本人ではなく奥さん、だなんて考えたこともありませんでした(笑) 「レジ前で会員コードやクーポンを提示する際、店員や後列からの目線が気になる」という人がいたのも印象的でしたね。「モタついて他の人を待たせたくない」「早くしろと思われてそうで気になる」などの理由です。こんな声があることは、実際に利用者に聞いてみないとなかなか気づけないと思います。

垣内 調査をしてみて初めてわかることは多いですよね。改善後のUIについては、いかがでしたか?

庄司 改善後のUIは「画面の指示に従うだけなので、何も考えず全て登録できる」「ホーム画面にバーコードが表示されるので、迷わず会員カードを提示できる」など好評でした。課題だった「初期インストール後の導線&カード提示までの導線」は改善できたといえそうです。他にも機能やUIの改善の余地が見つかったので、今後は今回の調査結果をもとに、アプリを改修していきたいですね。

調査を通じて感じた「ユーザ目線の限界」

垣内 今回の調査を総括して、何か気づきや発見はありましたか?

吉岡 いろいろありますが、やはり大きいのは「自分たちでは伝わりやすいと思っていた機能やUIが、お客様によっては伝わらないケースもある」ことですかね。元々自分たちなりにユーザ目線で考えて作っていたつもりでした。ただ、想像以上に伝わっていないケースもあるな、と。私たち開発者側は機能を知り尽くしているので、どうしてもユーザ目線で考えるのには限界があることを実感させられました。今後は定期的に顧客調査を実施し、客観的なフィードバックをもらうようにしたいです。

庄司 今回のプロジェクトの後、日常的な会議でも「ユーザ視点で~」という言葉がよく出るようになりました。元々持っていたユーザファースト思考が、より社内に浸透したと思います。アプリや機能の開発を続ければ続けるほど、どうしても開発者目線というか、視点が内向きになってしまうものです。今回の調査を通じて、ゼロベースで「使う人から見て、本当に正しいのか?」を見るようになれたことは大きな収穫でした。

垣内 今後もアプリの改善を積み重ねて、お客様にさらに使ってもらえるようになると嬉しいですね。ありがとうございました。