2021.08.10

研究レポート

メール送りすぎ? という遠慮は不要。メールマーケティングの実態調査

調査に至った背景

メール営業・メールマーケティングに確固たる指針を

当レポートは「クリックしてもらえる可能性が高いメールの件名と本文とは?メールのベストプラクティス研究(Vol.1)」に続き、株式会社ラクスとの共同研究でお届けする。前回のレポートでは、「メールの開封率やクリック率を上げるためには “件名” の運用に注力すべき」という提言を発表した。

第二弾となる今回は、「結局どれくらいの頻度で配信すればよいのか?」「たくさん配信すると嫌がられて配信解除されるのではないか?」といった、メール担当者からよく挙がってくる疑問を解消すべく調査を実行。約2.5万件のメール配信データと100人超のアンケート結果から、メール営業・メールマーケティングを進める上で指針となる提言を導き出した。

調査内容

用語一覧

当レポートでは以下の定義のもと各用語を使用する。

調査Ⅰ.約2.5万件のメール配信データを分析

株式会社ラクスが保有するメール配信データより、配信解除率や反応率が高いメールの特徴を分析した。データの詳細は以下のとおりである。

調査Ⅱ.メールに関するアンケート調査を実施

また、営業・マーケティング活動の一環としてメールを一斉配信している方を中心に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼した。

また、調査結果内に以下2名の有識者コメントも合わせて記載した。

  • 株式会社ラクス 配配メール事業部 事業部長 安藤健作氏
  • 株式会社WACUL 取締役 垣内勇威

調査結果

Ⅰ-1.各指標の目安

318社分のメール配信データにおける、各指標の平均値・中央値・最大値・最小値は以下のとおりである。

最大値と最小値が大きく開いており、かつ分布にも偏りがあるため、今回は平均値ではなく中央値を基準にデータを分析する。

各指標のおおまかな目安は「開封率20%」「クリック率1%」「反応率7%」「配信解除率0.1%」「配信頻度は週に2回」と言えるだろう。

Ⅰ-2.配信解除率

配信解除率が高い/低い企業の特徴を探るべく、配信解除率別に各指標の中央値を一覧化。また、横軸に配信解除率、縦軸に各指標をとった散布図も合わせて確認した。

「配信頻度を高めると配信解除率が上がるのではないか」という不安の声をよく聞くが、実際のデータは逆を示した。配信頻度が高いからといって配信解除率が上がることはなく、むしろ低い。

1日1回以上という高頻度の配信でありながら配信解除率が低い企業に個別に許諾を得て配信内容を確認したところ、配信内容と読者のニーズが一致していると予想される企業が多かった。具体的には、不動産や人材紹介といった読者が常に最新情報が求められる内容や、ニッチな嗜好品を提供するサービスによる商品案内などだ。しかし中には、営業担当者ごとにリストを分けてメールを配信し、配信解除率を下げることに成功している企業も見受けられた。

一方、配信解除率が1%前後と非常に高い企業も個別に確認したところ、「展示会参加者」といった関係性が希薄なリストに配信していることがわかった。配信解除率を高める要因は、配信頻度よりも配信リストの質にあると言えるだろう。

また、上記の企業における配信解除率は繰り返しメールを配信するなかで徐々に下がっていく傾向があった。つまり、配信すればするほど興味のない人がリストから抜けていっているのだ。これは配信頻度が高い企業の配信解除率が低い理由にも通ずるだろう。

Ⅰ-3.配信頻度

配信頻度を上げると配信解除率は低い数値で落ちつくことがわかったが、他の指標も加味した場合の適切な配信頻度はいったいどれくらいだろうか。配信頻度別にも各指標の中央値を一覧化し、全体の中央値よりも悪いスコアを青に着色した。

週4回以上送付すると開封率やクリック率が下がる傾向にある。どのスコアもほぼ水準を落とすことがない理想の配信頻度は週2〜3回だ。

Ⅰ-4.反応率(クリック/開封)

続いて、企業単位ではなく配信単位のデータを用いて、反応率(クリック/開封)が高い/低いメールの特徴を分析した。

反応率が高いメールは配信対象が顕著に少ない。配信リストが絞られている、と言えるだろう。

また、テキスト量や画像の有無、すなわち1通あたりのメール作成工数が反応率に影響するかどうかも確認した。

どれだけ長く文章を書いても画像を入れても、反応率はほぼ変わらないことが明らかとなった。むしろテキスト量は500文字以下のほうが反応率が高い。

以上の結果を踏まえると、反応率を高めるためには配信リストを適切に分け、コンパクトな文面で速やかにクリックを促すことが重要だ。

ラクス安藤氏のコメント

メールマーケティングの目的は、メールというコミュニケーションツールを使用して読者の態度変容を起こすことにある。

配信解除数が増えることは潜在顧客を失ってしまうのと同義であり、態度変容を起こすことができなくなるではないかと危惧する声も耳にする。しかし、配信リストに含まれる読者全員を潜在顧客とみなすのはいささか短絡的であることを理解しなければならない。

マンションディベロッパーを例に出すと、メルマガ登録後に他社でマンションを購入した人はいまだに潜在顧客と言えるだろうか。一般的に考えれば、この読者が数年以内に2回目の購入をすることは(投資用でもない限り)ありえないだろう。また、なにかのインセンティブと引き換えにメールアドレスを提供したような場合も、潜在顧客というにはあまりにも購買意欲が低い読者と言えるだろう。

にもかかわらず、多くの企業が配信解除によって配信リストの数が減少することをおそれて配信頻度を抑制している。配信頻度の抑制は、読者の離反を防げているのではなく、配信リストの正常な代謝が行われていないだけである、ということが今回の調査で裏付けられたのではないだろうか。

なお、週4回以上の配信は開封率やクリック率が減少する傾向にあるようだが、リストの数によっては配信回数が多い方が各種KPIの減少値より最終的な成果が大きくなる可能性があるので、高頻度の配信が一概に悪いとは言えないだろう。

続いて反応率だが、高い数値を出しているケースの場合、配信対象が絞られているということは、配信側がしっかりと読者をセグメントし、読者層に合わせたメールコンテンツが届けられている証拠である。

「多くの人に読んでもらった方が成果につながるのではないだろうか」と、購買意欲の異なる読者を一括りにして一斉配信をするのではなく、読者を適切にセグメンテーションし、読者の興味とコンテンツを一致させることが重要なのだ。

また、テキスト量と画像の有無が反応率にどう影響を与えるかという調査だが、弊社の調査では読者がコンテンツを閲覧するのに使用する時間は7秒以内が大半であることが判明している。

メルマガの書き手側としては、文章をしっかりと読ませたうえで読み手の感情を動かし行動につなげたいという気持ちもあるだろうが、実際には、読者は一瞬の判断で行動に移すかどうかを決めているのである。

1つのメルマガに複数のコンテンツを配置するよりも、1コンテンツ1メールにして配信頻度を高める方がより成果に繋がるだろう。

WACUL垣内のコメント

まずご自身のメール受信ボックスを開いていただきたい。企業のメルマガを「よく来る」「たまに来る」「全然来ない」に分類したうえで、それぞれの配信頻度を確認してみるとよい。

個人差はあるが、定性インタビューをすると「よく来る」は毎日2回以上、「たまに来る」は週3〜7回、「全然来ない」は週2回以下となる。まして月1回だと記憶に残らない。

企業の担当者は、丹精込めたメルマガならば、当然ユーザの目に触れていると錯覚する。しかし現実には、あなたのメルマガは受信ボックスにおけるワンオブゼムに過ぎない。よほど目立ちでもしない限りユーザの目には触れない。

ユーザが嫌がるかもしれないから配信頻度を増やせないという発想は、満員電車で切りすぎた前髪を気にするくらい自分本位な考えである。

受信ボックスでは「件名」と「配信頻度」でしか差がつかない。件名の洗練もよいが、誰でも今すぐできる「配信頻度UP」から着手すべきだ。

ここからは、アンケート調査結果からメール営業・メールマーケティングの実態にさらに迫っていく。

Ⅱ-1.受信者>配信解除のタイミング

どんなときにメールを配信解除するか、176人に聞いた。

Q1.自分の受信ボックスに届く一斉メール(メールマガジン)のうち、配信を解除するのはどんなときですか?(複数回答可)

「メール内容に興味が持てないとき」が53.7%と最も多くの回答を集めた。次に「高頻度でメールが届いたとき」が43.5%で続いているが、調査Ⅰのとおり、必要な情報や好きなサービスの情報であれば高頻度であっても配信解除されない。「“興味が持てない” “セールス要素が強い” メールが高頻度で届いたとき」に解除されるのだ。

また、「配信許諾をした覚えのない送信元から届いたとき」も34.5%の人が回答している。現に「展示会参加者」などの関係性が希薄な配信リストの場合は配信解除率が高い。きちんと許諾をとること、さらには許諾した記憶があるうちにメールを届け始めることで、配信解除率は改善できるだろう。

Ⅱ-2.配信者>配信頻度

以降の質問はメールを一斉配信する立場にある124名に回答してもらった。回答者の属性は以下のとおりである。

Q2.1人の読者に対してメールを配信する頻度はどれくらいですか?近いものを選んでください。

Q3.上記の頻度で配信している理由(上記の頻度で配信せざるをえない理由)を教えてください。

Q3の回答を大きく「コンテンツ人手不足」「配信解除を懸念」「その他」の3つに分けて、Q2の配信頻度と照らし合わせたところ以下の結果となった。

「2週間に1回」「1ヶ月に1回」という配信頻度であっても「配信量が多くて配信解除されるのではないか」と懸念する人たちが存在した。

「1週間に1回未満の企業のほうが配信解除率は高い」という調査Ⅰの結果より、配信頻度が低ければ購読解除されないというのは単なる思い込みであることを理解すべきである。

Q4.読者から「メールの配信頻度が多い」とクレームを受けたことはありますか?

8割以上の人が「配信頻度が高いとクレームを受けた経験はない」と回答した。

Q5. 読者から「メールの配信頻度が多い」とクレームを受けたときの配信頻度はどれくらいでしたか?近いものを選んでください。

また、「1週間に1回」の配信頻度でもクレームを受けた経験がある、という回答が見受けられた。配信頻度を高いと感じるかどうかは個々人の感覚に依存する部分が大きいと言えるだろう。

以上より、「配信解除されるかもしれないから」という個人的な感覚を理由に週に1回もメールを送っていないのであれば、当レポートの結果を踏まえて配信頻度を週2〜3回へ見直すべきである。

Ⅱ-3.配信者>配信リスト(配信パターン)

Q6.一斉配信メールの種類(パターン)はいくつありますか?

多くの人が複数のパターンに分けて配信をしているが、1つしかパターンがない、すなわち配信リストを分けていない人も13.7%存在した。

Q7.複数の種類に分けてメールを配信することで成果につながったエピソードを教えてください。

自由記述内容(一部)

  • 相手の業務内容に合わせた自社サービスの導入事例を送ることで契約につながった
  • 取引の有無でリストを分け、取引ありにはサービス活用ノウハウを中心に訴求したところ、開封・クリックなど各数値が向上した など

成果につながったものとしては、「業種/職種別」や「検討/購買状況別」でリストを分けた、というエピソードが多かった。配信リストを分けて相手にマッチするコンテンツを届けることは反応率(クリック/開封)の向上に寄与するため、ぜひ取り組んでほしい。

Ⅱ-4.配信者>作成工数

Q8.1通の作成〜配信にかける平均時間を教えてください。※作成〜配信に複数人関わる場合は、合算した時間を教えてください。

テキスト量や画像の有無が反応率(クリック/開封)に影響しないことを踏まえると、1通のメール作成に労力をかけるのは無駄だが、まだまだ多くの人が数時間かけていることがわかる。

特にテンプレ化していないメールにおいては、1通の作成に1〜3時間かけている人が約3割、半日以上かけている人が約2割存在している。これだけ時間をかけているのだから、配信頻度が上がらない理由に「人手不足」が上がるのも当然だ。すべてテンプレ化して1時間以内におさめてしまえば、配信頻度の向上はすぐに実現できるだろう。

Ⅱ-5.配信者>効果検証

Q9.一斉配信メールの効果検証をおこなう際にチェックしているデータを教えてください。(複数回答可)

「開封率」「クリック率」は約8割の人がチェックしている一方、「コンバージョン率」は44.0%、「売上額」は4.8%に留まった。

Q10.データを踏まえて改善を加えている箇所と、その改善頻度を教えてください。

Q11.実際に効果が上がった改善内容を教えてください。

自由記述内容(一部)

  • 記事を届けるメールの場合「新着記事」という表現を用いるか、記事の見どころを表記するかでいえば、後者のほうが開封された
  • CTAをファーストビュー内に入れるようにした
  • 1対1の接点ある人には、営業担当の名前でメールを送る など

改善対象は「件名」と「本文」が多い。反応率(クリック/開封)を上げ、より多くの読者を自社サイト等へ誘導するために重要な「配信リスト」「配信頻度」は、件名や本文ほど改善されていないことが明らかとなった。「一度も改善したことがない」と回答した人もそれぞれ約16%存在している。

メール配信ツール上で目に飛び込んでくる数字をただ改善していくだけではなく、コンバージョン率や売上までしっかりと追いかけて効果検証しよう。そうすれば自ずと配信リストや配信頻度の改善に目が向くはずだ。

ラクス安藤氏のコメント

配信解除のタイミングで一番多いのが「メールの内容に興味が持てないとき」であるが、これは分解すると「自分に関係のない内容のメールが来ている(=適切なセグメントがされていない)」と「興味をそそられない(=コンテンツの問題)」の2つの理由があるだろう。

後者のコンテンツの問題で良くあるのが、配信側が自社の商品を売りたいがために割引キャンペーンやフリートライアルの案内ばかり送るケースである。

既に購入の一歩手前まで近づいている読者ならば、それらの案内に背中を押されるケースもあるだろうが、大半の読者はそれより手前にいることを忘れてはならない。

読者が知りたいのは、導入にあたっての心配事の部分である。例えば、実際に導入するまでの大まかな流れであったり、導入後のフォロー体制であったり、営業が商談の場で聞かれることそのものである。

コンテンツ探しに苦労しているメルマガ担当者は、まずは営業から話を聞いてみるとよいだろう。

なお、理由の3つ目にある「配信許諾した覚えのない送信元から届いたとき」なのだが、関係性が希薄なケースのほかに、配信元が差出人名に読者に馴染みがない名称を設定しているケースを多々見かける。

そもそも差出人名を設定しておらず、メールアドレスそのままの状態は論外だが、例えば「○○通信」のようなオリジナルの名称、「セールスチーム」のような企業が特定できない名称、サービス名でなく企業名を設定している場合などである。

このようなケースでは読者が「配信許諾をした覚えがない」と言われてしまうので、差出人名には読者が認知している名称を使うようにすべきである。

配信頻度について、高頻度での配信は購読解除が増加するのではないかという懸念については前段のレポートにて否定されたが、コンテンツや人手不足についても、「反応率が高いメールは500文字以下」という結果でだいぶ解決するのではないだろうか。

なお、今回のアンケートでは効果検証をしていないと回答した人はわずか10%ほどであったが、弊社サービスの利用状況を調査したところ、効果検証をしていないユーザはその何倍もいたことが判明している。

メルマガをマーケティングの一手段としている以上、効果検証は必ず実施すべきであるが、どのように効果検証をすべきか分からないというユーザも相当数存在するものと思われる。

まずは、自社がメルマガを配信する目的を明確にし、その目的から逆算した各種KPI(クリック数・開封数・配信頻度など)を設定することから始めてみるべきだろう。

WACUL垣内のコメント

メールは「差出人名」「件名」「大まかなリスト分類」「配信頻度」「本文ファーストビューのCTA」が主な成果ドライバーだ。

逆に「本文テキスト要素」「本文画像要素」「細かなリスト分類」などは労多くして見返りの少ない、企業の「こだわり」に過ぎない。

ご自身の受信ボックスを開いていただき、開封して中身を読んだメルマガを振り返ってみてほしい。中身を読んだ記憶のあるメルマガなどほとんど存在しないだろう。

大半のメルマガは読まれない。タイミングよく、的確なお知らせがきたら、脊髄反射的に開封し、一番上のリンクを押すだけである。

しかしユーザのタイミングにあわせてメールを送ることは難しい。どれだけAIが進歩しても、顧客の全生活データを取得できなければ、ピンポイントにタイミングを当てることはできない。

そうなれば、常に通知し続ける「配信頻度UP」こそが正解であり、確実に興味のあるお知らせであることを伝える「件名」が重要なのは明白だ。

本調査の提言

配信解除率を下げたいならリストかコンテンツを変える

多くの人が「配信頻度が高いと配信解除率が上がる」という固定観念を持っている。しかし実際のデータは否だ。自分にとって必要な情報や、ファンであるサービスの情報であれば、1日1回以上の高頻度であっても配信解除率は0.05%を切る。

配信解除の原因はシンプルに、自社へまったく興味がない人にメールを送っているか、あるいは読者にとって興味がある情報を送っていないかのどちらかだ。よって配信解除率を下げるためには、配信リストかコンテンツを変えるしかない。

1通作り込むよりも、1回でも多く配信すべき

どれだけ長文を書いても画像を差し込んでも、反応率(クリック/開封)は変わらない。唯一反応率を高める方法は、「業種別」や「検討状況別」など配信リストを適切に分けることだ。

つまり、1通作り込むよりも、配信リストを分けて1回多く配信した方が確実に多くのクリック獲得、その先のコンバージョン獲得へとつながると言える。1通の作成時間はテンプレ化して1時間以内におさめ、空いた時間でもう1配信分のメールを用意すべきである。

週4回以上メールを配信するとたしかに開封率やクリック率はやや下がる傾向があるが、週2〜3回程度であればどの指標も水準が下がることはない。配信頻度が週1回以下の企業であれば、まず週2〜3回の配信を目指すといいだろう。

開封率やクリック率ではなく、コンバージョンや売上で評価すべき

メール営業・メールマーケティングの現場においては、開封率やクリック率は8割強の人が効果検証しているものの、コンバージョンまで追いかけている人は半数を切っている。

売上につなげたいのなら当然そこまで効果検証すべきであり、成果に影響する変数はなにかをきちんと見極める必要がある。改善対象は決して件名や本文のデザインだけに留まらないはずだ。当レポートを参考に、配信頻度や配信リストからテコ入れをしてほしい。

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