2022.02.28

研究レポート

比較表に惑わされないツールの選び方(マーケティングオートメーション編)

比較表に惑わされないツールの選び方(マーケティングオートメーション編)

調査のサマリ

自社へ導入するマーケティングオートメーションツール(以下MA)を選ぶ際、機能一覧で比較してもほとんど差はない。唯一異なるのはそのプロダクトが理想とする世界観(思想)だ。よって「これから自社が実現したいこと」と最も近い思想を持ったMAを選ぶべきである。

主要MAの思想

※レポート後半には「参考:思想で選ぶおすすめMA診断」あり

調査に至った背景

それぞれのMAの違い、あなたは説明できますか?

「Pardot、HubSpot、Marketo Engage、Eloqua。それぞれの違いを説明できますか?」

と聞かれ、明快な回答ができるマーケターは決して多くないだろう。大前提、日々アップデートされるクラウドサービスを機能で比較するのはほぼ無意味であり、たいした差も出ない。この状況で自社に導入する、あるいは顧客におすすめするMAを選定するのは非常に困難である。

そこで今回、BtoB企業はなにを基準にMAを選ぶべきか、それぞれのMAの違いはどこにあるのかを探るべく、主要なMAベンダー4社に直接取材をおこなった。これからMAを選ぶのであれば、機能比較表やカオスマップではなく、ぜひ当レポートを参考にしてほしい。

調査内容

主要MAベンダー4社を直接取材

Oracle Eloqua Marketing Automation(略称Eloqua)」「Adobe Marketo Engage(略称Marketo Engage)」「HubSpot」「Pardot(提供Salesforce)」の4社に協力いただき、プロダクトの思想や、その思想を実現するために提供している機能・サポート体制などを取材した。

また、これらすべてのMAの正規パートナーであり、豊富な知見をお持ちのシンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山一郎 氏にも取材へ協力いただいた。

前提:BtoB企業におけるMAの役割

本題に入る前に、BtoB企業におけるMAの役割を整理しよう。MAは1990年代後半、BtoBマーケティング・デマンドジェネレーションブームが巻き起こるアメリカで誕生した。

BtoB商材(あるいは自動車や住宅など営業担当を介して購入する高単価BtoC商材)はお客様にとってつねに欲しいものではないため、商談を生み出すためにはお客様が欲しいと思ったタイミングで一番に声をかけることが最重要だ。その声かけを実現するためには、つねに見込客に接触し続け、ニーズが発生したタイミングを検知する必要がある。

見込客が少なければ営業担当が定期的に電話をかけ続ければいいだけの話だが、営業担当の人数に対し見込客の数が増えればそうもいかない。よってBtoB企業におけるMAの役割とは、この一連のプロセスを自動化し効率よくニーズを検知することである。

※Web上で購買活動が完結するBtoC商材の場合はMAに求める役割が異なるため、今回のレポートはBtoB商材(あるいは高単価BtoC商材)に絞って話を進める。

MAの個性は機能ではなく思想に出る

代表的なMAであれば上記の役割は当然果たせる。機能だけで見れば、正直な話どれを選んでもいいのだ。

しかし、MAベンダー4社へ直接取材をするなかで、確固たる違いを1つだけ見つけた。それは「プロダクトを通じてお客様になにを達成してもらいたいか」である。(当レポートではこれを「思想」と呼ぶ。)

こうした思想は「ダッシュボードのUI」「今後アップデートされる機能」「CS(カスタマーサクセス)の方針」などに表出する。よってMA選びにおいては「これから自社が実現したいこと」と最もマッチする思想を持ったツールを導入すべきである。

主要MAの特徴

ここから各社について詳細に紹介する。

Eloqua(Oracle Eloqua Marketing Automation)

グローバルエンタープライズ企業でも安心して利用可能。大量のデータを統合してDXを推進するならEloqua

成り立ち

Eloquaは2000年にリリースされた世界最初のMAである。リリース当初、VC(ベンチャーキャピタル)から注目を浴びて一気に資金を集めたが、そのプレッシャーから高単価路線へ舵を切ることになり、エンタープライズ向けのプロダクトへと成長した背景をもつ。CRM製品を強化していたOracleから2012年に買収され、現在に至る。

思想

Eloquaは「データを起点としたグロースマーケティング」を理想として掲げている。Oracleの強力な基盤を活かしながら、グローバルに展開する企業のDXやマーケティング活動を支援する。どんなに大量のデータであっても決して遅れることなくリアルタイムに処理することへのこだわりが強い。

機能やサポートの特徴

エンタープライズ企業でMAを導入する際の一番の弊害は複数部署・複数製品で活用する上で発生するセキュリティ管理やデータ移行だが、エンタープライズ特化のEloquaであればなんの問題もなく進められる。どんなデータであってもカスタムオブジェクトで統合できるのも特徴だ。

こんな企業様におすすめ

大量のデータを有するグローバルエンタープライズ企業はもちろんのこと、経営者が本気でデータを統合しDXを推進していきたい場合にもおすすめである。

Marketo Engage(Adobe Marketo Engage)

マーケティング部門で長期にわたりOne to Oneで見込/既存顧客をフォロー、商談創出とLTV向上を目指すならMarketo Engage

成り立ち

Eloquaがエンタープライズ市場に乗り出した結果、プレイヤーがいなくなったミッドマーケットを狙って生まれたMAがMarketo Engageである。かつて存在していた日本法人「株式会社マルケト」時代からの露出により、国内における認知度は高い。2019年、BtoCからBtoB領域へ拡大をはかっていたAdobeに買収され現在に至る。

思想

Marketo EngageはAdobeのミッション「世界を動かすデジタル体験を」のもと、企業とマーケターへ価値を提供することを目指す。企業に対しては「ROIの最大化」「経営戦略を高度化」、マーケターに対しては「企業内で主役に」「マーケティング業務の効率の最大化」を掲げる。特にMAはマーケターのためのプロダクトであるという考えが根強く、マーケター自身が自走して高度な施策を回し成功を勝ち取ることを目指している。

機能やサポートの特徴

One to Oneのコミュニケーションを実現するためのカスタマイズ性の高さはMarketo Engage ならではの特徴だ。たとえば、リード獲得・育成・休眠・商談・失注……といった購買フェーズを自由に設定できるほか、スコアリングも非常に細かく定義できる。検討度合いが進んだり戻ったりするリアルなユーザー行動も検知可能だ。他システムとの連携も柔軟に実現できる。

こんな企業様におすすめ

マーケティング部門で長期的に顧客をフォローして売上創出を目指す企業向け。製品思想に基づくハイレベルな機能をマーケターが本気で活用すれば成果が見込める。

HubSpot

コンテンツの力でリードを生み出し、見込客の購買も後押しする。インバウンドマーケティングを実現するならHubSpot

成り立ち

2007年、HubSpotはMarketoとほぼ同じタイミングで生まれている。リリース当初はスタートアップ企業や小規模事業者にターゲットを絞り、「リードがなくても、マーケターがいなくても、誰でも使いこなせるMA」であることを訴求した。現在はHubSpot自体が5,000人を超えるグローバル企業へ成長していることもあり、エンタープライズ向けの機能も充実し始めている。

思想

HubSpotが掲げる理想の世界は、インバウンドマーケティングの体現だ。すなわち、購買者が欲しい情報が適切なタイミング・手段で届くことを目指す。顧客の営業・マーケティング支援ではなく、あくまでその先にいるエンドクライアントの購買体験を心地よくすることを重視している。

機能やサポートの特徴

最大の特徴はLPやブログなどコンテンツ作成機能(CMS)が充実していること。コンテンツの力でリードを生み出し、見込客の購買活動も後押しする。また、MAと同じUIのCRMを提供することで、マーケティング/営業/CSの活動すべてをHubSpotに集約できることも推している。他のMAより比較的リーズナブルなのもポイントだ。

こんな企業様におすすめ

リードやデータがない状態で導入しても価値を発揮できるよう設計された唯一のMAであり、ゼロからマーケティング体制を作っていくフェーズにおすすめできる。

Pardot

Salesforceのデータを統合して最適なターゲティングで施策を実行。マーケティング・営業部門の連携改善による売上創出を目指すならPardot

成り立ち

PardotはもともとHubSpotとMarketoの間の市場を狙って生まれたMAである。メール配信ツールのExactTargetに買収され、さらにその後Salesforceに買収された。買収後はSalesforceが提供するCRM/SFA「Sales Cloud」とともに進化を続けており、まさに一心同体のプロダクトと言える。

思想

Pardotが目指す理想の世界はSales Cloudと同じく、お客様のビジネス成長に直接的に貢献すること。これを実現するためには、デジタル上の行動データだけでなく商談履歴や取引実績といったCRM上のデータを統合すべきである、という考えが根強い。つまりPardotはSales Cloudとセットであることが大前提である。

機能やサポートの特徴

顧客データの統合を重視しているため、MAとCRM/SFAをまたいだ機械学習(AI)の導入が進んでいる。Sales Cloud上にシームレスにPardotの情報が表示されるなど、部門連携を意識したUIも特徴だ。また、隔月300名が集まるというユーザー会やコミュニティでは、業種別のベストプラクティスが脈々と蓄積されている。

こんな企業様におすすめ

営業部門との連携を前提とした導入でなければPardotの真価は発揮されないだろう。すでにSales Cloudを導入している場合、相性がいいのは明らかである。

本調査の提言

MAは機能ではなく思想で選ぶ

BtoB企業におけるMAの役割はつねに見込客に接触し続け、ニーズが発生したタイミングを検知することであり、機能的にはどのMAであっても実現可能である。MA間で唯一異なるのはそのプロダクトが理想とする世界観(思想)であり、「これから自社が実現したいこと」と最も近い思想を持ったMAを選ぶべきである。

参考:思想で選ぶおすすめMA診断

MAを導入する際はぜひ当レポートの内容をもとに思想で選定してもらいたいが、参考までに診断チャートも作成した。MAを通じて自社が実現したいことがまだハッキリと定まっていない企業にとっても、この診断がMA導入のゴールを考えるきっかけとなれば幸いである。

シンフォニーマーケティング 代表取締役 庭山氏のコメント

元来、私はツールの比較表というものは好きではない。ツールベンダーが作る比較表は余りに我田引水のものが多い上に、クラウドアプリケーションの時代では機能やインターフェースはどんどん進化するので、そもそも意味が無いと考えていて、WACUL垣内氏に相談された時もそれを率直にお伝えした。

しかし、垣内氏は表面的な機能よりむしろ「思想」に興味を持っていた。これは極めて稀なことだ。私はその製品をサポートする時に基本的に創業者に会い、本社を訪問し、雰囲気を感じ取ることにしている。Eloquaのトロント本社、Marketoのサンマテオ本社、Silverpopのアトランタ本社、HubSpotのボストン本社など全てそうしてきた。それはシステムにはそれぞれ魂が宿っており、それはその出自、つまりどこで生まれ、誰がどんな想いを込めて創ったのか、を知らなければ理解することが出来ないと思ったからだ。

そこに興味を持ってくれた初めての人が垣内氏である。だからこの比較表は、私が嫌いではない唯一の比較表だ。

WACUL 取締役 垣内のコメント

今回4社のツールベンダーにヒアリングし、思想レベルでは全く違うツールだということに驚いた。しかもヒアリングするたびに「本当に良い思想のツールだなあ」と感動すらした。似たような機能を備えており「マーケティングオートメーション」と括られるツールでも、これだけ思想が違えば機能開発やサポート方針は大きく異なるだろう。

メール配信して、シグナル検知して、営業に連携するだけなら、どのツールでもできる。しかし結局のところツールを使いこなせるかどうかは、担当者の腹決めの問題でもある。ツールの思想に心酔して絶対使ってやるという気持ちさえあれば、多少使いづらいところがあっても目をつぶれるだろう。全てが完璧なツールは存在しないし、SaaSゆえに日々進化し続けるのだから、現時点での機能を細かく比較する意味はない。ましてベンダーの提出してくる比較表など、恣意的すぎて何の役にも立たない。

ツールを選ぶときは、最低限の機能と価格感で候補を洗い出し、あとは思想に共感できるかどうかで決意することをおすすめする。

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