2020.04.09

研究レポート

地銀64行 Webサイトランキング – カードローン編 –

調査のサマリ

  • CVR※1が高いカードローンのLP※2は、「スマホに最適化」「表示が速い」「CV※3の障壁が低い」「ファーストビュー※4の訴求が端的」「CVボタン※5が視線の通り道にある」「フォーム※6のステップ数が少ない」の6つの要件を満たしていた
  • 全国64行の地銀で、カードローンのページを評価した結果、「百五銀行」のLPがCVRが高くなる要件を最も満たしており、全国64行の比較で首位となった。多くの地銀のLPはCVRを高める要件を満たしておらず、改善の余地がある

調査の狙い

 

デジタルマーケティングには定石がある

勝負ごとに定石があるように、デジタルマーケティングにも押さえるべき「型=勝ちパターン」が存在する。しかし、型を知らない多くの企業はゼロから担当者の好みでWebサイトを作り、「成果が上がらない」と頭を悩ませている。

これは、いわゆる「車輪の再発明※7」をしているようなもので、大変に非効率である。既に確立された勝ちパターンを踏襲すれば、「成果が上がるWebサイト」を効率的に構築できるようになる。自社でいちからすでに世の中にある“車輪”を作り上げず、すでに存在する勝ちパターンを活かせば、各行のマーケティング効率は高まるはずだ。

地方銀行は「型」を適用しやすい

調査対象としては、一般社団法人全国地方銀行協会の会員である地方銀行64行のカードローンのトップページまたはLP(ランディングページ)を選定した。
地銀は、銀行という「ビジネスモデル」では他行と似たサービスを提供する一方で「商圏」で住み分けしているため、データに裏打ちされた他行で成果が出ている「型」、つまり勝ちパターンを自行に適用すれば、高い確率で他行と同様に成果を上げやすいのだ。

とはいえ、銀行のビジネス領域(金融商品)は預金・投資信託・株など多岐にわたり、全領域を網羅的に比較するのは困難である。そのため今回は、金融商品の中でも特にデジタル活用が進み、ネットとの親和性が高いカードローンの領域に絞ることにした。

調査の手法

 

調査の手順は以下の通りである。

  1. 全国の消費者金融・都市銀行・地方銀行のカードローンLP(またはトップページ)を「AIアナリスト」で分析し、勝ちパターンを抽出
  2. 1に基づいて評価項目・採点基準を作成
  3. 2に基づいて地銀64行のカードローンのトップページを採点・ランキング化

「AIアナリスト」とは、株式会社WACULが提供する、AIがWebサイトの診断から改善提案まで自動で行うサイト運営支援ツールである。まずは、AIアナリストに蓄積された国内3万サイト分の分析データの中から、カードローンのWebサイトを10件抽出し、勝ちパターンを洗い出した。

勝ちパターン抽出の前提条件

手順1の段階で、前提条件を揃えなければ高純度のデータを抽出できない。カードローンLPの勝ちパターンを抽出するにあたり、以下の4点を前提条件とした。

1.LPへの流入元 自然検索・有料検索に限定
2.使用デバイス スマートフォンに限定
3.金融機関の種別 消費者金融系と銀行系に分けたうえで分析
4.着地先のページ トップページ・ランディングページのいずれも可とする
5.調査期間 2019年5月1日~5月31日

LPへの流入元は、CVRが高く、自然検索および有料検索(リスティング広告)で流入する顕在層に限定。ディスプレイ広告などで流入する潜在層はCVRが低いため、分析から除外した。パソコン経由・モバイル端末経由のCVRを比較すると大きな差がみられたため、流入の大半を占めるスマホに限定した。

また、訴求力の高い文言を多用する消費者金融系のカードローンLPは、銀行系よりCVRが高い傾向がある。そのため、消費者金融系同士・銀行系同士に分けて比較したうえで優良LPの特徴をピックアップした。

なお、カードローンのWebサイトのCV、つまりゴール地点は「審査の申込み」に統一している。稀に「資料請求」が可能なWebサイトもあるが、「審査の申込み」に対して「資料請求」はユーザーの興味・関心の度合いが薄いため、今回の調査では除外した。

評価・採点方法

抽出された勝ちパターンは6項目であった(次章で詳述)。配点は1項目20点、120点満点とした。採点にあたり、地銀カードローンの評価ページは目視でチェックした。具体的には、各行カードローンのトップページと評価項目を照らし合わせ、画面上の特徴を確認。表示速度の測定にはGoogleの「ページスピードインサイト(PageSpeed-Insights)」を用いた。

※広告やLPが表示されるかどうかは居住地に依存するため、調査ではトップページを評価した

調査の結果

 

抽出された勝ちパターンは6つ

既存のカードローンLPを分析した結果、CVRが高いLPには6つの特徴があることがわかった。

  1. スマートフォン最適化を実施済み
  2. 表示速度が速い
  3. CVポイントの障壁が低い
  4. ファーストビュー訴求が端的
  5. ファーストビューにCVボタンがある
  6. フォームのステップ数が少ない

つまり、これらが「型」として適用すべき勝ちパターンである。

「スマートフォン最適化」を実施済み

言うまでもないが、Webサイトはユーザビリティに配慮されている必要がある。カードローンLPはスマホ経由の流入が大多数を占めるため、スマートフォンに最適化された画面が表示されることは重要な要素である。実際、CVRが高いカードローンLPはスマホ最適化に対応している。

表示速度が速い

Webサイトの玄関であるLPの表示速度は、直帰率に大きく影響する。LPがスピーディに表示されないと、スムーズに情報を得たい訪問者は不満を覚えて離脱しやすからだ。また、ページの読み込み速度が遅いWebサイトはGoogleの検索結果の順位づけでも不利になることがわかっている。

CVRが高いカードローンLPは、いずれも表示速度が速い。シンプルなページ構成や画像の軽量化など、訪問者を待たせない工夫が随所に施されている。

CVポイントの障壁が低い

カードローンLPに流入すると、以下の流れで契約に至る。Webサイトでは「申込み」がCVポイントとなる(図1)。

カードローン申込のCVフロー

一般的なカードローンLPのCVポイントには「新規お申込み」などストレートな文言が多いが、まだ検討中で迷っている人にとってはややハードルが高い。その点、成果を上げているカードローンLPでは、ユーザーの心理的な障壁を下げる工夫がみられた。例えば、「簡単仮審査」「カンタン入力でお申込み」など、気軽にクリックしやすい文言が使用されている。

また、「申込み」とは別に、「3秒診断」「お借入れ診断」など借入れ可能かどうかを診断する動線があるLPも散見された(図2)。カードローンLPの訪問者は多重債務者も多く、「そもそも、自分は借入れができるだろうか」と不安に感じている。借入れ可否を瞬時にチェックできれば、申込みに対する心理的なハードルを下げることが可能だ。

診断コンテンツのCVフロー

実際に診断をすると、「借入れ可能」または「(借り入れできるか分からないが)可能性あり」と結果が表示され、そのまま「審査申込み」に誘導する動線が多くみられる。診断ページで心理的な障壁が下げられているため、そのままCVポイントに遷移しやすくなるのだ。

注)CVポイントの障壁を下げると潜在層や多重債務者など幅広い層が流入するため、審査通過率は低下しやすい。しかし、CVするユーザーが多ければCVの実数自体は増えるため、流入の質低下を考慮したうえで障壁低下策を推奨する。

ファーストビュー(FV)訴求が端的

ファーストビューとは、Webページに流入したときにスクロールなしで表示される画面全体を指す。質の高いLPは、ファーストビューの訴求が端的でわかりやすい。

慣習的に、LPは縦長に作成してカードローンのメリットを次から次へと羅列することが多い。しかし、さまざまなカードローンLPを分析すると、LPの画面の長さとCVRには相関性がないことが判明している。スクロールやマウスの動きを観測・可視化するヒートマップ分析をかけても、ユーザーはほぼファーストビューしか見ていない。

つまり、LPの良し悪しはファーストビューで決まると言っても過言ではないのだ。

スマホユーザーはファーストビューを一瞬しか見ないので、訴求は1点に絞られているのが理想的である。実際、CVRが高いカードローンLPはファーストビュー訴求を1〜2つに絞っている。

ファーストビューにCVボタンがある

CVボタンの文言だけではなく、設置場所もCVRに大きな影響を与える。先述の通り、ユーザーはLPのファーストビュー以外はほとんど見ないので、ファーストビューでCVまで完結させることが重要だ。そのため、CVボタンはファーストビューで目立つように設置されていることが最低限必要である。

最も望ましい設置場所は、ファーストビューのメインビジュアルの直下である。メインビジュアルのテキストと意味的につながるようにCVボタンが配置されていると、さらにCVを促進しやすい。

フォームのステップ数が少ない

ユーザーが申込みフォームに遷移しても、フォーム自体に問題があれば申込み完了前に離脱してしまう。フォームの評価ポイントは多岐にわたるが、最も大きな要素は「フォームのステップ数」である。

CVRが低いフォームの場合、規約などの同意画面や入力画面、確認画面で6〜7ページ遷移させるケースが多い。ページ遷移が多いほど離脱率が高まるため、フォームのステップ数は3つ以下に減らすのがベストだ。

地銀カードローンの採点結果

カードローンLPのCVRを高める6つの要素に基づき、地銀カードローンのトップページを採点し、ランキング化したのが以下の表である。

地銀カードローンのランディングページのランキング

64行のランキングトップは、120点満点中114点を獲得した百五銀行(三重県)となった。平均点は63.2点、中央値は63.5点といずれも63点台。全体的に何かしらの項目でLP改善の余地があることがわかる。

項目別に見ると、スマホ最適化はほとんどの地銀が対応できていた。しかし、それ以外の5項目については点数に大きなバラツキがあり、特にCVポイントの障壁の高さやフォームステップ数に大きな課題を抱えている地銀が多いようだ。

全体のトップは百五銀行(三重県)。大きな穴もなくすべての点で高い水準にある。ファーストビューにおいてCVポイントも明確であり、クイック診断コンテンツや「かんたん」訴求によりCVRを高める工夫がされている。また、Webサイトの表示速度も早かった。フォームステップ数も3と、鹿児島銀行の2に次ぐ少なさであった。

百五銀行カードローンのLPの評価

2位は秋田銀行。こちらもファーストビューでの訴求およびCVポイントの明確化がなされている。また、「3秒で診断」など、ユーザーにとってハードルを下げる工夫もなされている。表示速度も早かった。ただ、フォームステップ数が8と多く、百五銀行に比べてこの点で大きく劣後した。

秋田銀行カードローンのLPの評価

調査の提言

 

本調査から、多くの地銀カードローンLPは勝ちパターンから外れており、改善すべきポイントが浮き彫りになった。このままでは、せっかく流入した見込み客をCVへ導くのは難しいだろう。課題を伸びしろと捉え、できることから速やかに着手するのが得策だ。

分析・採点結果を踏まえ、今すぐに着手すべきは以下の3点である。

  1. ファーストビューの見直し
  2. 表示の高速化
  3. 申込みフォームのシンプル化

ファーストビューは訴求を絞り、障壁の低いCVボタンを目立つように配置する。その際、「申込み」ボタンと「診断」ボタンを2つ並べるのが理想的である。表示速度は、画像・ファイルの軽量化やコードの圧縮化など適切に対処すればすぐに改善できる。フォームの改修は手間がかかるが、優先度が高いのでできる限り対応したいところである。

Webサイトの入り口がユーザビリティに充分に配慮されていないと、流入した見込み客の多くを取りこぼすことになる。CVRを高めるには、まずは勝ちパターンに則してLP・トップページを見直すべきだろう。

今回は地銀カードローンのLPを取り上げたが、抽出した6つの型はあらゆる業種・商材のWebサイト制作に当てはまる定石とも言える。自社サイト強化にぜひ参考にしていただきたい。

また、WACULでは蓄積されたノウハウを元に、それぞれの業界にあったデジタルマーケティングの幅広いソリューションを提供しています。お気軽にこちらまでお問い合わせください。

WACUL 取締役CIO 垣内のコメント

銀行のWebサイトは、システムやコンプライアンスの制約が大きく、僅かな修正でも困難を極めます。しかし少しでも実行に繋げていただきたいという想いから、今回は比較的手を入れやすいカードローンの広告用LPについて、研究レポートを作成しました。

カードローンのWebサイトは、勝ちパターンが10年以上前からほとんど変わっていません。それにもかかわらず、未だにこれだけ点数に差がつくことに正直驚きました。

長らくこの領域のコンサルティングに携わっていますが、定石通りに改善して成果の出たWebサイトが、2年後にはすっかり改悪しているということが少なくありません。企業内に正しい知見が蓄積されず「車輪の再発明」が繰り返されているのです。根本的にこの問題を解決するには、各社が人事制度を見直すか、我々のような企業が定石を広く公開していくしかないと考えています。

今後も我々が保有する「定石」を使って、業界別のランキングを公開していく予定です。

WACUL 取締役CIO 垣内勇威(@yuikakiuchi

1984年生まれ。東京大学を卒業後、株式会社ビービットに入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに多数携わる。2013年に株式会社WACULに入社、取締役に就任。WACULでは、AIを活用したWebサイト分析サービス「AIアナリスト」の立ち上げに関わり、現在は「AIアナリスト」を基盤とした、新たな価値創造・事業創出をすべく、新規事業インキュベーションの責任者を担当。

※用語の解説

CVR
Conversion Rateの略。顧客転換率。ページを訪れたユーザーのうち、購入や申し込みなどにどれくらい至ったかという比率。
LP
ランディングページの略。訪問者のアクションを誘導することに特化した縦長のレイアウトのページのこと
CV
Conversionの略。Webサイトにおけるユーザーに期待するゴールのこと。カードローンのサイトであれば、一般的にはカードローンの申込みがあたる
ファーストビュー
Webサイトを訪れた時に最初に見える全体像のこと。PCでもスマホでも、画面をスクロールすることなく見える部分をいう
CVボタン
Webサイト上で、CVをするにあたってクリックするボタン。一般的には「お申込み」などと記載されたボタンのこと
フォーム
Webサイトでの申込時に住所・氏名や連絡先などを記入する枠のこと
車輪の再発明
既にある技術や知見を利用せず、同様のものを再び作ることを指すことわざ
地方銀行
地方都市に本店がある地域密着型の銀行。本レポートでは一般社団法人全国地方銀行協会の会員である第一地銀64行を対象としている