2021.05.18

研究レポート

予算の少ないWebサイト制作は失敗する?Webサイト制作の実態調査

予算の少ないWebサイト制作は失敗する?Webサイト制作の実態調査

調査に至った背景

Webサイト制作で成果が出ない要因はどこにあるのか?

Webサイトの新規立ち上げ・リニューアルは、そのほとんどがコンバージョン数の増加や企業/サービスイメージの向上などを目的に実施される。しかし過去の研究レポート「WebサイトリニューアルとCV・CVR向上の相関関係についての調査」でも提言したとおり、残念ながらWebサイトのリニューアルはたびたび失敗に終わってしまう。数百万円の制作費用をかけても、コンバージョンは増えるどころか減ってしまうケースが多々起きるのだ。

それらの失敗は制作会社側にすべての原因があるのではなく、「自分の好みでデザインのよしあしを判断してしまう」といった発注者側のふるまいに起因することも多い。そこで今回は、アンケート調査によってWebサイト制作で成果を出している“発注者”の共通点を探った。

調査内容

Webサイト制作に携わる方へアンケート調査を実施

直近3年以内にWebサイト制作を発注した、あるいは制作者として引き受けた方を対象に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼。細かな調査条件は以下のとおりである。

Webサイト制作に携わる方へアンケート調査を実施

また、当研究所所長であり株式会社WACUL 取締役CIO 垣内勇威によるコメントをアンケート結果と合わせて記載した。

調査結果

アンケート回答者の属性

今回のアンケート回答者の属性は以下のとおりである。

アンケート回答者の属性

目的と効果

Q1. 【発注側へ質問】Webサイト新規立ち上げ・リニューアルプロジェクト開始前、期待していた効果を教えてください。(複数選択可)

Q1. 【発注側へ質問】Webサイト新規立ち上げ・リニューアルプロジェクト開始前、期待していた効果を教えてください。(複数選択可)

Webサイト新規立ち上げ・リニューアルプロジェクトにおいて発注者が期待している効果は「コンバージョン数の向上」が66%と最も多く、続いて「サイト訪問者(UU)の向上」「企業/サービスイメージの向上」が挙がった。

Q2. 【発注側へ質問】Webサイト公開後、得られた効果をどのように確認しましたか?(複数選択可)

Q2. 【発注側へ質問】Webサイト公開後、得られた効果をどのように確認しましたか?(複数選択可)

Googleアナリティクスなどの分析ツールによる効果検証は発注者の約8割が実施していたが、アンケート調査による効果検証は1割未満に留まった。

Q3. 【発注側へ質問】Webサイト公開後、期待していた効果は得られましたか?(※Q1で「期待する」と回答した項目に対する結果)

Q3. 【発注側へ質問】Webサイト公開後、期待していた効果は得られましたか?(※Q1で「期待する」と回答した項目に対する結果)

PVやUUなど多くの項目において「期待した効果を得られた」という回答が約7割を占めたが、「検索順位の向上」「企業/サービスイメージの向上」については半数が効果を得られていない、あるいは効果を確認できていないことがわかった。

「検索順位の向上」は「期待したが変わらなかった」という回答が42%と他よりも多く、Webサイトの新規立ち上げ・リニューアルでは効果が見込めない確率が比較的高いと言える。

「企業/サービスイメージの向上」は唯一「期待したが確認していない/わからない」が半数を超えており、そもそも効果検証がなされていないと言える。これはQ2でアンケート調査が活用されていないことを見ても明らかだ。

Q4.【制作側へ質問】Webサイトを制作する際、コンバージョン率を高めるために最も注力するポイントを教えてください。(自由記述)

Q4.【制作側へ質問】Webサイトを制作する際、コンバージョン率を高めるために最も注力するポイントを教えてください。(自由記述)

自由記述内容(一部)

  • CTAの設置場所、回遊導線、フォーム設計
  • コンテンツの内容を顧客視点でわかりやすくする
  • タッチポイントの設計とそれに紐づくシナリオ など

Q5. 【制作側へ質問】Webサイトを制作する際、検索流入を増やすために最も注力するポイントを教えてください。(自由記述)

Q5. 【制作側へ質問】Webサイトを制作する際、検索流入を増やすために最も注力するポイントを教えてください。(自由記述)

自由記述内容(一部)

  • 重要キーワードを含むコンテンツページの作成
  • コンテンツSEOを運用可能な土台として設計
  • キーワード洗い出しとメタタグ設定の徹底 など

制作側へコンバージョン率向上、検索流入増加のために注力するポイントを具体的に聞いたところ、さまざまな回答が得られた。検索流入を増やすためには狙っているキーワードに対して適切なコンテンツを作るしかないが、コンテンツに言及していない回答が48%存在した。Q3にて検索順位の効果が出づらい傾向にあったのは、制作側が適切な施策を提案できていないことが原因となっている可能性もあるだろう。

また、明確に「コンバージョン率向上や検索流入増加に注力した経験がない」と回答した人も1割強見受けられた。

アンケート結果に対する垣内コメント

Webサイトリニューアルでディレクトリ構造やデザインを綺麗にしたところで、ユーザーは喜ばないし気づきすらしない。当然Googleも評価してくれない。Googleのアルゴリズムは日々進化しているため、サイト構造が少し汚なくても問題なくクロールしてくれるのだ。中長期で検索順位を上げたいなら、コンテンツを磨くほかない。ECなら魅力的な商品数を増やす、メディアならユーザの役に立つ記事を増やすだけだ。「デザイン」だけいじるリニューアルで、SEO効果を期待するほうがおかしい。

また、企業/サービスのイメージ向上のためにWebサイトをリニューアルしている人が50%もいることに驚く。さらにそのほとんどが効果検証すらしていない。Webサイトのデザインが少し綺麗になったくらいで、その会社を好きになることがあるだろうか?少なくとも私個人にそんな経験はないし、数千人のユーザー行動観察調査をおこなった経験からも一度も見たことがない。大半のユーザーはデザインの変更に気づきすらしないのだ。「イメージ向上」という隠れ蓑を言い訳に必要のないデザイン洗練がまかり通ってしまう企業体質は、ビジネス成果向上の妨げでしかない。

予算

あとに続く発注側のアンケート結果は、Q3より「コンバージョン数の向上を期待して実際に効果を得られた=成果を出した発注者」「コンバージョン数の向上を期待したが逆効果だった/変わらなかった=成果を出せなかった発注者」をそれぞれ抽出したうえで、両者の回答に違いがあるのかを分析した。

Q6.【発注側へ質問】コーポレートサイト(WordPressなどCMS導入した10〜20ページのサイト)の制作にどこまで予算をかけられますか?上限を教えてください。

Q6.【発注側へ質問】コーポレートサイト(WordPressなどCMS導入した10〜20ページのサイト)の制作にどこまで予算をかけられますか?上限を教えてください。

Q7.【発注側へ質問】ランディングページ(1ページ)の制作にどこまで予算をかけられますか?上限を教えてください。

Q7.【発注側へ質問】ランディングページ(1ページ)の制作にどこまで予算をかけられますか?上限を教えてください。

Q6.Q7の結果と成果の有無でクロス集計し、成果を出した/出せなかった割合を予算別に算出したところ以下の結果となった。

コーポレートサイト
ランディングページ

予算と成果にはきれいな相関があった。成果が出た割合を「成功する確率」として捉えると、コーポレートサイトの場合、予算が300万円以上の場合は69%の確率で成功するが、100万円未満の場合は30%まで下がる。また、少額だと失敗確率が46%と非常に高い。

ランディングページも同様で、予算が50万円以上の場合は60%の確率で成功するが、25万円未満の場合は37%に留まった。つまり予算が少ない場合、予算が潤沢な場合と比較すると成功確率が20〜40%も下がる。

アンケート結果に対する垣内コメント

Webサイト制作事業は労働集約ビジネスのため「売上=工数」である。つまり予算が低ければ稼働を抑えざるを得ない。加えて優秀なデザイナー・ディレクターは引っ張りだことなるため、予算が低ければアサインできない。予算を抑えようとすればするほど、人気のない業者が短時間でやっつけるプロジェクトにしかならないのだ。他にも、コンサルティング・広告運用・コンテンツ作成といった労働集約ビジネスは値切った分だけ品質が落ちる。逆に言えば、値切ってよいのはソフトウェアなど人的支援が少ないプロダクトだけだ。

Web制作会社の選び方

Q8.【発注側へ質問】Web制作会社はどのように探しましたか?(複数選択可)

Q8.【発注側へ質問】Web制作会社はどのように探しましたか?(複数選択可)

Web制作会社の探し方は全体の62%が「既存の取り引き先へ声をかけた」と回答しており圧倒的に多い。また、一定の回答があった項目に対してQ6.Q7同様に成功確率を算出した。

成功確率を算出

「ネットでWeb制作会社を探して問い合わせた」、つまり新規パートナーの開拓をおこなっている場合は成功確率が54%と他よりも高い。また、「知り合いに紹介してもらった」場合は失敗確率が30%を超えており、やや注意が必要と言える。

Q9.【発注側へ質問】発注先となるWeb制作会社を選んだ決め手はなんでしたか?(複数選択可)

Q9.【発注側へ質問】発注先となるWeb制作会社を選んだ決め手はなんでしたか?(複数選択可)

発注先の決め手も全体の57%が「元々取り引きがあったから」という理由を挙げており、Webサイト制作はなかなか新規の取り引きが起きにくい商材であることがますます明らかになった。また、こちらも一定の回答があった項目に対して成功確率を出したところ以下の結果となった。

成功確率を算出

「担当営業や担当ディレクターの人柄がよかったから」「マーケティングの知見が深かったから」は成功確率が60%を超えているものの、同時に失敗確率も25%前後とやや高めである。また、「制作実績が豊富だったから」は失敗確率が30%と最も高い。制作実績が豊富であることは、成果を出した実績が豊富であることとイコールではない、と言えるだろう。

Q10.【制作側へ質問】どのようなルートで案件の相談がきますか?(複数選択可)

Q10.【制作側へ質問】どのようなルートで案件の相談がきますか?(複数選択可)

制作会社のお問い合わせ獲得ルートも「既存顧客経由」が圧倒的に多く、8割を超えている。「知人からの紹介」「代理店からの紹介」など紹介経由が多いのも特徴の一つだ。

Q11. 【発注側へ質問】Web制作会社を選定する際にコンペは開きましたか?

Q11. 【発注側へ質問】Web制作会社を選定する際にコンペは開きましたか?

Q12. 【発注側へ質問】コンペを開いた/開かなかった理由を教えてください。(自由記述)

コンペを開いた理由(一部)

  • 導線設計・SEO対策のご提案内容を比較検討したかったため
  • デザイン選定のため など

コンペを開かなかった理由(一部)

  • 元々の取引先を信用していたので
  • 実績や担当者が既知だから
  • 急にサイトが必要になり2週間で全てを作る必要があったため など

主に「既存取引先で信頼感があったから」という理由でコンペは開催しなかった発注者が多数派だった。

コンペ開催

成果別に分けて見たところ、コンペの開催有無で成功確率は見事に変わらなかった。コンペの開催と成果に関連性はないと言えるだろう。

Q13. 【制作側へ質問】Web制作会社選定のためのコンペに呼ばれた場合、参加しますか?

Q13. 【制作側へ質問】Web制作会社選定のためのコンペに呼ばれた場合、参加しますか?

制作側のコンペ参加状況を見てみると、一切参加しないと答えた人が22%存在した。内訳を見るとほとんどが個人事業主か10名未満の制作会社であり、リソースの問題でコンペに参加していないと予想される。

デザインのフィードバック

Q14. 【発注側へ質問】制作期間中、デザインに対してどのようなフィードバックをおこないましたか?(複数選択可)

Q14. 【発注側へ質問】制作期間中、デザインに対してどのようなフィードバックをおこないましたか?(複数選択可)

8割以上がデザインに対してフィードバックしたと回答しており、なかでも「自社のイメージに合わないと感じた部分を指摘した」が全体の57%と最も多かった。項目別の成功確率は以下のとおりだ。

項目別の成功確率

最も回答数の多かった「自社のイメージに合わないと感じた部分の指摘」は成功確率が40%と低い結果となった。成功確率が高く失敗確率も低いものには「サイト訪問者に対して適切ではないと感じた部分を指摘した」「ほぼ指摘しなかった」が挙げられる。

Q15. 【制作側へ質問】発注者であるお客様からもらうデザインのフィードバックについて、困ったことがあるものをすべて教えてください。(複数選択可)

Q15. 【制作側へ質問】発注者であるお客様からもらうデザインのフィードバックについて、困ったことがあるものをすべて教えてください。(複数選択可)

制作側は9割が発注者からのデザインのフィードバックに困った経験があると回答した。ほとんどの選択肢が50%を超えており、フィードバックの反映に苦しむ様子がうかがえる。

アンケート結果に対する垣内コメント

デザインのフィードバックは、具体的に「このサイトのこの部分のようにしたい」と伝えるようにしている。これを例えば「高級感のあるデザインにしたい」と言葉だけで伝えてしまうと、「黄金に輝くデザイン」「白と紺ベースの上品なデザイン」「明朝体を使った和風デザイン」のどれかすら伝わらない。結果的に何度も手戻りが発生し、必要のないバリエーションが増え、発注側も制作側も消耗していく。

また、細かいビジュアルデザインにこだわったところで成果の差異はほとんど生じない。素人が余計な口出しをすべきではないのだ。唯一気をつけるべきは、ビジュアルデザインのこだわりによるCV導線の阻害である。例えば、わかりやすくクリックできるリンクは青字下線や立体感のあるボタンだが、これらを用いつつデザインを洗練させるのは難しい。実力の低いデザイナーは安易に黒字テキストリンク、しかも英語表記を使いたがるが、これではリンクであることに気づけずCV誘導率や回遊率が落ちてしまう。ユーザー視点で利便性が損なわれていないかだけは、デザイナーに迎合せずにフィードバックすべきである。

本調査の提言

Webサイトリニューアルに検索順位向上を期待してはならない

Webサイトの新規立ち上げ・リニューアルにおいて「検索順位の向上」はしばしば期待されるが、「期待したものの順位は変化しなかった」という回答が42%を占めた。SEOを強化するためにはコンテンツを拡充するしかなく、部分的・表層的な変化だけで順位向上を期待してはならない。また、デザインを刷新することで「企業/サービスイメージの向上」を期待するケースも多いが、アンケートを用いて効果検証している企業は1割もおらず、評価方法が非常に曖昧だ。数十万〜数百万円の投資をするのだから、目的に応じて当然効果検証すべきである。

予算の少ないWebサイト制作は成功確率が下がる

Webサイト制作の予算と成功確率には相関があり、予算が少ない場合は成功確率が20〜40%下がることが明らかになった。成功確率50%以上を目指すのであれば、コーポレートサイトは300万円以上、ランディングページは50万円以上の予算を確保しよう。

考えなしに仲のいい制作会社へ発注してはならない

Web制作会社は既存取引先へ集約されがちであり、発注の決め手は「元々取り引きがあったから」が57%を占めた。ここには、考えなしに仲のいい会社へ依頼してしまっているケースも多々含まれるだろう。現に既存取引先に声をかける場合の成功確率は30%だが、新規パートナーの開拓をおこなっている場合は成功確率が54%まで上がる。発注側は、期待する効果を出すのにふさわしいパートナーをしっかり調査検討すべきである。また、コンペの開催有無によって成果が変わるかどうかを確認したところ、一切影響がなかった。つまり労力をかけてコンペを実施する必要性はないと言える。

デザインフィードバックやユーザー視点で具体的におこなうべき

成果を出したいのなら発注者はユーザー視点でデザインにフィードバックすべきであり、これは調査結果からも明らかだ。しかし全体で見ると「自社のイメージに合わないと感じた部分を指摘した」という回答が57%と最も多かった。こうした感覚的なフィードバックに振り回され、制作者側の9割はデザインの修正に困っている。気持ちよくプロジェクトを進めて成果を出すために、発注者は今一度デザインフィードバックの基準を改めるべきである。

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