2019.02.27

研究レポート

スマホ時代のEC市場の将来とECの検索窓から見たベストなUIの提言

アパレルECにおけるトップページの検索窓とCVRとの関係性についての調査

調査に至る前提

ECサイトはスマホ経由EC市場の急成長への対策を迫られている

近年スマホの普及に伴い、スマホ経由EC市場が急成長しており、ECサイトはスマホユーザーへの対策を迫られている。

日本国内において、スマホ経由EC市場が市場全体に占める比率は増加傾向にある。2017年度にはスマホ経由EC市場が全体の35%であるという報告もあり、今後も引き続き伸びていく市場といえる(図表1)。

グローバルにおいても、スマホ経由EC市場の比率は2021年には全体の72.9%まで高まると試算されている(図表2)。国内でもスマホ経由EC市場が同じペースで成長すると仮定すると、2021年にはスマホ経由EC市場の比率が50%まで高まると考えられる。

このことから国内外ともに、EC市場におけるスマホユーザーの比率は一層高まっていくと考えられる。こうした傾向を踏まえ、ECサイトにおけるスマホユーザーへの対策の必要性は高い。

図表1:スマートフォン経由ECの市場とEC市場に占めるスマートフォン比率直近3年間の推移
図表2:モバイル経由EC市場におけるモバイル比率の予測

成長するスマホ経由EC市場において、購買チャネルはWebサイトとアプリの二種類が存在する。当社は依然としてWebサイトの重要性は高く、特に中小企業においてWebサイトの重要性は非常に高いと考えている。理由は二つある。

一つ目はWebサイトの利用率は依然として高いからである。スマホユーザーの購買チャネルの73.1%がブラウザ(Webサイト)であることを示す、2018年のアンケート結果がある(図表3)。先のデータと合わせると、2021年にはスマホかつWebサイト経由の市場がEC全体の36.5%を占める可能性があり、スマホ向けWebサイトを整備することは非常に重要であると考えられる。

二つ目はアプリにおける競争は激しく、中小企業にとって勝ち残るのは難しいと考えられるからである。その理由は、アプリで成功するには、アプリの開発・運用にかけられる資金・人員をどれだけ有しているかが重要であり、多くの場合この点において大手のほうが有利だからである。これは、定着率の低さと開発・運用費の高さが原因である。ユーザーの行動パターンとして、ダウンロード後3日以内に8割のアプリを全く使わなくなるというデータがあるほど、アプリの定着率は一般的に低い。そんな中で、定着率を高めて成功するには、より使いやすいアプリ開発や、コンテンツ拡充などが課題となる。しかし、ECアプリは開発費だけでも200-600万円かかるといわれており、これにコンテンツ作成などの日々の運用費が恒常的にコストとして計上されることを考えると、Webマーケティングにかけられる人員・資金の多い大手サイトが有利になるといえる。

そうした実情を踏まえると、アプリが台頭する中でも、依然として多くの会社にとってスマホ向けWebサイトにおける対策は重要であるといえる。

図表3:スマートフォンで商品を購入する経路

サイト横断的にデータを分析することはWebサイトの改善に有用である

Webサイトの改善について客観的なデータ分析を行えている会社はあまり多くなく、経験則に基づいて「なんとなく」決められていることが多い。特にUI(ユーザーインターフェース)の改善まで分析出来ている会社は非常に少ない。また、自社サイトについてデータ分析をしている会社でも自社サイトのデータしか分析できないため、本当にベストかどうかというところまで分析するのは難しい。

本調査は、株式会社WACULの提供する、AIがWebサイトの診断から改善提案まで自動で行う「AIアナリスト」上に登録されている26,000件のサイトの中から、業界を絞ってサイトデータを抽出し、分析を行った。これにより、同一業界内の複数サイトについて横断的に分析を行うことが可能となった。つまり、1サイトだけではなく、その競合サイトも分析できるようになり、特性の似たユーザーについて、Webサイト上行動データをより多く分析することが可能となった。その結果、UIという定量分析が難しい課題について、自社サイトを分析するだけではわからなかったような、一つの有力な仮説を導き出すことができたと考えている。

調査内容

スマホサイトにおける検索窓の位置、機能について2つの調査を実施

スマホ向けECを調査したところ、今回調査の対象としたアパレルEC26サイトの中でも、検索窓の位置、機能はサイトによって異なり、まだ王道といえる勝ちパターンはわかっていないのではないかという仮説を持った。そこでスマホ向けサイトにおける検索窓の勝ちパターンを考えるうえで以下の2つのことについて調査を行うことにした。

  1. サイト内検索を行ったユーザーと行わなかったユーザーとでは、どちらのCVRが高いのか。
  2. 1.の結果を踏まえ、CVRを上げるためには、どのような検索窓の位置・機能が理想的なのか。

調査結果1

サイト内検索をしたユーザーは、サイト内検索をしなかったユーザーに比べ、CVRが高い

一般にサイト内検索を行うユーザーは購入意欲が高いといわれている。本調査でも、調査対象26サイトすべてにおいて、検索経由ユーザーのCVRの方が非経由ユーザーのCVRよりも高いことを示す結果が得られた(図表4)。

その理由としては、検索ニーズを持ったユーザーは購入したい特定の商品イメージを持っており、検索をすることで目当ての商品にたどり着く可能性が高まるからであると考えられる。

そして、同じ業界のサイトを訪れるユーザーの特性に大きな差はないと仮定すると、サイト内検索率に影響を与える大きな要因は、検索窓の位置、機能だと考えられる。そして検索窓を改善し、サイト内検索率を高めることでサイトのCVRを高めることできるといえる。

図表4:検索経由CVRと非経由CVRの関係性

調査結果2

サイト内検索が行われやすいサイトは検索窓が“ファーストビュー内”に、“検索ボックスとして置かれている”。ただし、“スクロール追従機能アイコンで検索率は高まらない”

サイト内検索率の高いサイトはどういうものだろうか。調査を行った結果、サイト内検索率は以下3つの要因から影響を受けていることが明らかになった。

  1. 検索窓がファーストビュー内に存在するか
  2. 検索窓が検索ボックスの形で存在するか
  3. 検索ボックスに加え、スクロール追従機能を持ったアイコンが存在するか

これらに要因について影響度が大きい順にスクリーニングをかけ、図表5のような形で再度調査を行った。

図表5:調査の流れ

上記の調査の結果、「サイト内検索率の高いサイトは、検索窓をファーストビュー内に(1)、検索ボックスとして置いている(2)。また、それに加えてスクロール追従機能を持ったアイコンを置いてもサイト内検索率はあまり高まらない(3)」ことが明らかになった。

1.検索窓をファーストビュー内に置いた場合、置かなかった場合に比べ、サイト内検索率が2.6倍になる。

一般にファーストビューには重要度の高いものを置くべきだとされる。それはファーストビュー内のコンテンツほど見つけやすいため、クリックされる確率が高く、反対にファーストビュー外にあるコンテンツは見つけづらいため、クリックされる確率が低くなるからである。

本調査では、サイト内検索率についても、この通説が当てはまることが明らかになった。つまり、検索窓がファーストビュー外に存在するとサイト内検索率が低くなることが明らかになった。(図表6)。サイト内検索を行えなかった結果、目当ての商品までたどり着けずに離脱してしまっていると考えられる。原因として以下のような場合が考えられる。トップページにランディングしたものの検索窓がどこにあるか気づかず、検索窓がないと思ってしまった場合や、スクロール最中に検索窓を通過したものの見落としてしまった場合などである。その結果、検索窓がファーストビュー内にないサイトではサイト内検索率が低くなる。

図表6:サイト内検索率と検索窓位置の関係性

2.検索窓を検索ボックスの形で置いた場合、置かなかった場合に比べ、サイト内検索率が1.2倍になる

検索ボックスの有無については、検索ボックスの代わりにアイコンを置くことで、省スペース化した方がいいと言われたりする。スマホ画面の小ささを考えると、検索窓をアイコンに格納し、省スペース化することで他のコンテンツを表示する方がよいというのも一つの考え方として納得感がある。

しかし、今回の調査では、この考えに疑問を投げかける結果が得られた。検索ボックスが無いサイトでは、あるサイトに比べ、サイト内検索率は低く、サイト内検索ニーズを持ったユーザーを取り逃している可能性があることが明らかになった。(図表7)

検索ボックスを置かないとサイト内検索率が低くなる理由はファーストビューの時と同じように、サイト内検索を行えなかった結果、目当ての商品までたどり着けずに離脱してしまっているからだと考えられる。その原因は以下のような場合が考えられる。1つ目はアイコンの存在にそもそも気づいていない場合である。通常検索アイコンは画面上部などにあるため、ユーザーは見落としてしまい、サイト内検索できない。2つ目はアイコンの機能を知らない場合である。この場合、アイコンの存在には気づいていても、アイコンをタップすることで検索画面が表示されるという機能についてそもそも知らなかったり、直感的にわからなかったりして検索には至らない。その結果検索ボックスがないサイトではサイト内検索率が低くなる。

図表7:サイト内検索率と検索ボックスの有無の関係性

3.検索ボックスに加えて、スクロール追従機能を持ったアイコンを置いても、サイト内検索率が1.02倍にしかならない。

一般にスクロール追従機能を持ったアイコンがある方がいいとされる。なぜなら、思い立った段階でワンクリック検索できるため、検索の利便性は高まると考えられるからだ。

本調査では、この傾向は正しいが検索ボックスがファーストビューにある場合、スクロール追従機能を持ったアイコンの有無によるサイト内検索率の差分は0.2%と、それほど大きくないことがわかった(図表8)。恐らく、ファーストビューで検索ボックスの印象が残っていれば、スクロール中に検索ニーズの芽生えたユーザーは、多少煩わしくてもファーストビューまで戻って検索しているのではないだろうか。

それらを踏まえ、スクロール追従機能を持ったアイコンを置くべきかという疑問がわく。今回の調査結果に限って言えば、スクロール追従アイコンを置く代わりに、魅力的な商品広告などを置いた方がいいのではないかと思われる。なぜならサイト内検索率0.2%の改善は、CVRに換算すると0.005%の改善ほどであり、そこまでインパクトは大きくないとみられるからである。そのため、スクロール追従機能を持ったアイコンをなくし、一覧性を高める施策の方が有効な施策である可能性が高いといえる。

図表8:サイト内検索率と追従アイコンの有無の関係性

本調査から得られた知見

  • スマホ経由EC市場は現在伸びており、2021年にはEC全体の50%に及ぶと見られている。
  • スマホ経由EC市場において、依然としてWebサイトは73.1%を占める重要なチャネルである。
  • Webサイトの改善には集客施策に加え、UI観点での改善も重要である。
  • UI観点からCVRを高めるには、サイト内検索ニーズを持ったユーザーを取り逃さないことが重要である。
  • サイト内検索ニーズを持ったユーザーを取り逃さないためには見やすく、利用しやすいサイト内検索窓を設計する必要がある。
  • 見やすく、利用しやすいと考えられるサイト内検索窓は、ファーストビュー内に、検索ボックスとして存在する。
  • 上記に加え、スクロール追従機能を持ったアイコンを置いてもサイト内検索率はあまり高まらないため、アイコンを置かずに一覧性を高める方が効果的である。