2021.12.09

研究レポート

【Yappli×WACUL共同研究】アプリで売上を伸ばすベストプラクティスを発表〜ECアプリ32種、81万人の行動、約3,500のプッシュ通知データを分析〜

【Yappli×WACUL共同研究】アプリで売上を伸ばすベストプラクティスを発表〜ECアプリ32種、81万人の行動、約3,500のプッシュ通知データを分析〜

本調査のサマリ

ECアプリにおけるプッシュ通知が効果を発揮するシーン

  • プッシュ通知1回あたりの購入率(購入/配信通数)は平均値0.28%、中央値0.10%。1,000通配信すれば1〜3人に購入される。
  • とくに「クーポン」「プレゼント」など金銭メリットを提示するプッシュ通知の購入率は0.13%と高い。「商品紹介」であれば0.09%、「お役立ち情報」は0.08%とわずかに下がる。
  • プッシュ通知経由で利益を伸ばすためにおすすめの配信頻度は週3回。手元にある「商品紹介」「お役立ち情報」ページを活用して頻度を保ちつつ、うち1〜2回ほど金銭メリット訴求を差し込もう。
  • その他購入率UPに有効なのは「誕生月セグメント→誕生日クーポン配布」「8時・9時・17時に配信」である。

プッシュ通知を活用しても購入回数が伸びにくいシーン

  • インストール直後1ヶ月の購入が0回の場合:初月で1回も購入しなかったユーザーがその後なにかを購入する確率はわずか6.8%。1回でも購入していれば追加購入率は35.6%、2回以上で50%超まで引き上がる。
  • 取り扱っている商品が実店舗でも購入できる場合:アプリで商品をチェックして実店舗で購入するというユーザー行動が起きるため、アプリ単体で成果を見ると見誤る可能性が高い。

調査に至った背景

ブラックボックスだったアプリ上のユーザー行動を明らかに

“Webサイトで売上を伸ばす方法” はすでに世の中にノウハウが溢れており、多くの企業がGoogleアナリティクスなどを活用しながらCVR改善に取り組んでいる。一方、 “アプリで売上を伸ばす方法” はデータの蓄積が不十分なせいか、確固たるノウハウがまだあまり出回っていない。

そこで今回は株式会社ヤプリが提供するアプリプラットフォーム「Yappli」のデータをもとに、複数のECアプリを横断して分析。ブラックボックスだったアプリ上のユーザー行動を紐解き、売上を伸ばすための勝ちパターンを探った。

調査内容

32種類のECアプリのデータを分析

株式会社ヤプリが保有するアプリユーザーとプッシュ通知のデータを分析。アプリ経由の購入回数を伸ばすポイントはどこにあるのか、プッシュ通知を軸に調査をおこなった。

※半年間に一度も購入されないような購入頻度が低い商品を取り扱うアプリは今回の調査対象には含まれない。

また、データの仕様上、今回は以下の定義で購入回数や起動回数を算出している。

調査結果

Ⅰ. プッシュ通知のベストプラクティス

各指標の平均値・中央値

プッシュ通知1回あたりの起動率(起動/配信数)・商品閲覧率(商品閲覧/配信数)・購入率(購入/配信数)の平均値と中央値は以下のとおり。1,000通配信すれば1〜3人が購入する計算となる。

各指標の平均値・中央値

また、文字通りプッシュ型マーケティングにも関わらず、プッシュ通知経由でアプリを起動したユーザーが購入に至る確率はアプリ全体の水準に劣らない。よってプッシュ通知は売上を伸ばす上で有効な流入経路と言える。

起動から購入に至る割合(購入/起動数)

以降、アプリや通知ごとに数値の偏りが大きいため、今回は平均値ではなく中央値を基準に分析する。

最適な配信頻度

まずプッシュ通知の最適な配信頻度を探る。アプリごとに「1週間あたりの配信回数」「起動率(起動/配信数)の中央値」「購入率(購入/配信数)の中央値」を算出し、配信頻度が各指標に影響を与えるかどうかを調査した。

配信頻度別の各指標の中央値

まず週1回以上の場合、配信頻度が高まるにつれて起動率や購入率が一律に下がる傾向は見受けられなかった。

配信頻度が週1回未満のケースが起動率も購入率も最も高い。しかし配信頻度が少ないとそもそもの起動数が減少してしまう。実際に、上記の表から購入回数の期待値を計算すると、1週間の総購入回数を最大化させるプッシュ通知の配信頻度は「1日1回以上」、続いて「週3回程度」である。

なお、プッシュ通知の配信頻度が高いと「1.通知をオフにされる」「2.通知が溜まって目に留まりづらくなる」「3.アンインストールされる」といったネガティブな影響が予想される。1と2については、配信頻度の高まりに応じて起動率が下がらないことから、そこまで懸念する必要はないだろう。

また、「3.アンインストールされる」影響については残念ながらデータを抽出できなかった。あくまで推測だが、週1回以上のプッシュ通知配信において起動率にあまり差が出ないのは、プッシュ通知を疎むユーザーは数件通知を受け取った段階ですぐに通知をオフにしてしまうからと仮定できる。よってアンインストール数も週1回以上の範囲においてはあまり差が生じないと想定できるだろう。

ここまでの結果を踏まえると、すでにプッシュ通知を1日1回以上の高頻度で配信しているアプリはそのまま継続して問題ない。その頻度に至らない場合は「週3回程度」を目安に配信するのがおすすめである。

購入率が高いコンテンツ

次に、購入率が高いプッシュ通知のコンテンツを調査した。コンテンツ別の各指標は以下のとおりである。

コンテンツ別の各指標の中央値

「クーポン」「プレゼント」など金銭メリットを訴求するコンテンツは当然ながら購入率が0.13%と高い。ただし、商品紹介でも0.09%、お役立ち情報でも0.08%の購入率を維持している。

費用対効果を高めるコンテンツの組み合わせ

値引き額や制作費を加味して、コンテンツの費用対効果をシミュレーションした。仮に単価3,000円・原価30%の商品を30,000件のプッシュ通知で販促する場合、コンテンツ別の利益額は以下のとおりだ。

10%OFFの場合

22%OFF以上に値引かない限り、最も利益が出るのは金銭メリット訴求である。

22%OFFの場合

しかし仮に週3回値引きを続ければ、お客様には「いつも値引きしているな」という印象を与えてしまい、効果も次第に薄れるだろう。

また、お役立ち情報はコンテンツ制作費を加味すると、商品単価が低いあるいは配信通数が少ない場合に赤字となる可能性がある。もちろん、SEOなど別目的で作成した特集ページをプッシュ通知に流用する前提ならこれに限らない。

上記より、プッシュ通知の費用対効果を最大化させるコンテンツの組み合わせは「商品紹介」や既に存在する特集ページ等へ遷移する「お役立ち情報」を配信することで週3回の頻度を保ちつつ、うち1〜2回ほど金銭メリット訴求を差し込むことである。ちなみに取扱商品のバリエーションが少ない場合は、「商品紹介」もシーズンに合わせて訴求を変えるなど工夫が必要である。

※なお、上記のシミュレーションは商品単価や配信通数、コンテンツ制作費によって利益額が変動するため、一度自社の数値を当てはめてみることをおすすめする。

その他購入率を高める要素

他に購入率を高める要素があるかどうかを調査したところ、以下の結果となった。

有意な差が見つかった「セグメント」「配信時間」のみ詳細をまとめる。まず、セグメント別の各指標は以下のとおりだ。

セグメント別の各指標の中央値
セグメント別の文面例

セグメントありの方が起動率も購入率もやや高い結果となった。とくに誕生月セグメント→誕生日クーポンは購入率が圧倒的に高く有効である。

また、配信時間別の各指標の平均値一覧は以下のとおりである。

配信時間別の各指標の中央値

配信が集中する人気タイムは12時・18時・20時だが、実際に購入率が高いのは8時・9時・17時とギャップがあった。

Ⅱ. 購入回数が伸びにくいシーン

ここからは、プッシュ通知を駆使しても購入回数が伸びにくい2つのシーンについて言及する。

ⅰ. インストール直後1ヶ月の購入が0回

アプリインストール直後の1ヶ月間における購入数によって、その後5ヶ月間の追加購入率がどれだけ変わるか、調査をおこなった。

インストール直後1ヶ月の購入回数別の追加購入率

※追加購入あり=インストール後2ヶ月目〜6ヶ月目の間に1回以上購入した

インストール直後1ヶ月の購入数が増えれば増えるほど、追加購入してくれる確率が上がる。インストール直後1ヶ月で1回も購入しなかったユーザーがその後なにかを購入する確率はたったの6.8%。一方で1回でも購入しているユーザーの追加購入率は35.6%と、その差は大きい。2回以上購入していれば追加購入率は50%を超える。

上記より、初月に最低でも1回は購入してもらえるように「初回ログインクーポン」などをプッシュ通知で配布して、アプリで商品購入するメリットを明示しよう。

参考:初月に購入を促すための施策例
  • 初回ログインクーポンなどの初回特典
  • WebサイトなどアプリDL導線で初回特典をしっかり訴求する
  • 初回起動時のイントロ画面でアプリで購入するメリットを訴求
  • アプリの方が購入しやすい印象を与えられるように、商品購入/検索導線などをネイティブで作成する

ⅱ. 取り扱い商品が実店舗でも気軽に購入できる

また、取り扱い商品が実店舗でも気軽に購入できる場合とそうでない場合で購入率が変わるかどうかも調査した。

アプリを2つに分類し、それぞれ「起動→商品閲覧の割合」「商品閲覧→購入の割合」を算出したところ、以下の結果となった。

実店舗でも気軽に購入できる/できない別の各指標の中央値

実店舗で商品が購入できる場合、商品閲覧から購入に至る割合が17%近く下回ることが明らかとなった。これは「アプリで商品をチェックしてから実店舗に向かい購入する」というユーザー行動が起きているからと考えられる。(参考:ECで売上だけ見るのは危険? – O2Oのユーザ行動を解明したプラザスタイルのDX事例

上記の場合、アプリ単体で成果を測ると見誤る可能性が高いため注意が必要である。

本調査の提言

購入回数を最大化させるプッシュ通知の推奨頻度は週3回

すでにプッシュ通知を1日1回以上の高頻度で配信しているアプリはそのまま継続して問題ない。その頻度に至らない場合は「週3回程度」がおすすめである。なお、配信頻度が高いと通知をオフにされるといったネガティブな影響が懸念されるが、週1回以上であれば頻度に応じて起動率が下がることはないので臆せず配信しよう。

既存の「商品紹介」「お役立ち情報」を配信して頻度を上げつつ、適宜金銭メリットを提示する

プッシュ通知1回あたりの購入率(購入/配信数)の中央値は0.10%。とくに「クーポン」「プレゼント」など金銭メリットを提示する場合の購入率は0.13%と高く、これらは値引き額を加味しても他のコンテンツより利益が出る。しかしながら、毎回値引きをおこなえば効果は低下するだろう。プッシュ通知の費用対効果を最大化させるコンテンツの組み合わせは、「商品紹介」や既に存在する特集ページ等へ遷移する「お役立ち情報」を配信することで週3回の頻度を保ちつつ、うち1〜2回ほど金銭メリット訴求を差し込むことである。

誕生日クーポンと8時・9時・17時配信がおすすめ

その他、プッシュ通知の購入率を上げるための施策として有効なのは「誕生月セグメント→誕生日クーポン」と、8時・9時・17時を狙って配信すること。文字数、曜日では購入率に差はでない。

クーポンを駆使してインストール直後1ヶ月に1回は購入させよう

インストール直後1ヶ月間でなにも購入しなかったユーザーがその後半年間でなにか1回でも購入してくれる確率は6.8%しかない。一方で直後1ヶ月に1回でも購入してくれていれば追加購入の確率は35.6%まで引き上がる。インストール直後1ヶ月は勝負期間として、「初回ログインクーポン」など購入率の高い金銭メリット訴求のプッシュ通知を送ろう。

実店舗でも気軽に購入できる商材を取り扱う場合、アプリ単体で成果を測ると見誤る

取り扱っている商品が気軽に実店舗でも購入できる場合、商品閲覧から購入に至る割合が3分の1以下に下回る。これは「アプリで商品をチェックして実店舗で購入する」というユーザー行動が起きるためと考えられる。つまり、アプリ単体で成果を見ると見誤る可能性が高い。

株式会社DINOS CORPORATION CECO / 株式会社bydesign 取締役社長 石川氏のコメント

ECにおけるアプリの役割は基本的に既存顧客とのタッチポイント強化に絞るべきであると個人的には考えている。アプリで新規顧客獲得に成功する事例の多くは大量のテレビCM投下などを実施している企業か、リアル店舗のレジ前での誘導(この場合はWEB新規であっても純粋な新規顧客ではない)ができる企業が大半だ。アプリユーザーが既存顧客だと割り切ると、本レポートの数値はより理解がしやすい。

例えば、「購入率が高いコンテンツ」の数値はそれをよく表している。通常、サイトトップページのコンテンツで、経由CVRが最も高いのはセール系コンテンツだ。商品紹介や新着商品のエリアは、企業としては経由売上を期待するが、実際にはセールをはじめとする経済的インセンティブのあるコンテンツを上回ることはほぼない。一方で今回の調査では、セールよりも商品紹介の起動率や商品閲覧率の方が高い値が出ている。これの意味するところは、「この企業の商品に対して興味レベルが高く、情報を積極的に取得したい」「この企業の商品情報は見るに値すると実感している」ユーザーを対象に通知が飛んでいるということだ。

「インストール後1ヶ月以内の購入回数」がその後の購入頻度に繋がりやすい理由も違った見え方をするかもしれない。元々が既存顧客であるとすると、顧客にとって重要なのは「アプリをこの企業からの情報取得源として有益なものとするかどうか」である。インストール後1ヶ月以内に購入まで至るということは、アプリ経由で有益な情報提供がなされた証拠であり、それがなかった場合顧客はアプリを企業との重要な接点とは見なさないということかもしれない。

よってECにおいてアプリユーザーは基本的に自社のファンであり、頻度高くアプローチしてもネガティブな反応をされにくいというのは、本レポートの結論通りである。重要なのは、ファンユーザーが喜ぶコンテンツを継続的に用意できるかであり、価値が低いコンテンツを高頻度で送ったらたちまち幻滅されてしまうことを肝に銘じることである。

WACUL 取締役 垣内のコメント

アプリの支援に入ると、アクセス解析データが正しく取得できていないことがほとんどだ。GoogleAnalyticsの設定がやや面倒など、計測のハードルが高いことが主な理由である。今回はヤプリさんの協力で、今までブラックボックスにされていたアプリのプッシュ通知利用状況を一部明らかにすることができた。今後も提供いただいたデータを活用して、研究活動を進めていきたい。

さて、アプリを改善しようとするとき、アプリは「超ヘビーユーザ」向けの顧客接点であることを念頭に置くべきだ。みなさんもスマホで頻繁に使うアプリの数は10個前後だろうし、めったに使わないアプリはすぐ消してしまうだろう。目覚まし時計のようにアプリの機能が生活に組み込まれるか、よほど好きなブランドのアプリでもない限り、スマホのホーム画面で生き残ることはできない。今回調査対象としたECサイトであれば、ほぼ「ファン」しかインストールしていない状態だ。

ファンであれば、プッシュ通知などあればあるだけ嬉しい。暇さえあればきっかけがなくても起動するが、プッシュ通知をきっかけにも起動する。起動する機会が多くなれば、良い商品に出会う確率が増え、購買に繋がるというシンプルな結果だ。相手がファンであれば、プッシュ通知を送りすぎると「迷惑かもしれない?」なんていう控えめな発想も不要だ。

インストールから1ヶ月以内に購入してもらう必要があるという調査結果も、ファン向けだと考えれば納得がいく。普段から店舗やWebサイトで購入しているファンでも、アプリの利用に慣れなければすぐアンインストールしてしまう。特別なクーポンを発行するなど、少し強引にでもアプリに慣れさせることで定着を狙えば良い。常に手元にあるスマホから暇があれば見てもらえるほど距離が近づけば、アプリ内での購入はもちろん店舗購入や商品への愛着も高まるはずだ。

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