2022.11.24

データで見る「全国旅行支援」の影響 ~3.7万サイトが登録する「AIアナリスト」のデータで「全国旅行支援」がどれだけ観光業を押し上げたかを探る~ 

1. 注目の集まる「全国旅行支援」の効果は

新型コロナウイルス感染症拡大はすでに2年におよび、長期化の様相を呈している。そんな中、特に感染症拡大の影響を色濃く受ける観光業向けの支援策として、旅行代金が全国を対象に割り引かれる国の観光需要の喚起策「全国旅行支援」が2022年10月11日に開始された。新型コロナの影響で売り上げが大幅に落ち込んだ国内の観光業にどこまで効果をもたらすか、注目されている。

多くの人は、近場で遊ぶならばレジャー施設のWebサイトを訪れる。しかし、宿泊を要する場合には旅行ポータルサイトで情報収集し、その場で予約する、もしくは直接ホテルのサイトに行って直接予約をすると最も安くならないかであったり、ホテルの設備やサービスなどについて調べてから予約をする。一方、航空券などが必要となるような海外旅行など遠方への場合には、航空券やホテル、現地でのレジャーも含めてパックで手軽にできる旅行代理店のサイトへと向かうと考えられる。

当社は「AIアナリスト」を2022年11月14日現在で、日本のWebサイトを中心に3.7万サイト以上に提供し、1ヶ月で50億セッション以上のデータを保有している。そこから見えるデジタルマーケティングの動向について、WACUL Technology&MarketingLab.からレポートしていこうと思う。

本レポートでは、2022年10月までの観光業界のWebサイトで、世の中の興味関心が特に表れる訪問数はどう動いたのかを調査した。「AIアナリスト」を利用する中で、観光関連サイトをピックアップし、観光業界の中を、観光情報を掲載する旅行ポータルサイト、海外旅行のパッケージツアーなどを展開する旅行代理店、ホテルなどの宿泊施設、遊園地などのレジャー施設の4分類にわけて調査を行ったので、その結果を報告したい。

2. 観光業全体の興味関心度を示す指数は過去最高を記録

政府が始めた新たな観光需要喚起策「全国旅行支援」は11月11日で開始から1カ月が経過した。10月11日に開始された当初、一部の旅行会社が運営する予約サイトでは、アクセスが集中したために予約が困難になったり、すぐに配分された補助金を使い切ってしまうほどの予約が入ったことから「全国旅行支援」の新規予約の受け付けを停止したりといった混乱がみられた。しかし、実態としては前年比でみてどの程度となったのかは語られていない。

そこで、当社の「AIアナリスト」に登録されているビッグデータをもとに、観光業界のWebサイトのアクセス動向を指数化してまとめていく。

2-1. 観光業界全体は前年同月水準まで回復。訪問数の回復がコンバージョンまでしっかり結びついている

本レポートでは、観光業界を4分類して調査したが、まずはその観光業界全体のトレンドを見る。

2022年10月は2022年9月という前月比で+30%となるなど、明確に「全国旅行支援」による追い風を受けた増加がみられた。

観光業界としてはコロナウイルス感染症拡大以降で過去最高を記録した。これまでの山は2度あり、1度目の2020年10月は「全国旅行支援」の前身である「GoToTravelキャンペーン」に、当初除外されていた東京都発着についても解禁されたタイミングであった。また、2度めは2021年11月で、新型コロナウイルスの2度めのワクチン接種が国民の7割以上に行き渡り、感染者数も大幅に減少したことから、行動規制緩和が進んだタイミングだった。

詳細は後段にて述べるが、観光業界を4分類して、それぞれをブレークダウンして見ると、面白い動向がみえた。

まず、すべてに通じて見える傾向は2つある。

ひとつは、観光業界全体での拡大傾向が、21年1月を底として改善傾向にあることである。21年1月は第6波が押し寄せた時期であったものの、そこからは感染症拡大に取り組むよりはむしろコロナウイルスとの共存をベースとして、規制緩和の方向で動いている。

もうひとつは、前年比の増加率のパーセンテージは縮小が続いていることだ。コロナ禍でも、2021年も11月をピークとした需要増加の山ができており、今年再度「全国旅行支援」で山を作りに行っても、前年同月比のパーセンテージの数字感そのものは小さくなっている。

2-2. 旅行ポータルサイトは、コロナ影響がみられなくなった

観光情報が掲載されているポータルサイトを集めたセグメント「旅行ポータルサイト」は、早い時期に回復していたこともあり、今年は前年同月水準が継続している。むしろ足元では、前年同月比でみるとむしろマイナス圏に突入する珍しいセグメントである。

観光情報サイトとしては「全国旅行支援」の直接的な恩恵にあずかりづらいものの、行動制限のないはじめての夏休みであった22年8月を10月が上回ることはなかっただけでなく、シルバーウィークのある9月からも増加は限定的であった。

ただ、このセグメントでは、22年8月は、コロナ禍の21年8月と20年8月はもちろん、コロナ前の19年8月を上回って過去最高になるなど、コロナ影響は終わりつつあるといえよう。

2-3. レジャー施設は「全国旅行支援」の追い風を大きく受けた

遊園地や観光施設のサイトで構成されるセグメント「レジャー施設」は、コロナが直撃した観光業界の中では最も回復が力強いセグメントであった。

コロナ前を上回る水準が続いていることから、緊急事態宣言の隙間での回復はもちろん、コロナ禍で遠出できないことによる“近場旅行”の需要を取り込んでいるといえよう。

足元でも海外旅行は難しいため、車でいくことのできる近場のレジャー施設を調べることが多く、

特に、2021年秋以降はコロナ前の1.5倍水準をキープするなど、前年比プラスを維持するなど、非常に好調だ。それに加えて、2022年は9月そして10月と大きく伸びて、第5波と第6波の間であった2021年11月と同等水準にまで届いたことから、「全国旅行支援」の後押しを大きく受けたセグメントといえよう。

2-4. 宿泊施設は政府支援事業で押し上げありもコロナ前水準までじわじわと戻る

「全国旅行支援」の本丸である宿泊施設は、前年同月比プラスがここ1年続いているが、絶対値としてはやっと例年水準に近づいてきた水準である。一時の厳しさを脱し、一息つける水準まできたといえるだろうか。

宿泊施設は行動制限のあった緊急事態宣言期間は前年比60%減と大きく減少していた。一方、GoToトラベル事業の効果で2020年10月にコロナ前の水準を一時取り戻すも、また緊急事態宣言が発令されるなどして、再度落ち込んでいた。その後、重症者数が減少し、行動制限緩和が進む中で、だんだんとコロナ前の水準を取り戻してきており、2022年5-9月はついに2019年の水準を取り戻した。

22年10月スタートの「全国旅行支援」は9月から動きがあったはずだが、そこまで大きな押上効果は生まれていなかった。ただ、22年10月になってついに2019年の水準を超えた。

ホテル業界はリゾート系やビジネス系、そして東京都内かそうでないかによって、トレンドに違いはある。中でも京都や九州/沖縄地方など、ビジネスより観光の要素の強い宿泊施設の回復が力強いようだ。

2-5. 観光業界のサブセクターである旅行代理店は、一時前年比90%減まで落ち込むなど底が深かったが、足元ではコロナ前の水準まであと一歩に

旅行代理店は、行動制限のあった緊急事態宣言期間は前年比90%減と最も大きく減少していた。

一方、GoToトラベル事業の効果で2020年10月にコロナ前の水準を一時取り戻すも、また緊急事態宣言が発令されるなどした際には、コロナ前の7割減水準まで大きく落ち込む。海外旅行も可能となってきた2022年は急速に回復を見せており、2022年6月には2019年の水準まであと一歩のところまで戻った。

22年7-9月では、コロナ前の4割減水準にまた落ち込んでおり、低調な状況が続いていた。しかし、10月は前月比1.5倍・前年同月比1.2倍まで伸びている。ただ、旅行代理店でも国内旅行に特化しているタイプのWebサイトのほうが、より追い風をうけている傾向がみられた。そういった点からも、前年比では比較的ダイレクトに金銭的な支援を受けることができた「全国旅行支援」の追い風をうけられた、といえよう。

3. 観光業界は近場から中距離へと需要が移るも、遠距離はまだ回復なかば

セグメントごとの指数を並べてみると、軽い気持ちでできるお出かけなどの情報も多い旅行ポータルサイトは感染症拡大による落ち込みからの回復が早かった一方で足元では伸びが止まった(赤線)。同様に、レジャー施設のように近場のセグメントが2021年春に先行して回復し、2021年秋~冬はもっとも前年同月比の高いセグメントとなっていたが、直近の「全国旅行支援」などの追い風の影響は弱い(黄線)。

一方で、ここまでの回復の弱かった宿泊施設と旅行代理店の前年同月比が大きくなった。2022年の前年同月比をみると、旅行代理店(青線)と宿泊施設(桃線)が強い。特に、直近の3ヶ月では、宿泊施設が前年同月比でトップセグメントとなっている。これは、北海道や沖縄、京都のような中距離での観光需要が牽引している。近場から中距離へと、消費者の興味関心の“射程”は、伸び始めていることが分かる。

「全国旅行支援」は観光業界全体の下支えとなっているものの、過去の機会損失を取り戻すほどには至っていないともいえよう。

ただ、実数値ベースでは、また違った景色が見える。

回復の早かったレジャー施設や旅行ポータルサイトは、すでにしっかりコロナ前を取り戻しているどころか、過去を大幅に上回っている傾向がある。一方で、足元で回復のみえる宿泊施設や旅行代理店は「全国旅行支援」をもってしもて、まだコロナ前を取り戻したかどうか、という水準である。この追い風がない状態、例えば今年の年央の各指数の水準をみると、中距離以上の1回分の需要を、近場の観光2回で取り戻すような、そんな消費者動向がうかがえる。

第8波到来との声も聞こえてくるが、社会を急変させた新型コロナウイルスの蔓延が日常化し、人々はだんだんとこの状況を受け入れつつある。そうして、人々は日常から離れる観光を、近場で我慢するというここ数年の呪縛から少しずつ解き放たれてきた。むしろ、こうしたWebサイトへのアクセス数の合算で見れば、実はコロナ前を大幅に超えるものとなっている。それだけ、これまでの我慢が鬱積されているとみることもできよう。

WACULテクノロジー&マーケティングラボでは、今後もWebを通じた人々の動向を注視していきたい。

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