「予算増額なき顧客」は事実、優先度が下がる。Web広告代理店の実態調査

「予算が月300万円以上でないと優秀な担当者はアサインし続けられない」広告代理店と、「CPAが下がったとて予算をなかなか増やせない」広告主のギャップが浮き彫りに。
調査に至った背景
定期的な「代理店リプレイス」は本当に意味があるのか
Web広告運用を代理店に依頼してしばらく経った広告主が、「最近成果が改善していない」「運用担当者から新しい提案ももらえなくなった」という理由で、定期的に代理店をリプレイスする様をしばしば見かける。
しかし、代理店を変えることによって本当に “優秀な運用者に恵まれ、成果が改善する” のだろうか。
そこで当調査では、日本屈指のWeb広告代理店で経営やマネジメントに携わる方々を中心に、代理店の本音をヒアリング。成果につながる「代理店との向き合い方」を広告主へ提言する。
調査結果 - サマリ
代理店から予算増額を提案しても約6割は受け入れられない
代理店としては当然広告費を増額したいわけだが、新しい施策や増額の提案をしても「興味は示すものの、最終的に予算が確保できず実行されない」というリアクションであることが約6割。
特にBtoBや人材・不動産など、CV後に営業が介在することによってCV数と売上が比例しにくい商材においては、CPAが下がったからといって広告費を増額するとは限らないことがわかった。
予算が伸び悩む状況では約半数「運用担当者の交代」が検討される
「増額されずとも運用の優先度が下がることはない」と明言する代理店が多い一方、広告費が伸び悩む状況では「運用担当者を交代することがある」と46%が回答。実際には「成長見込みの高いクライアントに優秀人材を回す」という動きが起きている。
月額300万円以上なら、代理店側は高い優先度を保てる
「月300万以上」なら運用担当者の交代が起こりにくい、あるいは優先度を高く保てるという声が66.7%を占めた。また、LTV・ブランド指標など多面的なKPIを設定した場合も「長期的視点があるため担当者もやりがいを持てる」という前向きな回答が33.3%見受けられた。
調査概要
上場企業や従業員規模1,000人超の大手企業など、著名なWeb広告代理店の経営者・管理職を中心にヒアリングをおこなった。

調査結果 - 詳細
苦労している点

成果が頭打ちになったクライアントへの対応において、代理店として苦労している点を尋ねたところ、「クライアントの拡大意欲を引き出せない」と回答した人が約半数いた。
増額提案


「定例ミーティングや四半期レビューの場(85%)」「新広告チャネル/ツールが出たとき(46%)」に新たな施策や増額の提案がなされている。
しかし対するクライアントは、「興味は示すが、最終的に予算が確保できず実行は少ない(61.5%)」というリアクションであることが多い。「予算増を前向きに検討し、実行に至ることが多い」と回答したのは23.1%に留まった。
なお、以下のようなフリー回答も見受けられた。
「次期の予算編成タイミングが近かったり、セール前の場合は予算増額を前向きに検討いただくことが多いため、タイミングを見極め提案を入れた結果、増額に至るケースが多い。一方で、得意先の検討タイミングを外すと、興味は示すが最終的に予算確保出来る確率は高くない」
「月額30万から始めて、300万、500万となるようなケースはほとんどない。肌感2~3%だったので、相当な理由がない限りは300万未満の新規案件は受けないようになっていった」


広告費を増額しない、あるいは増額に慎重なクライアントが多い理由は「社内で予算が厳格に管理されているから」という回答が69%と多い。また、業種別で深堀りしてみると「BtoB商材全般」が増額されにくい印象であることがわかった。
「BtoB商材においては媒体CVとオフラインCVの乖離が大きい(収益に繋がらない)ケースがある」
「CPAは改善されたのに広告費が伸びない案件は、CV後に広告主側の現場でさばける量に限界が決まっている案件に多いと感じます。人材系(CV後に面談)や、美容医療医院(CV後に施術)の案件で経験があります。」
上記のフリー回答も踏まえると、CV後に営業が介在することによってCV数と売上が比例しにくい商材においては特に「CPAが下がったからといって広告費を増額するとは限らない」と言えるだろう。
増額しない場合の体制

「増額しないからといって、運用の優先度が下がってしまうことはほぼない」と回答した人が約8割を占める。


一方、優先度は下げないと言いつつも、広告費が伸び悩む状況では「担当者が交代、または別案件へ移動することがある」と46%が回答。実際には「成長見込みの高いクライアントに優秀人材を回す」という動きが起きていることが分かる。
以下のようなフリー回答も得られた。
「広告費がおおよそ月額1000万円以上の得意先の場合は、広告費が伸びづらくとも運用体制が維持されるケースが多い。一方で、月額500万円を下回るくらいの得意先になると、若手に担当変更されるケースがしばしばある。最初は既存担当のアシスタント的な立ち位置で案件に介入し、徐々に引継ぎをして主担当を入れ替えるパターンが主。」

「月50~100万円」「月100~300万円」という選択肢も設けていたが回答はゼロ。「月300万以上」なら担当者交代が起こりにくい、あるいは優先度を高く保てるという声が66.7%を占めた。
CPA以外のKPI


LTV・ブランド指標など多面的なKPIを設定した場合、「長期的視点があるため担当者もやりがいを持てる」という前向きな回答が33.3%見受けられた。
一方で以下のフリー回答もあり、CPA以外のKPIを持つことによるリスクも存在する。
「広告施策で成果が頭打ちになると、周辺領域(ブランディングや認知施策 or DX施策)に提案の幅を広げるが、それでうまくいき予算増額を引き出せるケースもあるが、得意先決済者の要望や期待を満たしきれずリプレイスになるケースもしばしばある。そのため、現場メンバー提案力の育成と、広告施策以外のケイパビリティ拡大の2点が課題である」
本調査の提言
頻繁な「代理店変更」は非効率。コンペは長期パートナー探しの場
本調査の結果を踏まえると、優秀な運用者を求めて頻繁に代理店をリプレイスしたとしても、根本の「予算規模」や「事業フェーズ」が変わらなければ、同じ課題に直面し続けると言えるだろう。また、実際のところリプレイスは引き継ぎコストが発生するだけでなく、ノウハウが散逸しやすく非効率なケースが多い。
よって代理店のコンペをおこなう際には、 "優秀な運用担当者" や "短期的で派手な施策" を追い求めるのではなく、今後の事業成長や広告投資の方針を共有し合いながら、長期的に伴走してくれるパートナーを丁寧に選ぶべきである。
低予算が続くのなら、フリーランスや小規模代理店を選ぶのもあり
本調査では、広告費が月300万円以下で伸びしろが期待しにくい案件に関しては「担当者を若手に交代させる」「優先度が下がる」ケースがあると判明した。
よって自社の広告予算が月300万以下である、かつ今後も拡大の見込みがなければ、高度な専門領域(検索広告運用やSNS広告運用など)に特化したフリーランスや小規模代理店を活用し、固定フィー制でコストをコントロールする選択肢も有効である。なおこの場合、戦略策定は自社で担う、別のコンサルを併用するといった補完策を同時にとる必要がある。
大規模予算or総合マーケ支援を依頼するなら、大手代理店を選ぶ
一方、小規模代理店は「総合的なマーケ支援までは手が回らない」ケースが多い。そのため広告運用以外にもブランド戦略やオフライン連動施策などの多面的な支援を必要としている、あるいは将来的に広告予算を大きく拡充できるタイミングがあるのなら、大手代理店を選ぶのがおすすめだ。
もし広告以外の戦略面も支援してほしいというニーズが強いなら、別途固定フィーを支払い、コンサルティングしてもらうのも一つの手である。
株式会社WACUL 取締役 松尾のコメント
本調査では、広告予算の規模や事業フェーズが代理店の優先度に大きく影響し、頻繁なリプレイスが非効率に陥りやすいことが明らかになりました。実際、引き継ぎ工数の増大やノウハウの散逸は、企業の成長スピードを削ぎかねません。コンペを行う際には、短期的な成果や派手な施策だけを追わず、長期的なパートナーとしての適性を重視することが肝要です。
特に月300万円以下の予算が続くケースでは、大手代理店で優先度が下がるリスクを踏まえ、専門領域に強いフリーランスや小規模代理店を検討するのも十分に選択肢となるでしょう。一方、広告運用だけでなく営業チームとの調整など多面的なサポートを必要とする場合は、大手代理店や必要に応じた外部リソースの活用も視野に入れるべきです。最終的には、自社の目標や課題をしっかりと把握したうえで、伴走型で支えてくれるパートナーを選ぶことが、成果向上への近道と言えます。
株式会社WACUL 研究所パートナー 廣島のコメント
今回の調査から、予算規模に応じた代理店選定がいかに重要であるかが改めて浮き彫りになりました。広告主と代理店は、いずれも限られた人的リソースの中で、売上や事業成長の目標を追求しています。大手代理店においては、組織改編が頻繁に行われ、担当者が変更されることが少なくありません。その際、担当者の案件への想いなどは一旦おいて、実際には予算規模と成長性を最優先に、案件ごとに優秀な人材がアサインされる傾向があります。これにより月間予算300万円未満の案件では、経験の浅い人材にすぐに担当変更されてしまうリスクを伴います。
だからといって、頻繁に代理店リプレイスやコンペを繰り返すことは、単なる手間に留まらず、機械学習と最適化に必要なデータや、案件固有のナレッジが振り出しに戻るという大きなデメリットを伴います。昨今、マーケティングスキルや広告運用能力の高い人材は、大手代理店から独立し、フリーランスや少数精鋭の小規模代理店を立ち上げるケースが増えています。そこで、大規模な広告予算を持たない企業にとっては、腕のある小規模代理店との長期的なパートナーシップを築くことが、より高いROIを実現するための最適な選択になるでしょう。
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