研究レポート・対談

2026.11.02

学習塾の新規顧客獲得レポート2026〜大手14塾の「申込前」と「申込後」の導線を評価

大手学習塾14塾の新規顧客の獲得導線(公式サイト・比較サイト・Googleマップ・申込後の電話対応)に、デジタルマーケティングの勝ちパターンが取り入れられているかを評価した結果、全体平均は100点満点中42.4点にとどまった。特に以下2項目はいますぐ取り組むべきである。

  • 体験授業でも資料請求でも、申込が入ったらすぐに(理想は1時間以内に)電話をかける。体験授業の申込であれば、その電話の中で来塾日を決める

  • 「ステップ式UI」で学年・教室を選ばせながら、体験授業の申込へ誘導する

調査背景

学習塾の新規顧客の獲得は、本部と校舎がそれぞれ役割を分担していることが多い。たとえば、公式サイトの申込の仕組みは本部が設計する一方、Googleマップの管理や体験授業の運営は、各校舎に任されている。このように役割が分かれているため、施策ごとに改善を進めても、サイトを見てから来塾するまでのどの段階でユーザーを取りこぼしているのかが見えにくい。

そこで本レポートでは、大手学習塾14塾について、公式サイト・比較サイト・Googleマップ・申込後の電話対応を、新規顧客獲得の勝ちパターンに沿って一律に評価した。

ユーザーが塾を選ぶまでの流れ

塾選びは、成績が下がったとき、定期テストが近づいたとき、受験を控えた学年になったとき、長期休みが近づいたときなどに始まる。いざ検討が始まると、短期間で塾を決める傾向にある。

最初に候補に挙がるのは、友達や兄弟が通っていたり、知人の評判がよかったりする塾である。そのうえで検索して候補を広げ、比較サイトや口コミ、Googleマップで絞り込む。

絞り込んだ塾は、公式サイトで詳しくみる。まず見るのは教室の場所や授業料、コースで、公式サイトの中でも特に教室のページをよく確認する。

その後、複数の塾に並行して体験授業を申し込むことが多い。申込のあとは塾からの電話で来塾日が決まり、実際に教室で授業を受け、講師や教室の雰囲気も見たうえで入塾先を決める。体験授業が、実質的に入塾を決める場になっている。

新規顧客獲得の勝ちパターン

ここから、学習塾の新規顧客獲得の勝ちパターンをチェックリストとともに紹介する。

公式サイト

  • FVのメインコピーに、対象の学年か目的(高校受験・定期テスト対策など)が書かれている

  • FVに体験授業の申込ボタンと電話番号の両方がある

  • スクロールしても、体験授業の申込ボタンと電話ボタン(タップで発信)が画面に追従している

  • 学年・教室をタップで選んでいくと、申込フォームに入るステップ式になっている

  • 体験授業の申込フォームを開いたとき、スマホで送信ボタンまでスクロールせずに届く

  • 教室ページから、その教室の体験授業の申込・電話へ直行できる

サイトを開いた最初の画面(FV)では、まず「自分(子ども)向けの塾か」が伝わることが重要だ。ブランドのキャッチコピーよりも、学年や目的をメインコピーに置くことを優先すべきである。

また、公式サイトに来るユーザーはある程度候補を絞り込んだ段階にあり、すぐに問い合わせたいと考える人も多い。そのため、FVには体験授業の申込ボタンと電話ボタンを置き、スクロールしても画面に追従させたい。そうすれば、申込に直行してもらいやすくなる。

くわえて、学年や希望の教室など事前に聞かなければならない項目が多い場合は、簡単な質問を1問ずつ選ばせて申込へ誘導するステップ式のフォームが有効である。ボタンを選ぶだけで先へ進めるので、入力の手間を感じにくい。

なお、ユーザーは公式サイトの中でも特に教室のページをよく見る。教室ページの申込ボタンからフォームに進んだときは、その教室がはじめから選ばれている状態にしておくとよい。

今回の調査では、教室ページから申込フォームに進んでも、多数の教室の一覧から希望の教室を選び直させるフォームが14塾中5塾あった。また、体験授業の申込の前に「会員登録」を求める塾もあったが、申込のハードルを大きく上げるため、体験授業の段階では求めないほうがよい。

比較サイト掲載

  • 比較サイトに、教室(校舎)ごとのページがあり、場所・コースなどの基本情報が載っている

教室ごとのページがなければ、エリアから探すユーザーの候補に入りにくい。比較サイトには、塾としてのページだけでなく教室ごとのページを用意し、コースや料金などの基本情報を載せておくことが最低条件である。

Googleマップ

  • 口コミの星が4.0以上

  • 口コミが10件以上

  • Googleビジネスプロフィールに、体験授業の申込ページへのリンクがある

近所の塾を探すユーザーは、Googleマップも使う。口コミの星が低い教室は候補から外されやすい。また、そもそも件数が少ないと信頼度が下がるうえ、低評価が1件つくだけで総合評価が大きく下がる。校舎で在塾生やその家族に口コミを依頼し、件数と評価の両方を保ちたい。

Googleマップからそのまま申し込めるよう、プロフィールのリンク先は教室のトップページではなく体験授業の申込ページにしよう。

申込後の電話

  • 申込のあとすぐに(理想は1時間以内に)初回の電話をかける

  • 体験授業の申込であれば、電話の中で来塾日をその場で決める

  • 来塾の前に、状況・志望・ほかの候補・決める人を聞く

なによりも重要なのは、初回の電話までの速さである。ユーザーは複数の塾を並行して比べているため、ほかの塾より早く電話をかけることが、最終的に選ばれるかどうかに直結する。資料請求も、体験授業と同じく電話の対象にしたい。

そのうえで、体験授業の申込であれば、電話を切る前に来塾日まで決めてしまうのがよい。ユーザーがあらためて連絡する手間が省け、そのまま体験授業につながるからだ。来塾の前に状況や志望を聞いておけば、体験授業の中身をその人に合わせることもできる。

今回の調査では、本部のコールセンターから電話がかかる塾と、教室の担当者から電話がかかる塾の両方があった。コールセンターのほうが総じて電話が早く、その後のリマインドの連絡も多い傾向にあった。

採点結果

ここまでに紹介した勝ちパターンを採点項目にし、大手学習塾14塾(売上高100億円以上または教室数200以上を目安に選定)の新規顧客の獲得導線を100点満点で評価した。配点は、公式サイトのFV15点・申込フォーム35点、比較サイト10点、Googleマップ10点、申込後の電話30点である。

本レポートの評価対象は、各塾の次のページである。

  • 公式サイトのトップページ

  • 新宿区・渋谷区内にある1校舎の、公式サイトの教室ページ

  • 同じ校舎の、比較サイト「塾ナビ」の教室ページ

  • 同じ校舎の、Googleマップの教室情報

採点は2026年10月にスマホでの目視でおこない、申込後の電話については、実際に申し込んだユーザーへのインタビューで確認した。

全体平均は42.4点で、どの塾も新規顧客獲得の勝ちパターンを取り入れる余地が大きいことがわかる。

項目別に見ると、「比較サイト上に教室ごとのページを用意する」点は14塾中12塾がクリアしており、業界標準として定着している。

一方で、FVに体験授業の申込ボタンと電話番号の両方を置いている塾は14塾中5塾、ステップ式の申込を導入しているのは4塾にとどまった。また、Googleマップで口コミの星4.0以上かつ10件以上を満たした教室も14塾中3塾に限られた。

もっとも点数が低かったのは申込後の電話で、14塾の平均は30点満点中6.3点。申込から1時間以内に電話が来る塾と、2日たっても電話が来ない塾にはっきり分かれている。申込から1時間以内に電話をかけた塾は14塾中4塾で、うち3塾は5分以内と速やかな対応だった。一方で、資料請求の申込を含む残りの9塾は申込から2日たっても1本も電話をかけてこなかった。

以下、上位3塾について特徴を紹介する。

上位塾の個別解説

1位:個別教室のトライ

体験授業の申込は、学年を選ぶところから始まる1画面1問のステップ式。申込から5分以内に電話がかかり、その電話の中で来塾日が決まった。一方で、FVのメインコピーに対象の学年や目的がなく、スクロールしても追従するのは資料請求のボタンだけである。ここを整えれば、さらに差を広げられる。

2位:明光義塾

FVに体験授業の申込ボタンと電話番号の両方を置き、スクロールしても体験授業の申込ボタンが画面に追従してくる。また、申込から5分以内に電話がかかり、その場で来塾日が決まった。ただし申込フォームは縦に長く、送信ボタンまで何度もスクロールが必要である。フォームを1画面ずつ進む形にできれば、首位を狙える。

3位:東京個別指導学院

FVの申込ボタンを押すと、学年から順に選んでいくステップ式の画面が開き、スクロールしても体験授業の申込ボタンと電話ボタンが画面に追従する。申込フォームの点数はトップクラスである。一方で、体験授業の申込から2日間、電話がかかってこなかった。サイトの申込のしやすさに電話の速さが加われば、さらに点を伸ばせる。

本調査の提言

本調査から、学習塾業界は公式サイトの申込フォームと申込後の電話対応に大きな改善の余地があることがわかった。特に以下2項目はいますぐ取り組むべきである。

  • 体験授業でも資料請求でも、申込が入ったらすぐに(理想は1時間以内に)電話をかける。体験授業の申込であれば、その電話の中で来塾日を決める

  • 「ステップ式UI」で学年・教室を選ばせながら、体験授業の申込へ誘導する

なかでも電話の対応は早い塾とそうでない塾の差が非常に大きく、申込から5分以内に電話をかける塾がある一方で、半数以上の塾は2日たっても電話をかけていなかった。すぐに電話をかけられていない塾は、まずこの差を埋めることが先決である。

WACUL 代表取締役 垣内のコメント

点数の低い塾は、最終候補まで残っているにもかかわらず、クロージングが弱い。公式Webサイトは最後のネガティブチェックで訪れる程度であり、能動的に見たい情報があるわけではない。細かくWebサイトで説明するよりも、体験授業に直行させたほうが成約率は高い。

Webサイトから資料請求があった場合も、積極的な架電で体験授業に導かなければ、他の候補に先を越されてしまう。

これらのクロージング力を高める施策を進めるには、本社側だけでなく、教室側との協調が不可欠である。本社と教室との組織の壁が、Webサイトや架電対応から透けて見える結果となった。

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