2023年 デジタルマーケティングの論点。景気後退期に向けて必要な投資と削るべき投資は何か?WACULの提言2023年 デジタルマーケティングの論点。

株式会社WACUL代表取締役の垣内と申します。
2023年も当社が考える、デジタルマーケティング業界や担当者の方が、2023年に考えておくべきテーマについて『デジタルマーケティングの論点』をまとめましたので、ぜひご笑覧ください。
2023年は、未だ続くコロナ禍に加え、歴史的なインフレとそれに対応するための金融引き締めにより、景気後退期が訪れるとの警鐘があちこちで鳴らされています。実際、米国および中国といった世界経済の中心での景気後退の影響で、日本も景気後退を免れないでしょう。
景気後退期を迎える経営者は、生き残りをかけて大胆なコストカットを敢行します。しかしコストカットによりビジネスを縮小して生き残ったとしても、不況期にも適切な投資を続けたライバルに差をつけられるリスクがあります。
本稿では、デジタルマーケティングの「顧客接点」「人材」「未来投資」の3分野について、コストカットすべき対象と、あえて投資を続けるべき対象を整理しました。
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1)オウンドメディアのリサイクルで、顧客接点のコストを削減する
2022年末、様々な企業から来期の予算について相談を受け、広告費の削減を掲げる企業を多数見かけました。広告費を削減する一方で、目標は据え置きまたは成長を求められるという苦境に、現場のマーケターは頭を悩ませています。
広告費を削減した穴を埋めるには、コストパフォーマンスに優れる「オウンドメディア」を活用すべきです。オウンドメディアとは、自社が運営する媒体です。公式Webサイト、公式アプリ、自社会員向けメールマガジン、SNSの自社アカウントなどが該当します。
オウンドメディアは構築するまでに時間がかかるものの、一度作ってさえしまえば安価かつコントローラブルに顧客と接点を持ち続けることができます。ここからは最小限のコストで既存のオウンドメディアをリサイクルし、一方で広告のコストも効率化する方針を提案します。
1-1)全社に散らばった顧客データを共有・活用する
リサイクルの「本丸」は、会社全体に散らばった顧客データの活用です。会社を継続していれば、知らず知らずのうちに様々な形で顧客データを保有することになります。しかしそれらは様々な部署で分散したまま放置され、場合によっては捨てられてしまい、共有・活用されることはありません。
顧客データさえあれば、ほぼ「無料」で顧客にアプローチできます。メール、SMS、郵送物、電話など様々な手段で連絡を取れます。顧客データという最大のマーケティング資産を蓄積し、共有し、いつでも誰でも使えるようにすることが景気後退期における最重要事項なのです。
BtoBや高額商材など、営業担当が活躍するビジネスであれば、名刺情報の共有が不可欠です。営業担当が紙で持っている情報を吸い上げ、顧客データをデジタル化します。ただしそのためには営業担当者の協力が不可欠です。営業の中には、名刺をトレーディングカードのように大切にしている人もいますし、勝手に連絡してほしくないという人もいますので、名刺を拝借する際は、最大限の配慮が求められます。
BtoCや小売など、キャンペーンで顧客情報を扱うビジネスであれば、全社共通の会員基盤構築が不可欠です。商品やブランド別に行われるキャンペーンは、別々の広告代理店が、別々の顧客データベースで管理し、キャンペーン終了とともに捨ててしまうなどというズサンな管理が未だに続いているケースを散見します。お金をかけて集めた資産である顧客データを毎回捨ててしまうなど言語道断ですし、捨てないまでもバラバラに管理されていてブランド単位でしか使えないというのも非効率極まりありません。ブランド単位でお客さんがついていたとしても、よほどターゲットの異なる商材でもない限り、クロスセルの可能性は十分あります。顧客データはブランドの資産ではなく、会社全体の資産なのです。
上記の他にも、複数のSNSアカウント、複数のスマホアプリなど、事業部やブランド別に顧客データが分散しているケースは多々あります。これらを全社に共有することで、コストパフォーマンスの高い顧客接点を構築できるのです。顧客基盤の中にいるような既存顧客はロイヤルティが高いため、新規顧客へのアプローチよりも確実に成果が見込めます。
1-2)Webサイトはあえて「リニューアル」しない
Webサイトは数年間に1度リニューアルすべき、というのが業界の慣習となっています。「デザインを今風に刷新したい」「新しい担当者が自分好みのWebサイトにしたい」「競合がリニューアルしたので自分のところもしたい」など、理性的な根拠が一切なくてもWebサイトのリニューアルプロジェクトは立ち上がります。
Webサイトリニューアルで成果が出れば良いのですが、その大半は成果が出ないどころか、悪影響が出てしまうことが当社の研究結果からも分かっています。
参考
成果が落ちてしまう理由として、下記の3つが挙げられます。
これまでのPDCAで培った勝ちパターンが喪失するため
SEOに強いページの削除/改悪によって検索順位がダウンするため
デザインの新しさに注力するあまりにユーザビリティが損なわれるため
成果観点でもコスト削減観点でも、Webサイトは「リニューアル」するのではなく、「部分改善」する方が望ましいのです。既存の古いページはそのまま残し、成果に影響する「訪問数の多いページ」や「CVRに貢献するページ」だけ、わずかに修正することで最大のコストパフォーマンスを得られます。その中でも成果が出やすいのは、ファーストビュー(最初に表示される部分)の改善です。古くても価値のあるWebサイトを「リサイクル」すべきなのです。
Webサイトの中に、デザインが統一されていなくて気持ち悪いページがあったとしても、そのまま放置するのが正解です。なぜならデザインの統一性を気にするのは、その会社の社員だけだからです。顧客が閲覧するページは平均2〜5ページ程度であり、網羅的なチェックは行われません。さらに顧客はWebページの中身たる「テキスト」や「画像」しか見ておらず、ヘッダ・フッタや見出し要素のデザインは視界の外にあるのです。全ページのデザイン統一にコストを支払うのは不毛な活動です。さらに言えば、数ヶ月すればまた新しいデザインパターンのWebページが運用の中で追加されてしまうのですから、刹那的な統一に何の意味もありません。
SEOにおいても、Webサイトのリサイクルが欠かせません。SEOのために新規ドメインでメディアを立ち上げるケースを散見しますが、全くお勧めできません。歴史のあるドメインを使った方が順位が上がりやすく、コストパフォーマンスに優れます。また同じドメインを使う場合でも、新規にページを作るより、既存ページで上位表示を狙えそうな「惜しいページ」を活かした方が効率的です。
一方で、Webサイト「リニューアル」を予算を取るための「掛け声」として活用するのは有効です。リニューアルなら1,000万円の予算が出ますが、部分改善なら10万円くらいの予算しか出ないという企業もあるでしょう。予算獲得のために「リニューアル」を名乗りつつ、その実はトップページだけ少し今風のトンマナに変えて、本当は重要なページを微修正するという「部分改善」に取り組むべきなのです。
1-3)お客様窓口の社員から「刺さるコンテンツ」を発掘する
広告コストを削減すれば、集客の瞬発力が落ちます。前述したWebサイトの部分改善にしても、顧客データの共有にしても、一朝一夕にできることではありません。そこでコストを掛けずに、瞬発的に集客できる施策として「刺さるコンテンツ」の作成を提案します。
「刺さるコンテンツ」とは、その内容の純粋な魅力から、主力メディアへの掲載や、SNSでの拡散を通じて、無料で多くの顧客にリーチするコンテンツです。しかし「刺さる」とは言うは易し行うは難しで、実際に世の中に出ていくコンテンツの多くは面白くない中庸なものばかりです。顧客に実際に「刺さる」かどうか知らないマーケティング担当者と外部協力者によって生み出された企画は、事業責任者や広報部門のチェックによってさらに骨抜きになり、中庸でつまらないものに成り下がります。
「刺さる」コンテンツの作成は、とても属人性の高い仕事です。例えば当社のコンテンツの多くは、代表である私が自ら書いており、他のメンバーに任せることが未だにできていません。しかし少しでも「刺さるコンテンツ」の再現性を高めるためには、お客様窓口の社員の知見をリサイクルすることをオススメします。お客様と日々接している営業担当、店舗担当、カスタマーサポート担当などは、お客様に刺さる「トーク」を知っています。Web担当者が自己満足のコンテンツを作るくらいなら、まずは顧客現場で刺さっているコンテンツを集めてくるべきでしょう。
刺さるコンテンツの制作と並行して、メディアとのリレーションを築くことにも注力したいものです。自社のお客様が閲覧しているメディアを探し、さらに自社のテーマと相性の良い記事を書いている記者を見つけてアプローチします。
1-4)広告はAIに任せ、広告代理店への無駄な依頼をやめてコスト削減する
最後に広告コストを効率よく使う方針をご提案します。すでに周知の事実ではありますが、Google、Facebook、Yahoo!などいずれの広告媒体でも、手動で運用するより、AIに任せて運用する方が効率が良くなるという時代になりました。
AIに任せるということは、なるべくアカウントやキャンペーンを統合して、学習に使えるデータ量を増やすという方針です。例えば、Googleのリスティング広告とYouTube広告は同一アカウント内に置いて、自動で最適化すべきです。YouTube広告だけを別アカウントにして、認知目的で運用するケースも散見しますが、これでは本当に認知から売上に繋がったか追うことができませんし、最適化もかかりません。
広告キャンペーンもなるべく統合すべきです。10年前ならいざしらず、未だに広告キャンペーンを10個以上手動で区切って運用しているケースを見かけますが、これでは1キャンペーンあたりのデータ量が足りず、AIによる学習が進みません。例えばリスティング広告なら、100%表示させたい「指名検索」と、CPAの許す限り表示させたい「非指名検索」の2つにまとめてしまうくらいの運用が現代的なアカウント設計と言えます。
しかしこうしたアカウント設計の抜本的な変更が、広告代理店から提案されることは稀です。クライアントへの説明の面倒臭さや、変更直後のCPA悪化リスクなどが主な理由です。広告主側が正しい知識を持ち、広告代理店に要望しなければなりません。
運用の多くをAIに任せる時代になれば、広告代理店の運用工数は減ります。そうなれば広告代理店に支払うフィーも減額できるはずです。CPAを改善したいなら、運用方針を改善するよりも、広告代理店に支払うマージンを減らす方が確実です。しかし現実的には、広告代理店に無駄な業務を押し付ける広告主がいまだに多く、広告代理店の工数が減ることはありません。
例えば、リスティング広告のタイトル・ディスクリプションを毎月変更し続けるような運用は、ほとんど成果につながらず「仕事のための仕事」にほかなりません。広告代理店は「PDCAを回している感」の演出を広告主から求められるため、内心では全く効果がないとわかりつつも、毎月細かい提案をせざるを得ません。そもそも広告運用は「よい状態を保つ」業務であり、「青天井に上を目指す」業務ではありません。「あえて何もしない」という運用方針が最善手であることも少なくありません。
広告主は、広告代理店に依頼する業務を根本から見直す必要があります。広告代理店に依頼すべき業務は3つあります。第一に、AIを使いこなすために、媒体が推奨する最新の設定や、複数アカウント運用から抽出された知見を提供することです。第二に、広告運用の管理画面をクライアントに共有し、数字変化とその原因を理解できるように説明責任を果たすことです。第三に、広告運用の各種設定作業をアウトソーシングすることです。これ以外の無駄な業務を代理店に押し付けることをやめ、Win-Winの関係を築くことができれば、運用成果が高まり、将来的にはマージンの交渉も可能になるでしょう。
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2)要件定義の内製化と、社内説得マテリアルの収集で人材コストを削減する
デジタルマーケティングの人材単価は高騰し続けており、良い人が全然採用できないという相談をよく受けます。たとえ採用できたとしても、全くワークせずに1年以内に退職してしまうという事件もよく見かけます。しかしこうした課題の本質は、欲しい人材の要件が間違っていることに他なりません。
例えば「マーケティングを推進したいので、CMOを採用したい」と相談されることがよくありますが、これは一番失敗しやすいパターンの一つです。マーケティングというよくわからないものは、専門家に丸投げしたいという、担当者の思考停止が透けて見えます。マーケティングと言っても、目的・論点・要件などを整理する業務、社内を調整する業務、専門性の高い運用業務、汎用性の高い運用業務など、幅広い業務内容が存在します。
人材戦略を立てるには、まずプロジェクト責任者が必要な業務と人材要件を整理しなければなりません。従業員に任せる仕事、業務委託に任せる仕事、専門企業に任せる仕事など、業務内容によって最適解は異なるでしょう。本稿では特にコスト削減に影響を及ぼしやすい「要件定義の業務」と「専門性が高く頻度の低い業務」について言及します。
またマーケティング人材を語るうえで見逃されがちなのは、社内調整の難易度です。マーケティング業務を推進するためには、幅広い部署・役職の人たちとのコミュニケーションが不可欠です。どれほど優秀な人材を外部から採用したとしても、社内調整の難易度が高すぎれば、パフォーマンスを発揮することはできません。また社内調整にばかり時間を使っていれば、人材コストを浪費してしまいます。人材採用や育成と並行して、社内調整の負荷を下げる努力も「人材戦略」の一つとして向き合う必要があります。
2-1)要件定義を外注せず、社内の人材に任せる
「要件定義」とは、システム開発やWebサイト制作が始まる前に、顧客視点や運用視点を踏まえて、必要なUIや機能を明らかにする仕事です。要件定義で失敗すれば、不要な機能に多額の開発費を投じることになり、開発したものは誰にも使われず廃墟になります。中長期の開発プロジェクトにおいて「要件定義」より重要なものはないと言っても過言ではありません。
しかし「要件定義」という業務領域は、ポテンヒットのようなもので、誰一人としてボールを持っていないことがよくあります。「要件定義」の期間をほとんど設けておらず、いきなりシステム導入や機能開発から始めるようなプロジェクトも多いのが現実です。
要件定義がよく放置されるのは、ベンダー側から見て、大変なわりに儲からない「おいしくない案件」だからです。要件定義には、個社の業務内容を細かく把握し、それらを整理するという泥臭く時間のかかる業務が不可欠です。さらに要件定義は、システム開発と異なり資産計上しづらいため、見積もりを低く出さざるをえないというデメリットもあります。汎用性の高いシステムをできるだけ高額で提供したいベンダーからすれば、できるだけ避けて通りたい業務であることが分かるでしょう。
要件定義を引き受ける外注業者がいるとすれば、コンサルティングファームくらいのものです。しかし彼らは決して、特定のシステムについて専門的な知識を持っているわけではありません。毎回ゼロベースで思考して、ロジカルシンキングから答えを導いてやるという胆力を持って仕事に臨んでいるだけです。私も要件定義のコンサルティングを担当することがありますが、聞いたこともないシステムについてGoogle検索で情報収集した翌日に、ドヤ顔で提案するといったことが日常茶飯事です。極論すれば、「要件定義」とは、誰でも自分でやりきる覚悟を持って情報収集して、思考を重ねればできる業務なのです。
以上より「要件定義」は社内の人材が担うべきだと私は考えます。現状業務フローの棚卸し、理想的なユースケースの洗い出し、関係部署との調整、既存顧客の理解などの業務は、会社の内情に精通している人物ほどスムーズです。コンサルタントに依頼するにしても、丸投げするのではなく、自分が作った要件のレビュー/整理/壁打ちや、第三者視点でのお墨付きをもらうことに限定して任せるべきです。
しかし「社内に任せられる人材が思いつかない」「思いあたる人材はいるが、工数が足りない」というケースも多いでしょう。中小企業で人材が少ない場合、「要件定義」は経営者が担ってもおかしくない業務です。大企業でも事業責任者クラスが担うべき業務です。こうした希少な人的リソースを使う場合でも、やはり外部に丸投げするのではなく、論点整理と全体構造設計だけは社内で作りきり、外部パートナーには壁打ちやドキュメント化だけ任せるような分担をオススメします。
「要件定義」の内製化は、ベンダーやコンサルティングファームへの外注コストを下げるだけでなく、無駄なシステム開発による損害をなくすことができるため、コスト削減効果が最も大きい人材戦略の一つだといえます。
2-2)専門性が高く頻度の低い業務は、スキルの高いフリーランスに任せる
要件定義とは異なり、むしろ外部に委託した方が良い典型例は「専門性が高く」「頻度の低い」業務です。例えば、少額の広告運用、SEOのアルゴリズム解析、SFAやMAの設定変更、HTMLの編集、利用規約の変更などが該当します。
これらの業務は、専門性が高く一朝一夕にスキルを獲得できないうえ、頻度が低く一度覚えても忘れやすいため、インハウス化するのは非効率です。コストを削減するために、何でもインハウス化しようという方針は間違っています。こうした業務だけを、複数企業で支援している外部業者に委託した方が遥かに効率的です。
さらに言えば、スキルの高いフリーランスに任せるのが、直近は最もコストパフォーマンスに優れています。直近1〜2年のコロナ禍でリモートワークが一般的になり、副業・フリーランスで働く人材が増えています。単一の業務であれば、専門法人に任せるよりも、個人に委託した方が安価かつ柔軟な対応を期待できます。加えて「優秀な個人を指名できる」「短期契約のため万一ミスマッチが起きてもリスクが低い」などのメリットもあります。
スキルが高く信頼できる個人は引っ張りだこですが、副業・フリーランス向けの人材エージェントも複数台頭してきているため、以前よりはマッチングが容易になっています。
2-3)社内調整コストを下げるために「説得マテリアル」を収集する
前述の通り、優秀な人材のパフォーマンスを最大限発揮するためには、社内調整の負荷を下げる努力が欠かせません。社内調整のための「説得マテリアル」には下記のようなパターンがあります。
まずは顧客のリアルな情報です。定量アンケート結果や、定性インタビュー結果を集め、社内説得に用います。極端に言えば、社内をどのように説得したいかをあらかじめ整理し、そのための説得材料を収集できる調査を設計します。もちろん恣意的に結果を操作するわけではありませんが、知りたいことなくして調査は成立しません。定期的にアンケートやインタビューを実施できるような業務フローを構築しておけば、好きなときに好きなだけ顧客情報を収集できるようになります。
次に成果が出たという実績です。わずかでも構いませんので、売上増加やコスト削減に効いた事例を集めます。当社ではこれを「Quick Win」と呼んでおり、短期かつ確実に成果を生み出せる施策パターンを用意しています。成果が出れば信頼を獲得できますので、これを社内調整のきっかけに活用します。
最後に権威者のお墨付きです。説得したい部署の元責任者を調整役にアサインしてもらえれば、社内調整は非常にスムーズです。他にも、私のような外部のコンサルタントをお墨付き担当として雇い、言わせたいことを第三者視点で語ってもらうのも有効です。コンサルタントの作業が発生する業務よりも、お墨付きを与える口先だけの業務の方が、コストを最小限に抑えて有効に活用できます。
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3)顧客視点の超具体化で、未来投資のコストを削減する
最後に未来投資のコスト削減について論じます。デジタルマーケティング業界では、バズワードが絶えず生まれては消えていきます。その大半は無視して構わないものですが、いずれも今から着手しておかなければ、競争から取り残されるリスクがゼロとはいえません。
バズワードの多くは、これまであったものを真新しく言い換えることで稟議を通す「掛け声」でしかありません。稟議を通したければ「掛け声」に乗ったフリをすれば良いでしょうし、必要ないならば黙殺すれば良いだけです。
一方で真に新しいバズワードには、理想的な使い方がまだ存在しません。事例を漁っても自社にぴったり適用できるようなものは見つからないはずです。バズワードのコンセプトドリブンで、机上の空論から未来投資をするのは、宝くじに多額のお金を投じるようなものです。期待値はゼロに等しいでしょう。
未来投資において、できる限り失敗を避けるには、顧客視点で超具体的なユースケースを想定するほかありません。必要に応じて、実際にプロトタイプ(紙芝居やPowerPointでも構わない)を作って、顧客に見せて反応を確かめるべきです。
3-1)Web3やメタバースは顧客が喜ぶ設計になっているか?
最近はWeb3やメタバースの設計について相談を受けることが増えました。真に新しいバズワード故にやむを得ませんが、いずれも手段ありきで、何にだったら使えるかという議論になりがちです。
Web3やメタバースは、ロイヤルティの高い顧客やコミュニティに向けた技術です。Web3ならブロックチェーン技術を用いて、これまでのWebらしからぬ「コピーできない」資産を作り上げることで、ロイヤル顧客の所有欲を満たします。メタバースであれば、リアル以上にラグジュアリーな空間を作ることで、顧客の満足度を高めます。
まずはじめに考えなければならないことは、そのWeb3やメタバースによって、ロイヤル顧客がどれだけ喜ぶか?ということです。よくある駄目なメタバースの議論では、リアルの店舗をそのままデジタルに置き換えるというものです。特に関与度の低い商材では、そもそもロイヤル顧客を想定した顧客接点が少なく、メタバース化したところで顧客の満足度は変わりません。
ロイヤル顧客が求めるクオリティを提供できるか、プロトタイプをいくつも用意して反応を見ましょう。そうすれば単に「作っただけ」に終わらない有効な投資になるはずです。
3-2)CDPの活用はメルマガよりも顧客の反応を期待できるか?
CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)はこれまであったものを真新しく言い換えただけのバズワードです。ビッグデータ、CRM、DMPなどと方向性は変わりません。しかし、前述の通り顧客のデータ共有と活用は非常に重要なミッションのため、あえてバズワードに乗っかって予算を獲得しても良いでしょう。CDPを有効活用できなくても、全社の顧客データを共有・一元管理できれば儲けものです。
CDPの一番の強みは、顧客データをリアルタイムに使って、接客を改善できることです。例えば、あるお客さんからコールセンターに入電があったとき、過去の接客履歴を一覧できれば、オペレーターは優れた応対ができるでしょう。こうしたリアルタイムの接客改善こそがCDPの真骨頂です。
逆に「リアルタイム」の必要性がないなら、CDPは不要です。例えば、年に1回顧客データを分析して経営判断に用いるだけなら、ローデータを抽出して、データ分析アナリストに任せた方が良いでしょう。
さらに過去の顧客データから接客を変える必要性がないなら、CDPの出番はありません。CDPを用いて過去の顧客行動に応じたメールを配信したとしても、全員に一斉配信するメールマガジンと効果が変わらなければ、意味がありません。これではメールの種類が増えるばかりで、無駄なコストを掛けることにほかなりません。
CDPを導入する前には、超具体的なユースケースを洗い出す必要があります。さらにもし可能ならば、手動でCDPと似た取り組みを行ってみて、その効果を推し量ることもオススメです。特定の行動をしたユーザにだけメールを送ってみて、その反応率を検証するなど、可能な範囲でCDPの導入効果を見極めるのです。
3-3)AIの学習をショートカットする顧客仮説はあるか?
AIブームはやや落ち着きましたが、未来への投資として決して忘れてはいけない領域です。AIがやや下火になったのは、分析してみたけど何も分からなかった、アクションにつながらなかったなどの落胆によるものでしょう。しかし多くの企業は、たまたま手元にあったデータをお遊び半分で解析しただけで終わっており、そもそものアプローチが間違っていると言わざるを得ません。
カスタマージャーニーの全体像を把握できるくらいに大量のデータを保有していれば、AIによる解析でかなりのことが分かるはずです。GAFAMほどのプラットフォーマーであれば、こうしたデータにアクセスすることも可能かもしれません。しかし日本にある単一の企業が持ちうるデータは、顧客行動のほんの一握りに過ぎません。私がコンビニで水を買ったとしても、その理由は「たまたま棚で目立っていたから」「飲み会後の二日酔いを防ぎたかったから」「待ち合わせに遅れそうで走ったから」など様々です。しかしポスレジのデータには「30代男性」という情報しか入りません。このお粗末なデータだけで、どのような水を開発すればよいか、どのようなプロモーションが最適か、どこで売ればよいかなど、示唆を出せるはずがありません。
日本企業がAIを使いこなすためには、顧客行動に基づくルールベースの併用が不可欠です。少ないデータ量でも解析精度を高めるには、人間が的を絞ってあげる必要があります。顧客行動に詳しい営業担当者へのヒアリングや、顧客行動を明らかにする調査をもとに、AIが学習すべき領域を絞っていくのです。さらに重要な顧客行動の中で、足りないデータがあれば追加で収集することも必要です。AI活用においても、顧客視点の超具体化によって価値ある発見が生まれるのです。
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終わりに
2023年に限らない継続的な論点も挙げましたが、いずれも景気後退期のコスト削減を論じるうえで検討すべきテーマです。マーケターが安易なトレンドに流されず、本質的に価値のある活動を実践できるように、株式会社WACULは情報発信を続けていきます。
WACULでは戦略設計からデータ分析・改善提案、SEO対策、デジタル広告運用、人材獲得、クリエイティブなど、デジタルマーケティングで成果を最大化するためのソリューションが揃っています。2023年にデジタル活用を戦略的に実行し、成果を出したい方からのご相談をお待ちしています。
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