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2023.06.27

弊社WACULは「デジタルマーケティング診断」を通じて、数多くの広告アカウントに最適予算や改善策を提案してきた。そこでよく見受けられる課題の一つは、「キャンペーンや広告グループが細分化され過ぎている」「入札戦略をこまめに調整しすぎている」ことにより、機械学習がうまく進んでいないことである。
「機械学習を利用した自動最適化」は、成果を伸ばすうえでGoogleも公式に推奨していることだ。そこで今回は、Googleの検索連動型広告(以下リスティング広告)において推奨設定がどれほど反映されているのかを調査した。
10年ほど前、アカウント構成は「1キーワードにつき1広告グループ」が主流だった。
この構成には「検索語句に対して最適な広告を出せる」というメリットがあったが、1広告グループあたりのインプレッション数が少なく広告が評価されづらい(すなわち広告ランクを上げづらい)、広告グループが数百数千に細分化され運用に膨大な手間がかかるなどの大きな課題もあった。
そこで2013年、Googleは「Hagakure」と呼ばれるアカウント構成を推奨。「Hagakure」は、機械学習の進化によって広告グループを分けずとも検索語句に対して最適な広告を出せるようになったからこそ実現した、「広告グループを最小限にまとめるアカウント構成」である。

「広告グループを最小限にまとめる」とはすなわち、「同アカウント内の広告グループ間でターゲティングと広告文に被りがない状態を作ること」を指す。
広告カスタマイザを使えば広告文を動的に出し分けることができるため、「軸キーワードごと」に広告グループを分ける必要はない。「ランディングページごと」にまとめるとよいだろう。

その後も、Googleは「Hagakure」構成をベースにした運用方針をたびたび発表した。
2016年発表。CPAの最適化など「効率」を重視する運用方針。自動入札の活用、レスポンシブ広告の活用、広告のローテーションをコンバージョンあるいはクリックで最適化などを推奨する。
2019年発表。GORINの効率は維持しながらも、新たなユーザへのリーチを広げることで「効果の最大化」を両立させる運用方針。データドリブンアトリビューションの活用、動的検索広告の活用などを推奨する。
いずれも「人間が手動で最適化させる」のではなく、「機械学習を利用して自動で最適化しよう」という趣旨のものである。
弊社WACULはこれらGoogleの方針を踏まえたうえで顧客のWeb広告運用支援をおこなっているが、現場で頻出するアドバイスは以下のとおりである。
インプレッションとコンバージョンの学習データを集中させるため、キャンペーンや広告グループは最小限にまとめよう(キャンペーンは予算やターゲティングを分ける必要がなければまとめる、広告グループは上記のとおり)
手動入札ではなく、自動入札を活用しよう
広告クリックからコンバージョンまで日数がかかるケースを加味すると、自動入札は「30日間」様子を見てから評価することをGoogleも推奨している。成果がイマイチだからといって焦って入札戦略を調整してはならない
レスポンシブ広告は一意の見出しと説明文をできるだけ多く追加し、あとはGoogleに最適化してもらおう。なお、「検索結果の上部において30日間で2,000回程度表示される」までパフォーマンス結果は表示されない。そこで「低」評価を受けた場合にのみ、文章を差し替えよう
検索キーワードは「部分一致」で登録し、あとはGoogleに最適化してもらおう。ただし、商品に関係のない検索語句はこまめに除外すべきである
広告グループは最小限にまとめるべきであり、「軸キーワードごと」より「ランディングページごと」に分けるほうがよい。しかしながら「ランディングページごと」派は約3割に留まった。「実際に成果が出ているから」といった理由で、「軸キーワードごと」に広告グループを分けている運用者がいまだ半数を占めている。
入札戦略は30日以上様子を見て良し悪しを判断することが推奨されているが、17.7%が「隔週に1回以上変更する」と回答した。成果を改善するためとはいえ、一部の運用者は調整過多状態にある。
「商品に関係ない検索クエリの除外」はこまめにおこなうべきだが、3ヶ月から半年に1回しか除外しない、あるいはほぼ除外しないと回答した運用者が21.0%存在した。こちらは逆に調整過少状態である。
「別の代理店から引き継いだときにGoogleが推奨するアカウント構成へ変更したことがある」と回答した代理店運用者は65.6%存在し、その結果「成果(コンバージョン単価)が改善した」割合は81.0%だった。アカウント構成が成果に及ぼす影響は大きいと言える。
成果改善のため運用者が意図してGoogleの推奨しない調整を加えた場合、成果は「改善した」ケースの方が多かった。Googleの推奨設定といえども、状況によっては最適解ではないと言える。一方で顧客の希望でGoogleの推奨ではない設定を反映させた場合は、成果は「変わらない」あるいは「悪化した」ケースの方が多かった。
Googleリスティング広告を現在運用している方を対象に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼した。


また、Q1〜13に関しては現在運用しているなかで最も月額広告費が高く手間をかけて運用しているアカウントについて回答してもらった。



Googleの推奨は「広告グループは最小限にまとめるべき」であり、軸キーワードごとよりランディングページごとにまとめるほうがよい。しかしながら、「軸キーワードごとに分ける」派が半数を占めていた。「1キーワードごとに分ける」人もまだわずかに存在している。

「軸キーワードごとに分けるべき」と考える理由として最も多いのは、「実際にその設定で成果が出たから」(64.5%)。自身の経験則が強いと言える。
なお、「 “Googleが推奨する設定だから” 軸キーワードごとに分けるべき」と考える人が16.1%存在しており、そもそも推奨設定の認識がズレていることがうかがえる。すでに成果が出ている場合においても、最新の推奨設定に変えれば、さらに成果を伸ばせる可能性があるだろう。
一方で「ランディングページごとに分けるべき」と考える理由は「実際に成果が出たから」(37.5%)、「Googleが推奨する設定だから」(25.0%)、「上司/先輩からそう教わったから」(20.8%)。正解を踏襲しようという意識がうかがえる。



入札戦略の機械学習を進めるためには、当然ながらキャンペーンも最小限にまとめたほうがよい。しかしながら、入札戦略のA/Bテストを実施するために「入札戦略のみ異なるキャンペーンが存在する(あるいは存在したことがある)」と回答した人は29.1%存在した。
また、A/Bテストの末キャンペーンを統合した結果、成果は「ほぼ変わらなかった」という回答が最も多かった。

レスポンシブ検索広告は、アセットの登録数が多いほど的確な広告を生成する選択肢が増え、成果を伸ばせる可能性が高い。しかしながら、上限いっぱいに見出しが登録されているケースは46.8%に留まった。
なお、上限いっぱいに登録できていないのは「広告主が自分で運用している場合」「予算月500万円以上の場合」に集中しており、工数の都合上登録しきれていないと思われる。

各運用業務の頻度については、以降の回答が最も多く票を集めた。
入札戦略の変更 | ほぼ変更しない |
|---|---|
広告文の追加 | 3ヶ月に1回 |
広告文の停止 | 月に1回 |
キーワードの調整 | 月に1回 |
検索クエリの除外 | 週に1回 |
なお、入札戦略は30日以上様子を見て良し悪しを判断することが推奨されているが、17.7%が「隔週に1回以上変更する」と回答した。調整過多状態と言える。
一方、「商品に関係ない検索クエリの除外」はこまめにおこなうべきである。しかし3ヶ月から半年に1回程度、あるいはほぼ調整しないと回答した運用者が21.0%存在した。こちらは逆に調整過少状態である。





どの運用業務も、基本的に「成果が悪化したとき」に発生している。
Q14以降の質問は「広告代理店」側の運用者にのみ回答してもらった。


「別の代理店から引き継いだときにGoogleが推奨するアカウント構成へ変更したことがある」と回答した代理店運用者は65.6%存在し、その結果「成果(コンバージョン単価)が改善した」割合は81.0%だった。
また、上記のデータは「65.6%はもともとGoogleが推奨するアカウント構成ではなかった」「そのせいで成果が出ていなかった」と捉えることもできる。


改善策を示すため、Googleの推奨設定ではないとわかっていながらも調整を加えた場合、「成果は改善した」という回答が最も多かった。Googleの推奨設定といえども、どのアカウントにとっても常に最適解であるとは断言できない。




顧客から「Googleの推奨設定に当てはまらない変更要望」をもらったことがあると回答した代理店運用者は43.8%。しかたなくその要望を反映させた場合、成果は「変わらない」あるいは「悪化した」ケースの方が多かった。
また、Q19・Q20の結果から「いただいた変更要望はGoogleの推奨設定ではない」と顧客にきちんと説明し、反映を防ごうと努力している運用者の様子がうかがえる。
別の代理店から引き継いだときにGoogleが推奨するアカウント構成へ変更した結果改善したケースは約8割と、アカウント構成が成果に及ぼす影響は大きい。また、そもそも引き継ぎ時にアカウント構成の見直しをおこなったことがある運用者が65.6%もいることを踏まえると、まだまだ多くのアカウント構成が最適ではない状態であると予想される。構成を変更すると再度学習期間に入ってしまいロスが多いため、今後は最初からGoogle推奨の設定にすることを意識しよう。
入札戦略は30日以上様子を見て良し悪しを判断することが推奨されているが、17.7%が「隔週に1回以上変更する」と回答。一部の運用者は「調整しすぎ」状態にある。アカウント構成同様、入札戦略も変更すると再度学習期間に入ってしまいロスが多い。統計的に優位な変化が起きた場合、あるいは「競合が値引きしている」など明確な変動要因がある場合はすぐに調整すべきだが、それ以外はグッとこらえよう。
運用業務のなかでも「商品に関係ない検索クエリの除外」はこまめにおこなうべきである。しかし3ヶ月から半年に1回程度、あるいはほぼ調整しないと回答した運用者が21.0%存在した。検索クエリのチェックは少なくとも週次の定例業務としておこなうべきである。
広告グループを分けたり、入札戦略を変更したりすることで成果が改善するケースはもちろんある。現に代理店の運用者がGoogleの推奨ではない調整を意図して加えた結果、成果は「改善した」ケースの方が多かった。一方、顧客からの希望でしかたなく推奨外の調整を加えた場合は「改善しなかった」ケースの方が多い。Googleの推奨設定は守破離の「守」である。代理店に依頼している広告主も、型を破る前にまずは基本を理解しよう。
Google広告に限らず、Web広告の世界においていまや当たり前となっている機械学習の活用ですが、これには学習元となるデータが不可欠です。Googleの検索連動型広告で、部分一致キーワードによるスマート自動入札キャンペーンの促進が推奨されているのは、広告の表示機会を最大化することで、アルゴリズム学習スピードを上げ、広告パフォーマンスを最大限高めたいという意図が背景にあります。
一方で、Googleの推奨通り全項目を設定することが、現時点では必ずしも正解ではないことも気に留めておくべきではないでしょうか。広告主の広告予算や市場におけるポジション、競合他社の動きや経済状況によって、その時点で取るべきアクションは日々変化していきます。
広告代理店のWeb広告運用者は、専門性をもって広告プラットフォームの推奨設定を理解したうえで、クライアント(広告主)の状況を考慮に入れ推奨設定の実装有無を判断すべきでしょうし、広告主のWeb広告担当者は、自社の置かれている状況と推奨設定のバランスを踏まえ、その時々で最適なアクションを考えていく必要があるのではないでしょうか。
広告の成果が落ちると、広告主側の担当者は非常に焦る。なぜなら社内に原因と解決策の説明を求められるからだ。広告主は、うまくいくかどうかは別として、何でもいいからすぐにアクションしたいと思うものだ。
この時、広告主側が媒体の「推奨設定」を理解していないと悲惨である。「推奨設定」から外れた根拠のないアクションを選択してしまう。根拠を持って、あえて「推奨設定」から離れるなら良いだろう。しかし広告の成果が落ちる原因は不明瞭なことが多く、根拠を持ってアクションできるケースばかりではない。まだデータ量が少ないうちは、アクションせずに推奨設定のまま「待つ」ことも有効な選択肢である。
広告主が「推奨設定」を理解せずにアクションを求める時、「YES」しか言わない御用聞きの代理店が付いているとさらに悲惨である。「推奨設定」の理解を促し、広告主の暴走を止めるのは、代理店の重要な仕事だ。この防波堤が崩れると、広告主のアカウントはどんどん「推奨設定」から乖離していく。結果的に、数字はどんどん悪化し、それがアカウント設計の負が原因であることに気づかない。
こうした状況から、成果の悪化や、担当の力不足が原因で、代理店のリプレイスが発生する。新しい代理店からすれば「推奨設定」から大きく乖離したアカウントを見て「伸びしろだらけです」と提案してくるだろう。実際に「推奨設定」に近づけるだけで、CPAは改善する。
しかし上記のような不毛なサイクルは断ち切るべきだ。広告主は推奨設定を理解し、過度に焦らせるような報告義務をなくす。代理店は広告主と戦ってでも、真に価値のある提案をする。広告にかかわる全てのプレイヤーの意識を改革し、運用の無駄を排除していきたいものである。
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