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2020.05.20

安倍晋三首相は4月7日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく初の「緊急事態宣言」を発令した。その最初の期限は5月6日までの1ヶ月間というものであった。しかし、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の新規の感染者数は減少の傾向にあるものの、累積の感染者数は依然増え続けており、緊急事態宣言は(一部地域は5/14時点で解除となったものの)5月31日まで延長されることとなった。この緊急事態宣言により、企業の多くは様々な影響を受けており、経済の停滞を危惧する声も多く聞かれた。
そんな中、企業は当初、リモートワークへの移行作業がメインとなり、通常の経済活動は自粛および様子見の傾向があった。特に「密閉」「密集」「密接」の3要素が絡む「3密業界」と呼ばれる業界に属する企業は、大きなダメージを受けている。一方、リモートワーク関連の一部企業は特需の風が吹き、急速な成長を見せた。たとえば、Web会議ツールであるzoomは、デイリーのzoomミーティングへののべ参加者数が、コロナショック以前では1,000万人ほどだったものが、4月下旬には3億人となるほどまで急拡大しているのだ。こうしたリモートワークへの急対応の中で、苦しい業界は足元のリカバリー策の検討を、追い風をうける業界は急増する需要にいかに対応するかの検討をと、業界別に二極化が見られたようだ。
当社は「AIアナリスト」を2020年4月30日現在で、日本のWebサイトを中心に3.2万サイト以上に提供し、1ヶ月で約47億セッションのデータを保有している。そこから見えるデジタルマーケティングの動向について、WACUL Technology&MarketingLab.からレポートしていこうと思う。
当社の提供する「AIアナリスト」では多数の企業のアクセス解析データの分析を行っている。そこには、訪問数だけでなく、CVに至るまでのビッグデータが存在する。その中で、今回は特にコロナ禍で影響を受けたであろう業界やセグメントの中で、コンバージョンポイントが極端な事例ではない100サイトをピックアップして、分析を行ったので、その結果を報告したい。
第1回の本レポートにおいては、訪問数およびCVRの推移を、業界およびセグメント別に見ていく。各業界およびセグメントについては複数社の数値を合算し、2019年2月を100とする形で指数化してる。
各社のWebサイトのコンバージョン(CV)は、資料請求やお問い合わせなど、様々ではあるため、平均値はあくまで参考データとなる。ただ、今回集計対象としたWebサイトのCVに違いはあれど、ざっくりとしたトレンドは見てとることができるだろう。
B2Bクラウドサービスは、図1のとおり150ポイントと、コロナが中国で発生し、ニュースになりだした12月の100ポイントから2020年2月には前年比約30%の増加となった。また、2020年4月には前年比では倍増と、一段の加速を見せており、もっともコロナショックの追い風を受けた業界と言える。
また、図2のように、それによってどれだけのコンバージョンの獲得に至ったのかも見ている。こちらを見ると通常、年度末である2-3月がもともと繁忙期であるものの、2020年は訪問数の急増もあり、CVRは微減傾向にある。また、通常は閑散期とも見える4月は、訪問数の急増をものともせず、高いCVRを保っていることが分かる。これは通常のサイクルとはまったく違う動きが4月にも起こっていると想像される。


B2Bクラウドの中でも、遠隔会議システムは図3のとおり、コロナの影響が色濃く出始めた2月に250ポイント、3月に500ポイント、そして足元の4月には1,000ポイントを超える水準まで伸びている。この遠隔会議システムにはzoomのようなリモートワーク中でもWeb会議を行えるシステムであったり、PCを使って電話をすることができるIP電話のシステムであったりが含まれている。こうした、遠隔での会議や通話に関するクラウドシステムがとても好調に推移している。
また、CVRは訪問者の急増した3-4月と100ポイントを割り込んでいるが、4月には77ポイントまで戻しており、興味関心の度合いは訪問数の急増さえももろともしないレベルとなっていることが分かる。


HR-Techはもともと「働き方改革関連法案」の流れの中で、2018年に10年ぶりに労働基準法が改正され、2019年4月1日から施行されたことを受け、盛り上がりをみせていたセグメントである。この改正を受け、「客観的な記録による勤怠管理」を強く求められることになったため、2019年は総じて好調なセグメントであった。勤怠管理に限らず、人事労務系のSaaSサービスのテレビCMをよく見るようになったと感じられている方も多いことだろう。
このセグメントでも、図5のとおり、その盛り上がりが落ち着きを見せていた年末から4月にかけて急速に訪問者数を伸ばし、ここ1年で最高を記録していることがわかる。

グループウェアはSlackのようなチャットサービスなど、メールに置き換わるようなものを集めたセグメントだが、こちらは4月に急速に伸びている。特に4月の伸びが顕著であるのが特徴で、コロナショックの長期化を感じとった企業が、これまでのコミュニケーションスタイルの継続が難しいと考えたものと思われる。
また、図6のとおり、グループウェアに関してはCVRも落ちることなく、訪問数の増加がそのままCV獲得につながっていることが分かる。


営業・マーケティング系のクラウドツールは、緩やかに需要の増が2019年央から見られていた。これは営業・マーケ系のセグメントが2019年に盛り上がりを見せ、各社が積極的な広告展開などを進めた年で、それによって興味関心の底上げがあったためと思われる。
そんな中、緊急事態宣言がでたことで、さらにその成長が後押しをうけたように見える。外出自粛に伴うリモートワークの進展などから、営業担当者は外訪が難しくなり、またマーケティングを担う展覧会などのイベントも中止に追い込まれている。そのため、デジタルは新たなリード獲得と契約獲得の重要なツールとなったことから、4月は大きく伸長したと考えられよう。

コロナショックが追い風となったB2Bクラウドと対照的に、向かい風となって甚大な被害をもたらされた業界のひとつが旅行業界である。外出自粛となれば、移動手段である交通も、移動先での宿泊、アクティビティなどすべてのセグメントが大きな影響を受けている。
旅行業界に関連するWebサイト全般(ポータル、交通、施設、宿、旅行代理店)は、2019年12月には116ポイントあったものが、みるみると減少。4月には40ポイントまで減少している。この2020年1月の微増さえ、キャンセルなどを含む情報収集であった可能性は高い。
また、CVRも低下傾向にある。これまで100ポイントを割り込むことのなかった旅行業界も、2月と4月は100ポイントを割り込むなど、予約などのコンバージョンに至るまで、足はさらに遠のいている。


最も明確にコロナショックの悪影響がみられるのが、旅行代理店である。訪問者数は4月に22ポイントまで落ち込んでいる。これは前年同月比で8割減である。通常であれば、ゴールデンウィークに向けて人がアクセスする時期なのだが、今年は残念ながらまったくその傾向がない。
CVRも同様に、4月には50ポイントを割り込むなど、明確に落ち込みを見せている。訪問者数が8割減、CVRが約半減とすると、CVは9割減となる。明確に収入源を奪われている様子が見て取れる。


多くのレジャー施設は、緊急事態宣言以降は閉鎖を余儀なくされている。そのため、従来通りの営業は出来ていない。Webサイトへの訪問数も、3月に62ポイント、4月には34ポイントと月を追うごとに急減した。また、CVRについては好調だった2019年下期に対し、2020年1月以降は低下の一途を辿っている。緊急事態宣言の終了の時期が読めないため、施設予約やチケットの先行販売といったものも実施できない状況のWebサイトが多く、CV獲得以前の問題になっている。


今回は特定分野に注目して、市場動向を探った。今、嵐の中にいて「自社の立っている場所」が分からない企業は多いだろう。そういった中で、今回取り上げたセグメントにいる方は是非自社のトレンドと重ね合わせてほしい。そして、もしくは出遅れているのか強い追い風をうけて力に変えられているのか、ぜひみずからの立ち位置を確認してほしい。
本レポートにおいてデータ収集を行った100サイトの分類(業界およびセグメント)は以下の通り

※この研究レポートはWACUL社提供のAIアナリストに登録されたサイトデータを元に作成されました。
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