お問い合わせ
2019.05.27
-アパレルECの集客における流入元・入口ページについての調査
ECの市場規模は近年も拡大しており、特に日本国内のBtoC-ECの市場規模は前年比で9.1%増加(16.5兆円)と拡大が続いている(図表1)。
その中でも、特に家具家電や食料品、医薬品等に代表される物販分野が大きな比率を占めている(図表2)。物販分野におけるEC化率は5.79%。これも過去5年間、年率0.3pt以上の上昇ペースを維持している。


そんな中、ECサイトの売り上げは集客・コンバージョン率・注文単価の3要素のうち、近年は集客に関しての懸念が増している。その背景として、以下の点が挙げられる。
第1に、参入障壁の低下による競争激化がある。大型モールサイトが実施するサービス利用料無料化等のキャンペーンにより、大きなカスタマイズを必要としないECサイトの構築のハードルは下がっている。市場が拡大し、システム構築が容易になれば、参入者が増えるのは必然である。特に中小規模のECサイトやこれからECを展開しようとしている事業者は一般的に比較的低コストで集客可能なSEOに注力すべきで、競争が激化しているとみることができる。
第2に、Googleの指針への対応に迫られていることである。Googleは年に数回、コアアルゴリズムアップデートを行っており、直近では2019年3月12日(現地時間)に「March 2019 Core Update」という名称のアップデートが実施された。「ユーザー志向」を標榜するGoogleにとって、「ユーザーの要求にそぐわないコンテンツ(網羅性が低いコンテンツなど)」の検索順位は今後低くなるだろう²。
物販ECの一例として、本調査ではアパレルECにフォーカスした。アパレル産業の市場規模は1兆6,454億円で物販分野では最大である(図表3)。かつ近年のアパレル業界ではレコメンド機能やオンライン測定機能といった個人向けサービスが発達し、SNSを利用したインフルエンサーマーケティング等の販促手法も積極的に取り入れられている。BtoC-ECの一例としてアパレルEC業界を調査することで、他の業界にも生かせる示唆が得られることが期待される。

アパレルECの集客ではSEOが重要である。WACULの提供する、AI(人工知能)がWebサイトの診断から改善提案まで自動で行う「AIアナリスト」に登録されたアパレルECサイトの流入元比率を調査した。その結果、アパレルECにおいて「自然検索」が流入元の30%を占めていたことがわかった(図表4)。これは有料検索や外部ページからの流入と比較すると依然大きい割合である。
一般的な相場観として、SEOはリスティング広告やディスプレイ広告、コンテンツマーケティング等の集客手段に比べて安価で実施可能だ。そのため、大規模なECサイトを除き、依然として大多数のアパレルECにとってSEOは集客の柱なのである。

Webサイトの改善について客観的なデータ分析を行えている会社はほとんどなく、経験則に基づいて「なんとなく」決められていることが多い。そこで本調査においては、WACUL AIアナリストに登録されている約28,000のサイトの中から、業界を絞ってサイトデータを抽出し、横断的な分析を行った。
調査の流れは以下の通りである。
アパレルECの流入元・入口ページ傾向を踏まえ、現実にトラフィックが低下しているかを調査
トラフィック低下の要因、および課題を分析
課題解決のためにとるべき方法論を提示
また、調査に先立ちアパレルECサイトを6つに分類した(図表5)。一言で「アパレルEC」といっても顧客ターゲット・販売形態・商品ジャンル等、様々な軸で切ることができる。類型ごとに異なる勝ちパターンを用意すべきであるからだ。
今回の分類では、商品ラインアップ・販売形態に着目し、顧客ターゲットをEC利用経験率が高い20代・30代の若者としているサイトに絞っている(図表6)。この分類により、各ECサイトが抱える課題の抽出および改善するための打ち手の立案がより正確になるはずだ。
なお、今回の調査では、アパレル以外の取り扱いも含む総合通販型・流通系通販型は除き、各カテゴリの中から偏りが出ないよう20サイトを抽出し、調査対象とした。


ECサイトのユーザー側の視点に立った場合、自然検索における入口ページは「トップページ」・「商品一覧」・「商品詳細」の3つに大別される(図表7)。検索ワードにブランド名、企業名やサービス名等を指定する「指名検索」をした場合、主にトップページに着地する。また商品型番を指名した場合は商品詳細ページに訪問する。一方で、特定のブランドやサービスを指定せず、「レディース スカート」のように衣服の一般名称で検索した場合、主に商品一覧ページもしくは商品詳細ページに着地する。

またアパレルEC全体について各パターンの構成比率を調べた結果、「トップページ」と「商品一覧」ページが大きな割合を占めていることがわかった(図表8)。

入口ページの流入比率から、一見するとトップページ・商品一覧の両方に注力すべきと思われる。確かにECにとってトップページは既存顧客の受け皿でもあるため重要だ。また、ブランド直販型のサイト、および大規模な宣伝広告を打つことができる大手ECサイトならば、販促キャンペーンにより新たにブランド名を認知させ、トップページへの指名検索を増やすことができる。しかし、中小規模ECではそういったブランド認知の施策を行うことは予算上厳しいため、SEO強化によって非指名検索から商品一覧へのトラフィックを増やすことに注力すべきだ。
アパレルEC 20サイトの過去2年間の入口ページの訪問数・CVRを計測した。
その結果、調査した20サイト中、半数である10サイトで商品一覧への訪問数が減少しており、「自然検索に占める割合」で比較した場合、2017年から2018年では平均で0.97ptの訪問数減少が見られた(図表9)。

図表10から明らかなように、特に自社で企画・生産したアパレル製品をオンラインでのみ取り扱う「アパレル専門通販型サイト」の減少幅が大きく、流入比率は1年間で約40%減少している。一覧ページの中でも特に「スカート」や「シューズ」といったアパレルの一般的なカテゴリの一覧ページにおいて、トラフィックが減少している傾向がみられた。この背景として、以下の2点が考えられる。

第1に、非指名検索による流入において不利になることだ。独自ブランドと実店舗を兼ね備えた店舗販売主体型ECサイトと異なり、例えばユーザーが「ブランド名 商品ジャンル名」のような組み合わせで検索することを想定すると、認知度が低い専門通販型サイトは検索順位を維持するのが難しい。
第2に、「ユーザー志向」のGoogleが「消費者の選択肢の多さ」を重視していた場合、大型モールサイトと比較して商品数が相対的に少ない専門通販型サイトは検索順位において不利な立場になることは想定される。その結果として、スカートやシューズなどの一般的なアパレルカテゴリの一覧ページにおいてトラフィックが減少しているのではないかと考えられる。
一方、ファッションモール型・店舗販売主体型ECサイトでは大きな減少は見られていない(図表10)。要因として、ファッションモール型ECは商品点数が多いため一覧ページと詳細ページが増え、自然検索からの安定的な流入が発生するのではないかと考えられる。
また店舗販売型EC、すなわち実店舗を持っているECサイトの場合、自ブランドの認知を広めることが容易であり、店舗に出向いたユーザーがネット検索でも「ブランド名」と「商品カテゴリ」の組み合わせで検索するよう仕向けることができる。そのため商品一覧へのトラフィックを上げるのが容易であると考えられる。
一般的に、ECサイトの集客SEOは「商品一覧・詳細ページを増やす」と「サイト構造を最適化する」に分かれるが、大手モールサイトでもない限り商品一覧ページや商品詳細ページを格段に増やすことは難しい。そのため、SEO強化の方向性としては「サイト構造の最適化をする」ということを推奨したい。最適化のための具体的な施策として、検索エンジンが認識しやすいよう、サイト内リンクを張り巡らせたり、適切にカテゴライズして重複を避けたり、といった地道な改善を続けていくことが挙げられる。しかし、そもそもサイト構造への着手も難しい場合であれば、SEO以外に注力する戦略をとるべきである。
ところで、商品一覧ページの平均CVRは0.61%であり、トラフィック比率が30%程度で近しいトップページに比べるとCVRの低さが目立つ(図表11)。これは入口ページの3つの中でもっとも低い。そのため、いくら集客を改善して商品一覧ページへのトラフィックを増やしたとしても、商品購入に結び付けられない、という事態に陥る。

サイトに流入したユーザーのコンバージョン率を改善するという観点で、本調査では経由ページの中でもCVRが高い「特集ページ」に着目した。アパレルECサイトにおける特集ページとは、例えば「タイプ別コーディネート集」や「ブランド別コーディネート集」、「夏服特集」などのページのことだ。通常、トップページから商品一覧ページや商品詳細ページに行き着く経路にあることがほとんどである。その目的は、商品の提案や情報提供を行い、そのページまたはその先のページにおける購買や参加といったコンバージョンを上げたり、コンテンツによってファンを作ったりすることである。
本調査では専門通販型サイトとセレクトショップ型サイトにおいて、流入元は自然検索で入口ページは限定せずに、個別の特集ページを経由した場合とそうでない場合のCVRを計測した。すると、特集ページを経由した場合のCVRが3.15%に対し、経由無しの場合は1.19%(図表12)。特集ページを経由することで約3倍の伸びがみられた。つまり特集ページに注力し、積極的に経由させることでCVRを効果的に改善できることがわかった。

特集ページへの経由を促すためには、特集ページ数そのものを増やしたり、内容を工夫することがまず考えられる。さらに本調査で明確になった、流入比率が高い自然検索からトップページ・商品一覧ページに訪問したユーザーを特集ページへ誘導するのが効果的だと考えられる。具体策として、例えば特集にリンクするバナーを商品一覧ページに増設し、流行に沿った商品提案を行うことで購入率を上げることが可能ではないかと考えられる。
アパレルECの集客で重要なのは商品一覧ページであるが、過去2年間で半数のサイトにて商品一覧ページのトラフィック低下がみられた。
アパレルECの中でも、特にサイト自体のブランド力が弱く、商品数が少ない専門通販型及びセレクトショップ型のサイトにおいてトラフィックの減少が目立った。
ECの集客改善には、商品一覧・詳細ページの拡充だけでなく、「SEOに配慮してサイト構造を最適化する」ことが効果的である。
集客SEOに注力する一方で、商品一覧ページのCVRを高めることも重要。そのために特集ページの経由率を高めるべき。特集ページを経由してもらうことで約3倍のCVR改善効果が見られた。
CVRの改善のためには、商品一覧に限らず、トップページなどトラフィックの多いページから特集ページを経由するよう積極的に促すことが効果的である。
特に中小規模ECサイトの集客はSEOを配慮したサイト構造最適化によって集客改善すべきであるが、CVRが低いままだと改善に限界がある。さらにCVRを高めるためには特集ページを活用すべきであり、継続的な特集ページ制作、および流入を促す施策を打ち出していくべきだ。
調査ツールはAIアナリスト(WACUL)
調査期間は2017年9月-2018年10月
調査対象サイトはアパレル業界のECサイト(20サイト)
CVは「商品購入完了」に設定した。
SEOおよびそれに付随するKPIは通販企業にとっては生命線の一つである。
自然流入ではブランド名やサイト名などのいわゆる指名ワードが占める割合が多いが、これらは既存顧客あるいは顕在化した見込み顧客である可能性が高く、相対的に高いCVRが期待される。逆を言えば、指名ワード流入のCVRが低い場合には注意が必要で、何かしらUX上の課題やサービス設計における問題が内在している恐れがある。また、指名検索のボリュームを増やすには、PRやマスマーケティング、昨今のトレンドでいえばインフルエンサーを活用したSNSマーケティングなどが有益であり、それらの施策のROIを直接のリファラーからだけ計測すると、その効果を見誤るリスクがある。
一方で、指名ワードを含まない所謂一般ワードのSEOを考える際には、レポートにもあるように網羅性、ECでいえば商品数が重要なファクターになっているのが昨今のトレンドである。さらには専門性という軸も影響が大きいようで、専門店で特定ジャンルに特化した商品を多数並べるサイトが優位であるようだ。このことは、中小サイトがSEOの恩恵にあずかることを難しくしている一つの要素である。
以上のことより、サイトにトラフィックを集めるには、優れた商品や魅力的な企画を常時用意し、それらを外部に対して発信することによって認知を高め、指名流入を増やす施策が肝要である。また、そうした特集を組む際には、コンテンツマーケティングと言われるような、特定キーワードのSEO順位上昇を意識したページ構成が望ましく、そうした細かい努力の積み重ねによってgoogleからの信頼を勝ち取ることが必要となっている。
現代のSEOにブラックハットはなく、消費者の御眼鏡にかなうサービスをしっかりと提供することが成功への最短ルートである。
本レポートをPDFダウンロードする
2025/11/5
SEO順位は生成AIの回答に関係するか?生成AIに「おすすめのパソコン教室を教えて」と質問。1,176回分の結果を比較検証
2025/4/24
「予算増額なき顧客」は事実、優先度が下がる。Web広告代理店の実態調査
2025/3/25
Webサイトの「フルリニューアル」は売上を伸ばすために本当に必要か
2024/12/6
WACULの研修はカスタマイズ性が魅力。実務に直結した内容設計でDXリテラシーの向上を実感 - 東急不動産ホールディングス株式会社 DX人材育成研修事例
PDF版でご覧いただけます
ダウンロードする