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2020.03.26
本研究が対象とするメールとは、事業者(法人・個人)から潜在顧客や既存顧客に向けて配信されるオンラインのメールである。メールの宛先は、オンライン・オフライン問わず事業者が取得したメールアドレスである。「AIアナリスト」の導入先から伺う限りでは、会員情報や顧客情報を取得している多くのサイトにおいてメール配信が行われている。しかし、効果があったメールとそうでないメールの違いについて質問をして明確な回答を得られる機会は少ないと感じる。
配信したメールが届け先で開封されたかを測定するには、HTMLで作成されたメールを配信する必要があるが、未だにテキストのみのメールが約65%を占めている。
参考:ウェブ解析士協会サイト
つまり、配信されているメールの半数以上は、開封率が測定されていない。
また、弊社「AIアナリスト」では、Google Analyticsのデータ上でメールからの流入を識別していれば、メール流入の場合の各ページの訪問数・遷移状況・CV数・CVR等を分析して改善点を容易に抽出することができる。しかし、メール流入を識別するための設定(パラメーター設定)さえ行われていないサイトが多数存在する。
自然検索流入の検索順位や流入数、リスティング広告・ディスプレイ広告流入の費用対効果については検証してPDCAを回す一方で、メール配信のPDCAを定常的に回す事業者は少ない。
「AIアナリスト」をご利用のお客様から伺う限りでは、リソース不足により顧客リストはあるがメール配信を行っていない場合や上記のように効果測定のための設定がなされておらず分析自体も行われていないことがある。
また、パラメータ設定がなされてメール流入の訪問数やCVRの変化について検討できる場合であっても、定期配信のメール、あるいは新着情報やキャンペーン、販売終了製品に関する告知など配信内容については認識している一方、メール配信の仕方に関する工夫や特にCVRの高いメールについて回答を得られることは少ない。
メールの運用は、マーケティングの観点でも、潜在顧客への継続的な認知獲得やサイトへの再来訪促進など、売上向上に寄与する有効な手段である。しかし、うまく活用して自社の事業拡大に活かしているケースが少ないのではないかと危惧している。そこで、実際に運用されているメールを分析してベストプラクティスを見出し、それを各処で役立ていただこうと考え、本研究レポートを発行することとした。
本調査は、メールの受信者が、届いたメールに興味を示してメール内に貼られたリンク先へ訪問するまでを対象としている。そのため、メールの成果は、「開封率」、「クリック率」、「反応率(=開封後のクリック率)」の3つの指標で分析した。
各指標の定義は下記の通り。
指標 | 定義 | 計算式 |
|---|---|---|
開封率 | 配信されたメールの内、宛先に届き、かつ中身が閲覧された割合を指す | 開封数 / 配信成功数 |
クリック率 | 配信されたメールの内、宛先に届き、かつメール本文内にあるリンク先に 遷移する割合を指す。 | メール内のリンククリックの発生数 / 配信成功数 |
反応率 | メールの本文を閲覧した場合に、本文内のリンクに遷移する割合を指す | メール内のリンククリックの発生数 / 開封数 |
本調査では、一般的に用いられる「開封率」「クリック率」に加えて、「反応率」を用いている。目的は、メールを開封した後にクリックが発生することのみに影響を与える要素があるかを調査するためである。
弊社と株式会社ラクス(配配メールを提供)は、メールマーケティングの成果の最大化に向けて共同研究を開始しており、本研究は、その第1弾として実施した。
分析対象のサンプルには、業界を問わず約5,000通を用いた。それらは、配配メールのユーザーの中から分析の承諾を得ることができたメールデータである。
分析の指標(開封率、クリック率、反応率)の実数値の大小は、商材によって影響を受けるため、商材を横断した比較は実施しない。
今回の調査で取り扱った商材は下記の通り。
アパレル、ファッション関連の人材派遣サイト
有料職業紹介事業サイト
加工食品・冷凍食品、無添加基礎化粧品の宅配・通販サービス
投資助言・代理業 コーポレートサイト
食品関連企業(toC/toB)のマーケティング支援事業サイト
「開封率=開封数 / 配信成功数」であるため、開封率に影響を与え得る要素として、下記の4点が想定される。本調査では、「2:件名」「3:配信タイミング」について開封率の高いメールの特性の有無を確認した。
配信者名(本調査では、配信者は商材ごとに同一であるため、検証対象外)
件名
配信タイミング
配信対象者(本調査では、配信先は匿名であるため、検証対象外)
調査対象としたメールは、2種類に分類でき、それぞれにおいて開封率の高低でメールを分類して、「2:件名」を比較したところ、開封率の高いメールに特定の文言が含まれている傾向があった。
調査対象としたメールサンプルの分類
情報提供型:コンテンツ(読み物)の配信
商品・サービス販促型
情報提供型のメールでは、ニュースではなく、読者の知見となるテーマを件名に明示すると開封率が高い。
例えば、投資信託などの金融商品のメールでは、時流のニュースや特定企業の決算情報の配信ではなく、為替変動に対するリスクヘッジの考え方などのように、投資家(サイトのユーザー)にとって一過性でない知見になる件名の方が開封率が高いことが判明した。
商品・サービス販促型メールでは、「時間的・数量的限定」(冬季限定、母の日など)や「無料」など、背中押し要素を件名に明記すると開封率が高い。
商品・サービス販促型のメールでは、「分野」「テーマ」の分類など、焦点を絞り込む要素を件名に明記すると良い。
例えば、医療系の求人サイトのメールでは、求人の「勤務地」「医療の分野(美容皮膚科など)」の情報が記載されていると開封率が高い。
件名に、「【配配メール】セミナーのご案内」などのように、社名やサイト名を含むメールを見かけることは多いが、開封率が低い傾向にある。
社名、サイト名の記載があると、開封率の観点で下記の問題点があると考える。メールの一覧画面で表示される文字数を件名や社名が使ってしまい、メールの要件を記載した部分が省略されてしまう宣伝感があり、敬遠されるメンテナンスなどの連絡事項のメールに紛れる
したがって、社名やサービス名は、差出人名に記載をすれば十分であろう。
一般的に、開封率を高めるために、配信のタイミングや周期を検討する傾向がある。しかし、深夜帯をのぞいて、本調査で用いたサンプルでは、配信月、配信日、配信曜日、配信時間によって開封率との相関は見当たらなかった。
背景としては、本調査では、各サンプルにおいて配信タイミングと開封率の相関関係が強く見られなかったことと、サンプルの商材が異なるため、購買傾向が似た商材を纏めて傾向を見出すことも困難であったことがある。
商材によっては、配信タイミングによる特性がある可能性はある。今後、サンプル数が増えて商材やメールの件名等で分類して分析できる段階で、新たな見解があれば提示したい。
本調査内容の限りからでは、メールの配信は、特段タイミングや周期を気にせず、定期的に配信してよい。
以下に、配信タイミング(配信月、配信日、配信曜日、配信時間)と開封率を軸に、該当するメールをプロットしたグラフを参考として例示掲載する。

※配信月と開封率の関係については、8月以降の配信数量がそれ以前より多いことが関係しているため、特段の法則とは認定していない。

※開封率に2つのレンジがあり、それぞれ、配信内容が下記のように異なっているが、それぞれのレンジにおいて、開封率と配信タイミングはバラついている。
開封率15%~30%:記事コンテンツ
開封率60%~80%:銘柄名+ニュース事項、セミナー案内
※土曜日に数量が多いが、配信数量の総数が他の曜日と2倍以上異なることが主因。

各指標の定義を踏まえれば、通常は開封率が高いメールは、メール件名などから内容への関心が高かったと考えられ、クリック率も同様に高くなると想像される。
しかし実際には、開封率が高いメールが開封された後に、本文内のリンクがクリックされる割合にはバラつきがある。極端な例だが、開封率が100%のメールでもクリック率が0%というケースがあり、これは「開封をしたにも関わらず、開封後に本文内のリンクをクリックした割合が0%」ということを意味する。
以上のことから、メールが開封された後にクリックされる割合が高いメールの特性を把握するためには、開封率とクリック後の開封率(=反応率)を分解して分析する必要がある。
本調査では、開封率と反応率を軸とした4象限(図表1参照)の座標上に各メールのデータをプロットし、反応率に影響を与える要素を分析した。

分析の結果、反応率は開封後の要素のみではなく、メールの件名によっても差分があることが判明した。
ただし、「①:情報提供型」のメールにおいては、反応率が高いメールは存在したが、投資運用サービスの会員向けの定期レポートであったため、特段件名の特性としては抽出できなかった。
先述では、「②:商品・サービス販促型」のメールでは、開封率の高いメールに、「時間的・数量的限定」(冬季限定、母の日など)、「医療の分野(美容皮膚科など)」の文言が含まれていると述べた。
それに加えて、反応率が高いメールには、前者であれば、その数値(10組限定など)、後者であれば、「年収」「勤務体系(スポット求人、継承医院など)」が明記されていることがわかった。
上記の条件を満たすメールは、クリック率も高いことは言うまでもないが、件名をみた段階でメール本文内のリンクをクリックするかが既に決まっていると推察できる。
反応率が高いメールでは、ファーストビューで件名の情報について詳細な情報や補足情報が記載されていた。
件名に関する詳細情報とは、「時間的・数量的限定」(冬季限定、母の日など)であれば、期間や日付の情報や条件や枠数に関する情報である。
例)件名:春季期間限定 本文:2020年4月4日~10日
件名の情報に加えて、メリットやポイントなどを追加的に説明する情報を掲載する方がよいのではないか、という事前の仮説はあったが、それを証明する事例は今回の調査では確認できなかった。
反応率の高いメールの本文の見た目を比較したところ、メール本部においてリンクのバナーが埋込画像に見えるよりも、クリッカブルなボタンの方が効果が高いことが判明した。
本調査の範囲では、メール本文のコンテンツの流れ、画像とテキストの構成比などによる反応率の差分は見られなかった。
開封率、反応率それぞれを高めるメールの要素を分析した結果、件名に記載する情報がカギを握っていると判明した。件名に記載できる情報には限りがあるが、メール本文で件名に記載のない情報を追加で伝えることによる効果はみられなかった。
よって、件名に含める情報がクリック率を高めることに対して影響が大きいと言える。
また、メール配信のタイミングと開封率に大きな相関は認められなかったため、配信内容と配信時期を照合して分析を行う時間は削減してよいと考えられる。
したがって、メールの運用では、件名に記載する内容を複数案作成した上で定期的に配信し、効果測定と件名の文言を見直す業務に集中すれば良い。
メールの本文では、件名の情報を逸脱しない範囲で補足情報を記すことが重要である。このことから、件名では伝えきれないことを追加で説明しても、件名との情報の違いが原因で内容の理解が及ばずリンククリックに進みにくいと推察される。
追加で記載する情報がある場合には、発想を転換し、別メールで件名とファーストビューの情報が整合するメールのパターンを作成して運用する方が有益なPDCAサイクルを回すことができると考えられる。
リンクについては、本調査の中では、クリッカブルに見えるという条件を満たすという意味でボタンで実装すると良いと考えられる。他にもテキストリンクなどとの反応率の比較は分析余地があるが、今後サンプルが収集できれば検証したい。
そもそもメールの効果検証を行うための下準備をしていなければ、上記のような取り組みも意味をなさない。そのため、HTMLメールを作成した上でGoogle Analyticsで効果検証ができる設定を行うことは必須である。
効果の計測までの手順は、非常に簡単で、メールをHTML形式(Webページのようなデザインを反映できる仕様)で作成し、Google Analytics(無料)の”Measurement Protocol”で設定を行うだけでよい。
下記に、設定手順が説明されているブログ記事を掲載しているので、参考にしてほしい。
参考:Googleアナリティクスでメルマガの効果を測定しよう! – AIアナリストBLOG
参考:メルマガ開封率はどう測定する?開封率平均の算出方法とGoogleアナリティクス活用法 – 配配メール
デジタルマーケティングの手法としてのメルマガは、SNSマーケティングなどのような新しい手法が登場するたびに脇役へと追いやられてしまう存在である。
一方で、欧米ではメールマーケティングは投資対効果が一番高いマーケティング施策であるいう見方が一般的であり、企業の基本的な販促活動として位置付けられている。
昨年9月にアメリカのクリーブランドで行われたcontent marketing world2019の基調講演においてもメールマーケティングの重要性が説かれていたが、ここ日本ではなかなかその機運が高まらないのは何故であろうか。
そもそも日本の企業の多くはデジタルマーケティングを専任で行う部署が存在せず、数多くのマーケッターは諸々の業務の合間を縫ってマーケティング施策を実行せざるを得ない状況に置かれていると聞く。
そのため、それぞれの施策について十分に計画・実行・振り返りの時間を取ることが出来ず、施策の実行が目的になってしまっているということはないだろうか。
メルマガそのものはデジタルマーケティングの手法としては非常に歴史の長いマーケティング施策であるが、外部環境やメール配信ツールの進化に伴い、その手法の中身は大きく変化を果たしている。端的に言うと、「情報を伝えるメルマガ」から「態度変容を起こすメールマーケティング」にその役割を変えているのだ。
態度変容を期待するのであるからには、その効果についてもしっかりと計測が必要であることは言うまでもない。
メールマーケティングのKPIとして使われる代表的な指標は「開封率」と「クリック率」であるが、今回のレポートでは「反応率」についても合わせて調査を行った。
それぞれの指標を高めるための具体的なテクニックについては、長年に渡り、ある種のセオリーのようなものが妄信的に語られ続けていた。
例えば、開封率を向上させるためには、読者の余暇時間を狙って配信すべきであるというのがこれまでの定説であったが、今回の調査により送信タイミングは開封率に大きく関係していないことが判明したのは驚きであった。
しかし、スマートフォンでいつでもどこでもメールを確認できるという現在の読者の生活習慣を考えてみると、至って妥当な結果なのかもしれない。
また、メールの件名についても、これまでは読者に「開封」してもらうことに主眼が置かれ、いかに目を引く件名をつけるかというテクニックが重要視されていたが、メール件名にコンテンツのサマリーを記すことがその後のクリックにまで影響するということが反応率の調査から判明したのは非常に重要な結果であると言える。
私が相談を受ける企業のうち比較的メールマーケティングに真剣に取り組んでいる企業においても、クリック率を高めるためには開封率を上げなければいけないという事で、4U(※)などのテクニックを利用して件名を作成していたが、メールマーケティングの目的から考えるに、「いかに開封してもらいクリックしてもらうか」ではなく「いかにクリックしてもらう件名をつけるか」という発想の転換が必要となるだろう。
※Urgent、Useful、Unique、Ultra-specificと言った開封率を上げるための4つのテクニックのこと
その他の調査結果についても、企業の相談にのる中で直感的に感じていた部分が今回の調査により裏付けられたものが複数あり、非常に興味深いものばかりであった。
メルマガのように長い歴史を持つマーケティング手法において定説と言われるものについては、果たして時代の流れに合致しているのかということを定期的に確認していく必要があることを本レポートは示唆しているだろう。
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