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ビジネスインパクトを創出する「百貨店におけるSNS」の在り方を作る

人材マッチング

2024/11/14

業種:

小売・EC

従業員数:

1001名以上

課題:

SNS運用の在り方や役割が明確でない

導入企業

株式会社阪急阪神百貨店
顧客政策推進室 OMOサービス推進部
谷山 真理子氏
木村 有紀氏

マーケター

Kさん

関西地区を中心に15の店舗を展開する阪急阪神百貨店様は「お客様の暮らしを楽しく、心を豊かに、未来を元気にする楽しさNo.1百貨店」をビジョンに掲げ、ビジネスを推進しています。同社の顧客政策推進室では、オンラインでもオフラインでもお客様とつながることのできる“SNS活用の在り方”を検討されていました。

阪急阪神百貨店様では、各館・カテゴリーやフロア・ショップ・個人といった異なるレイヤーが自主性をもってSNSアカウントを運営しており、インスタグラムのアカウント数だけでも150を超えています。
しかし、社内での共通の評価基準が存在しないことやノウハウの共有ができていないこと、さらに阪急阪神百貨店としてのSNSの在り方、役割の定義付けが出来ていないという課題感を覚えておられました。

そこで、「百貨店としての理想的なSNS」の形を実現するために伴走してくれる「人材」を求め、「MarketerAgent」を通じてマーケターと契約。当初はスポットで2カ月という契約からスタートし、その後継続案件として現在まで1年半以上マーケターが伴走しております。

今回は、顧客政策推進室 OMOサービス推進部 マネージャー SNS企画・推進担当の谷山真理子さんと木村有紀さん、マーケターとして担当されているKさんに、WACULコンサルタントの安藤がお話を伺いました。

Marketer Agent 導入事例

株式会社阪急阪神百貨店 様

事業内容

百貨店業

業界

小売業界

従業員数

3,101名 (2024年03月末現在)

創業年

1929年4月15日

導入前の課題

  1. SNS運用の在り方や役割が明確でない

  2. OMO実現に向けた効果的なSNS活用ができていない

  • 全社課題として「SNS運用の在り方」が定まっておらず、効果的な運用に向けたアクションを整理できていない

  • SNSは各ショップ / フロアなどさまざまな単位で運用されているが、担当者のスキルや運用状況にバラつきがあり、ノウハウ共有も難しい

  • 「アルゴリズム最適」などHowに終始するのではなく、意識や習慣を根付かせるなど、本質的な課題解決が必要と感じていた

導入後の変化

  1. アカウント運用における統一評価基準を設け、共通指標として確立

  2. OMOを推進するためのSNSの在り方を定義

  • 社内共通の検証フロー及び評価指標の策定により、PDCAを浸透

  • 継続的なセミナー実施によりSNS運用のノウハウを共有、組織全体の運用スキルアップに繋げる

  • 社内の優良アカウントへのヒアリングで得られた運用のエッセンスを構造化し、ベストプラクティスとして共有する体制を構築

担当マーケター紹介

Kさん30代

実績・経歴

新卒で大手エンタメ企業に入社。新規事業の立案に従事。
その過程で事業会社における事業推進、企画立案、営業、マーケティングについて経験を積む。
その後、SNSのデータ分析プラットフォームを提供する企業にて、全業種、業界、事業規模のクライアントに対しツール活用コンサルに従事。世界の最先端ソリューションに関するWebinarなどで講師も務める。
独立後は、プライム企業での新規事業推進、地方観光業のリブランディング、日系・外資系の大手BtoB企業のSNS戦略策定、育児メディアのグロース案件など、業界を特定することなく価値提供を行い、継続的にご指名を頂く。経営する会社には、戦略コンサルのアソシエイトディレクター経験者、大手エンタメ企業でPython×データ分析経験者など、ユニークな経歴を持つメンバーが在籍。

スキル

PM、AD上流、サイト改善、SNS上流、インサイドセールス改善、デジマ全体、AD(運用)、SNS(運用)、データ分析(運用)

百貨店を理解して進めてくれる「人材」を探していた

安藤 御社がMarketerAgentへ依頼をされた当時、どのような課題を解決したいと思っていたのでしょうか。

谷山 当社では現在、インスタグラムだけでも150を超えるアカウントが存在しています。それぞれの部門や担当者が個々に運用しているので、Kさんとのお取り組みを始めた当初は、社内評価基準もなく、運用するにあたってスキルやノウハウの習得ができるような社内での整備も不十分で、アカウントによって状況もさまざま。継続的に投稿はしていても、PDCAを回すといったことができていないアカウントもありました。SNS運用の土台がない状態だったので、まずはその土台作りが当面の課題でした。

株式会社阪急阪神百貨店 顧客政策推進室 OMOサービス推進部 マネージャー SNS企画・推進担当 谷山真理子さん

 安藤 SNSという点で考えると、さまざまなマーケティング会社、広告代理店、ツールベンダーなど、選択肢はあったと思いますが、そのなかからMarketerAgentを選ばれたのはなぜでしょうか?

谷山 最初からシステムやサービスの導入ではなく「人材」ということは決まっていました。さまざまなシステムやコンサルティングサービスがあるなかでなぜ「人材」なのかというと、百貨店という独特の業態や当社におけるこれまでの経緯、現状をご理解いただいたうえでの細やかなサポートが必要だと考えていたからです。

企業アカウントの運用やSNSのツール最適という面だけで考えれば、多くのサービスがあると思いますし、実際にご提案もいただきました。しかし私達としては、当社の特性、状況をわかっていただいたうえで進める必要があるというのが一番大事な部分でしたので、システムを使って一律に行うということではないと思っていました。

最終的にはWACUL社ともう1社に絞って面接をさせていただいた結果、Kさんということになりました。

K 初回面談時は、割と当たり前なご提案をさせていただきましたが、確かにスムーズに楽しくお話ができた記憶はあります。

谷山 最も優先順位が高かったのが”コンサル”的なアドバイザーというだけではなく、“伴走”してくれる方という点で、その条件にマッチしたのがKさんでした。課題への根本的なアプローチを他人事ではなく、自分事として一緒に検討してくれる方だと感じたのです。

 安藤 経験やスキルを評価して決定されるケースは多いのですが、そうではなかったところがポイントだったと感じます。それはもともと決められていたことなんですか?それとも話を聞いていくうちにそう思ったのでしょうか

谷山 話を聞いていくうちに、ですね。最初は別の企業様から紹介があった、百貨店でのマーケティング経験があるという方を優先的に考えていましたが、面談を進めていくなかで、Kさんなら当社のOMOの在り方や状況、特性などを理解したうえで伴走してくれるのではないかと思えたところが決め手でした。フィーリングのようなところではありますが。

面談の際には弊社から数名参加していましたが、その部分で共通していたので、決定までは早かったですね。誰と一緒に取り組んでいくのか、というところが大きかったんです。何か指示をしてもらう、教えてもらうというだけではなく、当社のことを理解して進めるということが必要だと思っていたので、総合的に見てKさんに決定しました。

 安藤 阪急阪神百貨店さんでは、外部のコンサルティングやツールなど、業務委託という文化はあったのでしょうか。

谷山 ジャンルなどにも寄るかもしれませんが、SNSに関しては基本的には全部自分たちで行うという文化が強かったと思います。プライベートで利用する一般ツールでもあるので、各担当者個人がそれぞれ身につけたスキルを活用するということがベースです。

一部のアカウントにおいては外部サービスを利用している場合もありますが、大多数はそうではありません。またアカウント単位での利用なので、そこで得られたノウハウの共有も難しい。運用規模も大きくなってきたので、専門領域のスキルを持った方に入っていただき、全社での取り組みとして進めていこうという意識に変わってきたという感じです。

百貨店のSNSとしての理想的な形を作ることが目的

安藤 Kさんから見て、多くの支援をしてきたなかで、阪急阪神百貨店さんの取り組みで特徴的なところはありますか?

K 一番の大きな違いは、HowではなくWhyが求められている点です。多くのクライアント様では、SNSのフォロワーを何万人まで伸ばしてほしいというような要望がメインで、その場合にはそもそもなぜその数字なのか?から議論しなければいけないのですが、阪急阪神百貨店のみなさんからHow(=フォロワー数の伸ばし方)を求められたことはありません。

阪急阪神百貨店として、SNSはなぜお客様や取引先様にとって必要なのか、ツールとしてのSNSをどう位置付ければビジネスインパクトを出せるのか、そういったWhyを大切にされています。現在社内で成果を出しているアカウントは、なぜ成果が出ているのか。その成果とは、何をもって成果と言えるのか。それらを分解していったなかで、ほかのアカウントでも使えるエッセンスはどれなのか。簡単に言えば組織のコンサルティングをしているような感じです。SNSマーケティングに閉じた話はほとんどしていません。

「今のインスタのアルゴリズムはこれです!」といった話も必要ですが、それだけに留まるのではなく、社内のあるアカウントの明確な成功事例を見せて、阪急阪神百貨店として理想的なSNSの在り方はこれですと、他の150アカウントに伝えていくという感じです。

現場のスタッフさんからすれば、ちょっと仕事が増えるかもしれません。しかしそれらをきちんとやりきることによって、確実に売上に繋がるということを、実例をもって示すことが重要だと考えています。

百貨店のスタッフさんというのは、サービス業の中でも特にホスピタリティやクオリティを求められる職業であり、オフライン・オンラインどちらも手を抜いてはいけないというのが谷山様・木村様と私の共通認識です。

また、実は阪急阪神百貨店のあるアカウントは、宣伝素材ではなく、自分達で撮影した素材をSNSに上げることができる国内唯一(当時)のアカウントであるということが社内ヒアリングを通して判明しました。これは、競合からしたら脅威でしかありません。

お客様は、スペシャルな体験価値を百貨店に求めています。百貨店という業態は、多くの場合取り扱いブランドは似通うことがままあります。その中でどうやって差別化をして、お客様に満足していただけるか?その答えを、このアカウントを通して導き出すことができました。

仮に、競合が広告代理店の言いなりになってダンス動画をアップロードして、フォロワーを10万人増やしたところで、阪急阪神百貨店のSNSのスタンスに共鳴してくださり、こういった形で、一緒に世界観を発信させていただけるブランド様や、特別なイベントを開催できるブランド様が10件増えるほうが、ビジネス上のインパクトは絶対大きいはずです。

そういう状況が自分達が働く店舗で生まれれば、スタッフさんのやりがいにつながります。そして、全社的にそういう組織を作っていけば、阪急阪神百貨店で働くことのモチベーションとなり、人材定着にもつながります。

SNSをきちんと運営することの意義は、フォロワー数というSNSに閉じた話ではなく、”コミュニケーションリテイラー”としての変革を目指される阪急阪神百貨店様の指針の一つになることだと考えています。お客様に満足していただくためにはどうすべきか?お取引先様が、一緒に情報発信をしたいと言っていただけるためにはどうすべきか?お客様と相対するスタッフさん、お取引様と相対するスタッフさんが、より一層の誇りをもってお仕事に取り組めるためにはどうすべきか?などなど。

SNSマーケという限定的なスコープではなく全社課題として何をすべきか?という、より高度な議論ができているのが、個人的には特徴的な部分だと感じます。

バズらせることがお客様のためになっているのか

安藤 会社としては、わざわざ外部に業務委託をしているということで、フォロワー数などのように目に見える数値をKPIにするという話になりがちですが、阪急阪神百貨店さんの場合はそもそもその辺りはOKが出ているのか、本来はKPIなどの話が出ていたところを、本質論に戻して対応しているのか、どちらなのでしょうか。

株式会社WACUL 安藤

谷山 この取り組みを始める時点で、フォロワーが多ければいい、エンゲージメントが高ければいいというわけではないということについては、会社としては一定の理解がありました。その上でSNSの評価基準を決め、それを共通認識とするところを確立したいというのが大きなテーマでした。

木村 現在はSNSアカウントの検証取り組みを私が担当し、毎月実施しています。5段階の総合評価基準を設けて、その評価や項目ごとの結果をもとに毎月の動向を振り返り、運用がうまくいっているのか、改善すべき点があるのかということを判断できるようになってきたところです。

K 百貨店だからこそ、フォロワー数やエンゲージメントだけではない評価基準が必要なんです。競合百貨店では、“バズらせるためだけのインスタグラム”に最適化された運用をしているアカウントは結構あります。しかし、それがお客様からはたして求められていることなのかということですよね。お客様視点がない。

百貨店は、あくまで百貨店でなければいけないというのが個人的な所感です。「メディアはメッセージ」というマクルーハンの言葉にもある通り、購買行動自体に意味づけができるのは百貨店の唯一無二の強みです。「このプレゼント、阪急でスタッフさんに相談して買ったんだ」と言われるのと、「これ、通販で買ったんだ」と言われるのと、どちらに愛を感じるか?コンテクストに価値があるか?と、私は度々例に出していますが、これこそ百貨店が百貨店である所以だと思います。どこで買ったか?に価値がある、それは阪急阪神百貨店様の、これまでの伝統と信頼の積みかさねによるものです。歴史がある、格式がある、それは根底としてお客様にとって重要な価値だと考えています。

それに対して、インスタグラムに最適化されたことをやるということは、その格式を自ら落とすという暴挙になります。たとえば「スタッフが踊ってみた」や「おちゃらけた百貨店アピール」によって、ターゲットではない層のフォロワーは10万人増えるかもしれませんが、メインターゲット層が例えば「なんか阪急っぽくないよね?」と1万人離れた場合、見かけ上はフォロワー数は増えていますが、購買ターゲットは1万人離れていることになります。

それはビジネス上マイナスだという認識を全社で持たなければ、建設的な議論はできないと思っています。

社員全員が同じ数字を見ることの重要性

安藤 評価基準を作るというのはとても難しいことだと思います。現在、SNSの運用状況を5段階評価しているということでしたが、社内的にはどのように進められたのでしょうか。

谷山 最初はアカウント数の多い店舗でトライアルで行いました。それから、入力フォームや評価の数値の幅など、調整を繰り返しながら今に至っています。

安藤 百貨店に限らず、ビジネス関連のSNSアカウントを、評価基準を設けて運用するというのは結構難しいことなのではと感じていますが、その点はいかがでしょうか?

谷山 いわゆるインスタグラム最適、ツール最適におけるエンゲージメント率やフォロワー数だけでは判断できないだろうということはお取り組み以前から考えていました。そこで、どんな数値設定や項目設定が重要なのかという議論をするためにKさんに入っていただいたのが大きかったですね。いわゆるインサイトでパッと見られる項目ではなくて、私たちだけでは気付けなかった「こういう点が重要なんだ」というところがたくさんあると思います。

K この点の議論にはかなり時間をかけて要件定義をしましたね。

谷山 インサイトでダウンロードできるそのままの項目ではないんですよ。最終的に、普通に見られる数字ではないもので評価基準を設定することになったのは、何を見ていくべきなのかを突き詰めた結果なので、既存のベンダーツールでは実現できませんでした。

K 絶対ツールを入れたほうが早いんですけど(笑)。でもそれでは意味がないというところと、全員が同じ数字を見る習慣を付けるということが大事だなと思って、このような運用をしています。

阪急阪神百貨店さんの従業員の方は異動で担当を変わられることもあるので、店舗や売場が変わった際にも、SNS担当が見るべき数字が一緒だという状況のほうが、スキルを活かしやすく、業務を円滑に回すことができる。3年先5年先を見据えたとき、異動で担当が変わったとしても、この数字を見れば変化や異常がすぐにわかるという状況、組織作りができていればうまくいくだろうという思惑があり、自分で数字を入力しないとシステムに反映されない仕組みにしました。

年6回のオンラインセミナーで理解力を深める

安藤 SNS周りの評価基準の作成というテーマでKさんと仕事を進めているわけですが、そのほかにもオンラインセミナーの開催なども行っています。これはどういう意図で始められたのですか?

谷山 Kさんにご協力いただいてSNSの全社戦略から整備していきましたが、その後はアカウント運用の基本となる考え方についてなど、定期的にご登壇いただいています。

以前には、私たちが学んだことや身に付けたことを社内でお話することもありましたが、残念ながら同じことを言ったとしても、外部の方のほうが説得力がありますし、当然その経験や知識からもより効果的なお話を聞くことができます。そこで、Kさんに直接ご登壇いただくという機会を設けました。

これまで年に6回、オンラインセミナーという形で開催していますが、アンケートなどを見ても携わっている担当者にSNS運用についての意識が少しずつ広まっているという実感がありますし、Kさんにも感じていただけていると思います。

安藤 そのセミナーは、社内のどのようなレイヤーの方が参加しているのですか?

谷山 毎回、社内の人間であれば誰でも参加できます。ただし、社内アカウントが150を超える規模になって関係者も増えています。
参加者アンケートの回答にもあったのですが、実際にSNSを投稿しているメンバーだけではなく、売場の責任者などにも参加いただく機会を作ったほうがいいということで、直近では人事室との連携で、新任の売場マネージャーや部門長にも参加してもらう機会を持つことができました。

K 阪急阪神百貨店さんの社員数は約3,000名ですが、その1/3が何かしらの形でSNSに関わっているとすると、このセミナーを通して共通認識を作ることには十分に意味があります。
オンラインセミナーの資料ですが、直近の「コンセプトメイキング」をテーマにしたセミナーでは、資料が120p近くになりましたね。伝えたいことがありすぎて(笑)

谷山 昨年と同じ時期・テーマのセミナーだと前回の焼き直しになりがちですが、毎回アップデートしていただいています。Kさんから「今回はこういうことを入れませんか?」とほぼ作り直しじゃないかなというくらい、取り組んでいただいているのはありがたいですね。

K1年以上伴走させていただくことで、皆様の業務への理解度・解像度が格段に上がってきていると自分でも感じています。

関係者の意識がSNSに向くようになった

 安藤 Kさんとの取り組みが始まってから、何かしら変化が起きていると思います。どんな変化を感じていますか?

木村 担当者の間でも、Kさんと定めた数値目標に関するワードが飛び交うようになっているので、自然と根付いていっているなと感じています。

谷山 この検証を始めたことで店舗の担当者からは「アカウント担当者とのミーティングや検証結果の振り返りなどを実施するようになって、担当者間でも隣のアカウントの評価が上がったという情報があれば、それに感化されて自分たちも頑張ろうとなったり、ノウハウの共有が行われるようになっている」と聞きました。私たち自身も店舗担当者の方からそういったお話を伺うことでコミュニケーションの機会が増えましたし、理解度も深まっていると思います。

K 昨年1年間で、阪急阪神百貨店全体のインスタグラムのフォロワーが20万人増えました。そして、売上も上がっていました。売上増の要因はインバウンド需要やショップの店頭での頑張りなど、複合的なものだと思います。インスタグラムの運用をやったから売上がこれだけ増えましたというのは、もう少し検証が必要です。
ただ、軸の一つになっているのは確かです。

オンラインとオフラインの一貫したブランド体験を提供するときに、インスタグラムの手を抜くというのは絶対あり得ません。携わっている方たちの意識をそこに向けられるようになったというのは、数値には表れないのですが定性的に評価できる部分だと感じます。

安藤 変化を感じるまでには、どれくらいの時間がかかりましたか?

木村 私は2023年10月にSNS担当になって、一緒に取り組みをさせていただいております。3、4カ月経った頃に店舗の取りまとめ・窓口の担当者と話したところ、検証結果をもとに店内の各アカウントの担当者とコミュニケーションを取るきっかけになったというお話が結構あがっていたので、半年から1年くらいかけて浸透していったという感覚はありました。

また、店舗でのアカウントの位置づけの整理や運用方針などの検討にも活かされているといった話もあり、大きな効果が得られたなと思います。

安藤 SNSの評価基準を作るという狙いだけではなく、社員間の共通言語としても機能するようになって、いろいろなシーンに広がっているという感じですね。

お互いが意見を出し合って高め合う存在

安藤 Kさんと一緒に仕事をされて、どのような印象を持ちましたか?

木村 いつも楽しく和やかな雰囲気でミーティングをしていただいて、非常に助かっています。また週1回の定例のミーティングだけではなく、アカウント個別で担当者とのミーティングを実施していただいたり、オンラインセミナーに登壇してくださる点もとても感謝しています。

株式会社阪急阪神百貨店 顧客政策推進室 OMOサービス推進部 SNS企画・推進担当 木村有紀さん

谷山 店舗の担当者との少人数のミーティングにも入っていただいたことで、担当者の反応や声からもKさんの弊社への理解度がかなり高くなっているので、より気軽にいろいろな相談ができるようになっているなと思います。

同じ内容でもその反応は担当者によってそれぞれ異なります。一筋縄ではいかないところもありますが、そのなかで少しずつでも着実にSNS活用に対する意識やスキルを根付かせていただいているのは、Kさんのおかげだと感じています。

また、Kさんは他社様での案件にも同時に携わっておられるので、これまでのご経歴に加えて直近の他のお取り組みなども踏まえ、SNSだけに留まらないアドバイスもしていただけております。ブランディングやコンセプトメイキングなど、その辺りもこれからも引き続きサポートしていただきたいですね。

K 正直な話、最近はSNSの話をしていないなと思います(笑)

直近のセミナーのテーマは先述の通りコンセプトメイキングなんですが、そこでお話しした内容は、オフライン・オンラインを一貫したブランド体験デザインの話なんです。店舗の雰囲気、スタッフさんの接客、イベント関連の電車広告、そしてインスタグラムにLINE。これら全部のアトリビューションを考えたうえで、お客様から見たときに阪急阪神百貨店のブランド体験をしっかりと構築していくという内容です。これは、SNS専門のマーケターや広告代理店では絶対出せないバリューです。そもそものスコープが違いますので。正直な話、アルゴリズムの話だけでは無意味だと思ってます。「複数枚投稿して、滞在時間を伸ばしましょう」って、それはそうでしかなく。あくまでツールとして、顧客体験をどうすれば最適化できるか?が本質的な問いだと考えております。

その問いを解決するにあたって、谷山さんと木村さんが百貨店としての意見や考えを出して、それに対して私のブランドコンサルの経験から出た提案をぶつけ合って、お互いに高め合っていくという、理想的な関係性を築けていると個人的には感じております。

今後の展望について

安藤 SNS関連に関して一定の成果が得られたと思いますが、今後の展望についてお聞かせください。

谷山 すでに公表していますが、2025年には阪急阪神百貨店のアプリをリリース予定です。さまざまなツールを運用していくなかでもアプリがメインになってくるので、現状の他のツールとの在り方を見極めていく段階になっていきます。

K これまでの取り組みを通して、全社共通の評価基準、共通認識は整えられてきました。これをフェーズ1とすると、そのうえで自分たちのあるべきコンセプトを固めていくのがフェーズ2。そしてそれを全社で共有して、それを事業拡大に活かしていくというのがフェーズ3ですね。

谷山 フォロワー数を伸ばすという依頼をしたほうが、簡単だとは思うんです。一般的なノウハウも確立されていますし。でも、それ以外の部分でいかに個性や違いを出すか?阪急阪神百貨店としての強みを改めて定義しなおし、お客様に選んでいただけるか?
この根幹となる土台をしっかりと作る必要があると感じています。

K フォロワー数を増やすという話は、Howでしかないんです。たとえば、予算の大きい店舗のアカウントは広告予算を使ってフォロワー数を伸ばすことができます。
それを、自身のスキルだと思った担当者が、次に広告予算の少ない店舗に異動したとき、数字を伸ばせるかというとまず伸ばせないわけです。

企業に属する以上、異動による担当者の変更がある・店舗によって予算の上限が違うといった複合的な要素があるなかで、それらを加味せずにありきたりなHowToを出してもまったく意味がありません。結局は、スコープの切り方次第ですね。「SNS最適」で切れば、ありきたりでもいいですが、「全社のマーケ・組織として、お客様にとっての最適な在り方」で切れば、必然的に今回のようなお取り組みになると思います。

最後にWACULコンサルタント安藤から

今回のインタビューを通じて、阪急阪神百貨店様が外部人材のK氏に協力を仰ぎながら、SNS運用の全社的な評価基準の策定やオンラインセミナーを通じた意識改革によって、具体的な成果を出していたことがわかりました。フォロワー数やエンゲージメントなどの従来の指標にとらわれず、百貨店として顧客体験の向上を目指すというビジョンのもとに、各種SNSを有効活用を目指しておられると感じます。最終的なビジョンの実現に向けて、引き続きWACULとして外部人材を活用した支援を続けていきたいと思います。

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