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「時価の寿司屋」だった注文住宅をわかりやすく。顧客は目安だけでもすぐ価格が知りたい

コンサルティング

2023/09/28

業種:

不動産・建設

従業員数:

1001名以上

課題:

ボリュームゾーンの受注増加

導入企業

三井ホーム株式会社 経営企画本部 事業創造部 事業創造グループ マネジャー
宮崎 大輔氏

三井不動産株式会社 DX本部 DX二部 DXグループ 技術主事
西原 成輝氏

三井ホーム株式会社 経営企画本部 事業創造部長
山中 則知氏

三井ホームが展開している「Web限定規格住宅 MITSHUI HOME SELECT」は、通常の注文住宅に比べ比較的低価格で家を建てられ、ホームページ上で建物の価格がわかるという画期的な特徴を持つ注目の商品です。その商品を裏側から支えているのが、各事業部やグループ会社を横断的に支援する三井不動産の「&Marketing(アンドマーケティング)」チームです。

今回は、三井ホームの担当者のお二人と、「&Marketing」の担当者に、WACULの垣内勇威がお話を伺いました。

IT活用でタイパ・コスパを追求した注文住宅

垣内 本日はよろしくお願いします。まず、三井ホーム様のお二人が担当されている業務についてお聞かせください。

山中 当社は、三井不動産グループのなかで注文住宅事業を担っている会社です。注文住宅にもいろいろなものがありますが、我々が担当しているのは「Web限定規格住宅 MITSUI HOME SELECT」(以下、SELECT)になります。

通常のオーダーメイドの注文住宅に比べ、比較的低価格で家を建てられ、見積もりをホームページからその場で行えるというのが特徴です。

宮崎 Webを活用してできるだけ工数を減らして、住宅商品を規格化することでタイムパフォーマンス、コストパフォーマンスを追求する商品となっています。

垣内 山中さんと宮崎さんが所属されている経営企画本部事業創造部というのは、どのような役割なのでしょうか。

山中 2023年4月に新設された部署になります。それまでは経営企画部内で経営方針に沿った新規事業の取り組みや調査を行っていました。ただ、マーケットや顧客行動がめまぐるしく変化していくなかで、もっとスピード感をもって施策を実行する為に部門化されました。

垣内 いろいろなことをやっていらっしゃいますよね。新商品を作るというより、新しいターゲットに対して新しいビジネスモデルをやるというような印象です。

山中 そうですね。住宅の商品を開発するのは商品開発部ですが、我々は三井不動産DX本部の力を借りながら、新たな仕組みを作ることがメインです。例としては、木造住宅の新たなカテゴリーとなった木造マンション(MOCXION)が挙げられます。

部の方針は「食わず嫌いなし」。やってみないことには何もわからないですから(笑)。

MITSUI HOME SELECT Webサイト

MITSUI HOME SELECT Webサイト

テクノロジーを活用して不動産業そのものをイノベーションする

垣内 この三井ホームの活動に、三井不動産の「&Marketing」が支援しています。まず「&Marketing」はどんな組織なのでしょうか。

西原 「&Marketing」は、三井不動産の各事業・グループ会社を横断してマーケティング支援を推進する組織です。全社のマーケティング力向上の実現を目指し、活動しています。

三井不動産グループでは、ビジョンの一つに「テクノロジーを活用し不動産業界そのものをイノベーション」を掲げています。不動産業界は長らくアナログな習慣が根付いており、デジタル化が遅れていました。そこで2022年、DX化を推進すべくグループ横断でマーケティング戦略を考える組織「&Marketing(アンドマーケティング)」が、三井不動産DX本部DX二部内に立ち上がりました。

「&Marketing」発足当初は、立ち上げたばかりの組織だったので、とにかくいろいろな事業部やグループ会社にお声がけしていました。そのなかで、同じく立ち上げ初期だった三井ホームさんの事業創造部にお話をさせていただいて、お手伝いさせていただくようになりました。

三井不動産が定めるDX VISION2025

三井不動産が定めるDX VISION2025

ミッションはボリュームゾーンの受注増加

WACUL 垣内

WACUL 垣内

垣内 SELECTから取り組みを始めた理由はなんでしょうか。

宮崎 当社は高価格帯が比較的多い注文住宅メーカーです。一方で、中価格帯の、いわゆるボリュームゾーンと言われるところの受注をいかに増やしていくかというのが会社の課題としてありました。

そのなかで、西原さんとお話しさせていただくうちに、このSELECTで住宅を販売していくということが、課題であるボリュームゾーンの受注に寄与し、将来的なビジネスモデルの構築にもつながっていくだろうというのがきっかけです。

垣内 注文住宅というと、アナログ的な営業スタイルが主流だったと思いますが、どんなところをWeb化していったのでしょうか。

宮崎 メールの施策や、お客様との折衝自体をある程度リモートメインにするというコンセプトで始めております。Web化というよりWeb活用というところでしょうか。

垣内 今まで足で稼いでいた部分をできるだけWeb化することによって、営業のコストを下げ、できるだけいいものを低価格で提供していくということですね。SELECTは、「&Marketing」と関わる前から立ち上げていたのですか?

西原 そうですね。「&Marketing」発足は、2022年ですが、Web規格住宅のプロジェクトが一番最初に検討されたのは2020年9月です。

Webでの運用フローがわからない状態でスタート

垣内 SELECTの立ち上げで、初期段階で困ったり悩んだりしたことはありますか?

宮崎 運用・対応フロー等の構築の仕方に迷いがありましたね。最後までWebだけで完結できれば良いですが、どこかで人は介在することになると思っていましたので。
それを今回やってみて、このタイミングで人が必要だということが見えてきたところがあります。

あとは数字、KPIを設定していくことが難しいなと感じました。営業推進部に所属していた時にマーケティングの実務経験はありました。しかしデジタルマーケティングをやったことがなかったので、デジタルマーケティングのKPIがわからず、何を信じればいいのかということも見えないところからスタートしたというのも、難しいところでしたね。

同じメンバーとして手や頭を動かす

垣内 「&Marketing」としては、SELECTの支援をするとなったときに、どういうところから行っていこうと思いましたか?

西原 私がもともとECサイトで、データ分析やUI/UX周りをやっていたので、そういうところから支援していきました。ただ、ECサイトをグロースさせる方法とはまったく違うので、その考え方を再インストールしてやっていたというのが正直なところです。

垣内 「&Marketing」が支援しているプロジェクトの中でもSELECTの支援は、相当深く関わっていらっしゃる印象です。

西原 相性がよかったというのはあります。自分自身も手を動かせるところは動かしたり、頭を使えるところは使ったりということを意識して、同じプロジェクトメンバーの一員という想いでやっています。

グループ企業横断でのDXで気をつけていること

垣内 DXを担う横断チーム「&Marketing」と、各事業担当が一緒になってうまく進めているなという印象です。山中さんから見て、「&Marketing」はどういう印象でしたか?

山中 そもそも、Webサイトをどうやって作っていけばいいのかわからない状態で始めたので、西原さんからお声がけいただいたときはありがたい話だと思いました。サイトも作りこむのではなく、顧客の声を聞きながら変えていくスタイルで進められたことがよかったと感じています。

垣内 西原さんは、元々はAIエンジニアでしたが、なぜWeb規格住宅のマーケティングをやろうということになったのですか?

西原 あまりエンジニアっぽくない気質もありまして。自分の得意なところ、貢献できるところは何でもやるというスタンスでした。それこそ、人間関係や、お話をしたり飲み会をセットしたりということも含めて、プロジェクトの一員という意識でやっていました。

垣内 DXをグループ横断でやる人に求められるスキルや資質について、意識されている部分はありますか。

西原 DXやマーケティング領域については、情報や事例を豊富に持っているため、専門家になりすぎて、教える部分も多くなりがちですが、事業側で大切にしている点や想い、事業特有の傾向もあるので、共同のパートナーとしてともに取り組む意識をしていました。

コンバージョン優先という方向性

垣内 そんななか、私が2021年7月から参加させていただいたのですが、WACULが「&Marketing」の支援という立場で入ってきたとき、どんな感想を持たれましたか?

山中 最初の印象は、「マーケティングの専門家とはいっても、住宅業界のことはわからないんじゃないかな」というものでした。

ただ、アドバイス頂いた施策を実行する中で、「ダメでした、すみませんでした」と垣内さんがおっしゃったときがあったんですよ。そこで、垣内さんも試行錯誤しながらやってるんだということが感じられて、とても距離離が縮まったと思っています。

垣内 我々がご提案したものは、元々作っていたものと相反するものが結構ありました。たとえば、当初はブログ形式でキャンプに行くWeb記事などを作られていてそれを見た瞬間「じっくり読んでもらうのはそもそも難しい」と言ったような気がするんです。

宮崎 そのときのことは鮮明に覚えています。このときに「サイトでのユーザー説得は無理」とも仰っていて、確かに自分自身も普段サイトをじっくり読むことはしないと思い、ハッとしました。割とばっさりと「コンバージョンを優先に考えましょう」ということで、ほぼ真逆の提案をされたんですよね。ご提案が真逆だったので、内心不安もあったのですが、専門の方がおっしゃっているんだから、まずはそちらに乗ってやるのが多分一番効率的なんだろうなとは思いました。

垣内 ブログ形式のWebサイトは、ハウスメーカーとしてはかなり攻めたコンセプトだなと思ったのですが、このような形式になったきっかけはなんだったのでしょう。

山中 目的を見失いがちになるんです。サイトだけで全てを伝えようとしていたのが、そもそも間違いだったんですよね。

顧客はWebサイトを見ていない

垣内 SELECTは、価格がWebサイト上でわかるという、注文住宅業界では画期的な商品です。施策の一環として、実際に資料請求をされた方や価格見積もりをした方に顧客インタビューをしたことがありました。その結果、サイトをちゃんと見ていないということがわかりました。あの結果は予想通りでしたか?

宮崎 インタビューが2023年の1月頃で、その頃にはもうWACULメソッドが頭にたたき込まれていたので、ですよねっていう感じでした。もし、当初のブログ形式のサイトのタイミングだったら、驚いていたかもしれません。お客様は、時間のないときは最短の行動をしたがるというのがサイト上の動きなのかというのが、今になって感じていることです。

垣内 注文住宅業界には、価格がわからないという顧客のペインが根強くあったように思います。価格を知るためには営業の人に会わなければいけないけど、業者さんによっては、営業の人がグイグイ来るとか、早く土地を見せろと言ってくることもあって、それが大きな障壁になっていた部分もあります。その場で価格を提示することに、大きなニーズがあることがインタビューからわかりました。

宮崎 複数名にインタビューをさせていただきましたが、みなさん口を揃えて一番知りたい情報が「価格」でした。結果的に、そこでコンバージョンを取りに行くという方向性が強くなったと思っています。

垣内 価格を知りたいという、若干購買意欲が薄い層もしっかり追いかけて、継続的に接触もできますしね。

山中 価格に関心があるというのは当たり前のことですよね。注文住宅は、いわば時価の寿司屋なんですよ。時価の寿司屋に入るのって、勇気がいりますよね。でも、ランチメニューが外にあって、5,000円だったとしても、値段がわかることで暖簾をくぐってみようという気になるのではと。

顧客にいかにシンプルに考えてもらうかがポイント

垣内 その寿司屋から電話がかかってくるわけですよね。それは怖い(笑)。このプロジェクトが始まったのは、Webを使って効率化しようというところが発端ですが、結果的には顧客のニーズを見極めて、それをコンバージョンにして、継続接触するというステージに変わっていっていると思います。元々は営業マンが電話をしたり、直接会いに行ったりしていたところを、継続的にメールで接触するという手法になりました。その辺りは今までやってこられなかったのですか?

宮崎 以前は、テーマを作り込んでメールコンテンツを社外に作成依頼して、それを2週間に1回送るということをやっていました。現在は、ほぼ真逆のやり方になっています。メールのデザインをシンプルにして、5日連続で送ったり。デザインをシンプルにして、見積もりページに行きたい人が最短でたどり着けるようにボタンを配置するというメールの作り方は、WACULさんのご提案だったんです。

垣内 顧客はメールの中身を読んでいませんから。

山中 いかに情報を絞り、シンプルに考えてもらうかということだと思います。タイトルから、ボタンまで考えなくても情報がつながってたり、サイトのファーストビューも同じだと思います。

垣内 顧客に考えさせないというのは、顧客のためでもあると思っていて。有名な『Don't Make Me Think』という、UI/UXの教科書のような本があるのですが、そのなかでも「脳を使わずに操作できるのが一番気持ちいい」というような記述があります。メールは最たるもので、読まないし読ませる必要もないんです。

低い確率の事故を気にしすぎていた

垣内 デジタルマーケティングは、こちら側のやった感と、本当の意味での成果のギャップが激しいですよね。

山中 その流れで言うと、ユーザー登録してくれたお客様に即電話するというのはどうなのかと思っていました。今は「なんですぐ電話しないの?」と言っていますから(笑)。登録後30分以内が一番電話に出てくれるんです。

垣内 電話のつながる確率は上がったのですか?

宮崎 早いほうがつながるというのは結果として出ていますね。それまでは、すごく低い確率の事故を気にしすぎているところがあって。メールもオプトアウトは1%未満なので気にしなくてもいいと思いますし、電話したら切られるということを一度経験してしまうと、それを重く感じてしまう。だからどんどんやっていこうと。

ブランディングとコンバージョンの両立

垣内 広告に関しては、営業推進部やマーケティングの方たちがずっとやってきたことだと思いますが、最近は積極的に行っている印象です。元々課題感などはなかったのですか?

宮崎 課題感に気付けていなかったというのが一番正しいと思います。単純に、バナー広告からフォームに飛ぶ。そのフォームの長さ、登録のしづらさというところを、WACULさんにアドバイスをいただいて改善しました。SELECTの場合は、そこを最短にしていくことと、バナー広告をクリックして表示されるファーストビューときちんと連動して、望んだものがリンク先のページで表現されているということは、すごく学びになりました。

山中 ブランディングとコンバージョン獲得は両立するのかという議論なんだと思います。

垣内 ブランディングは攻めと守りの両方あると思っていて。会社のブランドが落ちるようなことはやらないというのは当然なので、Webサイト全体でも変なことはやりません。一方、攻めのブランディングは、Webサイトで行うのは相当難しいと思っています。おしゃれにしたからといってブランド価値が上がるとは言えませんし。みなさんは、どうしたらブランド価値が上がると認識されていますか?

西原 ブランディングとコンバージョンは対立するものではないと思っていて。簡素なサイトだからブランド毀損するかといったらそうでもないですし。さっきおっしゃったとおり、思考せずにスムーズに使えるUI/UXは、むしろポジティブに捉えられることもあると思います。いろいろなところに、LPを簡素にしましょうと持っていくと、ブランド毀損すると言われることが多いのですが、そこは対立構造ではないという感覚はもっています。

PDCAを回して小さな成功を積み重ねていく

垣内 簡素なページだと、仕事やってない感がありますよね。それを説得するためにはどうしていますか。

西原 とにかくミニマムでとりあえずやってみませんかという提案をします。ミニマムスタートで、クイックウィンで結果が出ると、これでいいんだという安心感が得られます。そうすると、担当の方も上司や周囲の方にポジティブな報告をしてくれるというサイクルができます。

垣内 担当者は、数字で勝負するのが怖かったりするんですよ。一方、作りましたという作業量の勝負は絶対成功が見えているので安心なんです。成長に向き合うのか、やった感に向き合うのかというのは、難しいポイントなんです。

山中 週次でのPDCAの継続が、失敗も含めて本当の成果に繋がると思います。

今後の展望

垣内 三井ホームさんの今後の方向性についてお聞かせください。

山中 2023年の5月くらいから全国展開したばかりですが、この商品自体は社内競合しているんですよ。私個人的には、社内競合をすることは健全だと思っています。社内で磨きあうことで、注文住宅と規格住宅の両輪で業績が上がるようにしたいと考えています。

垣内 「&Marketing」としては今後どのような方向性を目指していきますか?

西原 マーケティングの勘所がわかった人が増えて、ムダな作業をなくして効率化していきたいという思いはあります。「&Marketing」自体は、三井ホームの良い事例をほかの事業部やグループ会社にも展開していく活動をしたいと考えています。

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