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2023.08.09

大前提、Webサイト制作事業は「労働集約ビジネス」である。「予算が潤沢である」など制作会社にとって魅力的な案件でなければ、優秀なデザイナーやディレクターがアサインされることはまずない。現に弊社の研究レポート「予算の少ないWebサイト制作は失敗する?Webサイト制作の実態調査」では、予算の少ないWebサイト制作は成功確率が下がることが明らかになっている。
また、仮に予算感がズレていなかったとしても「制作会社からお断りされる」ケースはたびたび存在する。例えば、「この担当者とコミュニケーションをとるのは随分と疲弊しそうだ」と認識された場合などだ。
そこで今回、優秀なデザイナーやディレクターに担当してもらい成果を出すためには「発注者はどのように振る舞うべきか」を、制作会社側にアンケートをとることで調査した。
依頼主から提示してほしい条件(RFPの項目)として「必ず欲しい」という回答が過半数を超えたのは「Webサイトの目的」「納期」「予算」の3項目のみ。「リニューアル後の想定サイトマップ」「リニューアル後の想定ページ数」などは「不要(提示されても意味がない)」が20%を超えた。
RFPを確認したときに「ぜひ受けたい」と感じるのは、「予算が大きい案件」(60.0%)よりも「自社の強みが発揮しやすそうな案件」(90.9%)という回答のほうが多かった。「受注確度が高い案件に対して前向きである」とも捉えられる。
制作会社の半数以上は「戦略策定」と「総合提案力」の2つを自社の強みとして挙げた。つまり多くの制作会社は「目的達成のための道筋を練り、総合的に提案できる案件」を好む傾向があると言える。なお「戦略策定」を強みに挙げなかった制作会社は、「デザイン」推しか「保守運用」推しに分かれた。
RFPを確認したときに「あまりやる気がでないな」と感じる案件の第1位は「目的に対し、Webサイト制作の必要がないと感じるもの」(75.8%)。また、案件を断る場合においても同様の理由が上位にあがっている。発注者側が設定した目的と手段がズレている、あるいはそもそも目的が不明瞭であるケースが多い証拠である。
「コンペ」や「受注前におけるデザイン案の提出(デザイン提案)」は「ぜひ受注したい企業や案件の場合のみ受ける」という回答が半数を占めており、「一切受けない」というスタンスの制作会社も1〜3割存在した。つまり制作会社にとってよほど魅力的な案件でなければ「コンペ参加」「デザイン提案」を求めた時点で断られることになる。
依頼主から “詳細な説明を聞いた後” にお断りした理由として多かったのは「お客様がこちらからの提案を聞き入れてくれる素振りがなかったから」(47.0%)。発注者のコミュニケーションがいかに成約に影響するかが伺える。
発注者側へのアンケートにおいて、「制作会社から “依頼内容とは異なる提案” をもらったことがある」と回答した人は35.4%。その提案内容として多く挙がったのは「サイトリニューアルだけでなくコンテンツ作成も注力すべき」(41.2%)や「全面リニューアルではなく部分リニューアルで十分」(23.5%)、「広告配信も注力すべき」(23.5%)。目的に対してサイトリニューアルという手段が必要十分ではないからこそ、こうした提案が発生していると言える。
直近3年間でWebサイト制作を提案した、あるいは依頼した方を対象に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼した。

制作者66人の属性は以下のとおりである。


コーポレートサイトの制作費目安は「100万円以上300万円未満」と回答した企業が39.4%と最も多かった。
なお、制作費は従業員数と相関がある。100名以上の制作会社であれば過半数が「500万以上」の高価格帯に該当し、個人事業主〜10名未満の会社であれば9割5分「500万以下」である。

案件の獲得ルートは「既存顧客のリピート」(74.2%)と「顧客からの紹介」(71.2%)が大多数を占める。また「500万以上」の高価格帯の会社に絞って数字を見ると、「指名(社名)検索での流入」が「顧客からの紹介」と並び2位にランクインする。

RFPの項目として「必ず欲しい」が過半数を超えるのは「Webサイトの目的」「納期」「予算」の3つのみで、それ以外は「あれば欲しい」程度だった。特に「リニューアル後の想定サイトマップ」「リニューアル後の想定ページ数」「制作会社の選定基準」は「不要(提示されても意味がない)」が20%を超えている。
「制作会社の選定基準」のみ比較的意見が割れているが、この回答は「コンペへの参加意欲」と連動する。当然のことながらコンペ積極参加派は「必ず欲しい」と回答し、コンペ消極派は「不要」と回答する傾向があった。

「予算が大きい案件」よりも「自社の強みが発揮しやすそうな案件」に対して「ぜひ受けたい」と感じる制作会社のほうが多かった。「500万以上」の高価格帯の会社に絞って見ても、同様の結果である。

RFPを確認したとき「あまりやる気がでないな」と感じる案件の第1位は「目的に対し、Webサイト制作の必要がないと感じる案件」(75.8%)。発注者側が設定した目的と手段がズレている、あるいはそもそも目的が不明瞭であるケースが多い証拠である。
また、上2つの回答結果から「予算が大きいかどうか」よりも「自社の強みが発揮しやすいかどうか」が制作会社のやる気に大きく影響を与えるということがわかった。「自社の強みが発揮しやすい案件」とはすなわち、「受注確度が高い案件」であるとも言える。

「自社の強み」として多くの票を集めたのは、「戦略策定」(68.2%)と「総合提案力」(54.5%)。意外にも、高価格帯の制作会社でなくとも同様の傾向が見受けられた。
つまり半数以上の制作会社は「目的達成のための道筋を練り、総合的に提案できる案件」に対して「自社の強みが発揮されるため、ぜひ受けたい」と感じることになる。

参考までに、どの強み同士がセットで選択されているのかを一覧化した。上記の表は、「A(列)を選んだ人のうちB(行)も一緒に選択している割合」を洗い出し、数値が高い箇所を着色したものである。
「戦略策定」とセットで選択される項目として特徴的なのは「成果創出」や「顧客調査」である。
逆に「戦略策定」とセットで選択されない項目として顕著なのは、「デザイン」と「保守運用」の2つである。「デザイン」は「フロントエンド」や「豊富な制作実績」と、「保守運用」は「セキュリティ」とセットで選択されることが多い。
つまり制作会社の得意領域は以下の3つに大別できる。
戦略策定推し:成果創出のための戦略策定が強み
デザイン推し:デザイン&フロントエンド技術と豊富な制作実績が強み
保守運用推し:高セキュリティな保守運用体制の構築が強み
なお、アンケート回答者が「営業/プランナー」「マーケター」の場合は戦略策定推しがさらに強まり、「Webデザイナー」「エンジニア」の場合は弱まる傾向があった。提案に参加する人たちの職種からも得意領域を推測することができるだろう。


「予算や納期が合っていないから」「リソース不足だから」を理由に断るケースが多いのは当然のことである。
着目すべきは、「コンペ参加」「受注前におけるデザイン案の提出(デザイン提案)」を求められたから断ったケースが多々あること。また、詳細な説明まで聞いたものの「お客様がこちらからの提案を聞き入れてくれる素振りがなかったから」という理由で断ったケースが47.0%も存在することである。


「コンペには一切参加しない」が13.6%、「デザイン提案は一切受けない」が31.8%も存在する。それに「ぜひ受注したい企業や案件の場合のみ提出する」という回答が半数を占めていることを踏まえると、制作会社にとってよほど魅力的な案件でなければ「コンペ参加」「デザイン提案」を求めた時点で断られることになる。
なお、コンペやデザイン提案への参加意欲は従業員数と相関がある。規模が小さい制作会社ほど参加に消極的であり、シンプルにリソース不足が起因していると考えられる。

受注後に後悔した案件の上位は「契約内容が一部曖昧だったせいで、追加料金なく想定以上の工数が発生した」(56.1%)、「お客様のコミュニケーションが感情的で疲弊した」(54.5%)。また、「デザイン確定後に新たな確認者が現れてひっくり返された」「デザインの修正依頼が感覚的でやり取りが何度も発生した」など、デザインチェックに関する困りごとに面している人も50%強存在しており、1人あたりの平均選択数は3を超える。
こうした苦い経験が繰り返されそうな案件であれば、当然断られることになるだろう。
以下3つの質問については、発注者側48人に回答してもらった。


「制作側から “依頼内容とは異なる提案” をもらったことはある」と回答したのは35.4%。その提案内容として多く挙がったのは「サイトリニューアルだけでなくコンテンツ作成も注力すべき」(41.2%)だった。
「全面リニューアルではなく部分リニューアルで十分」(23.5%)、「広告配信も注力すべき」(23.5%)といった提案が続くことを踏まえると、目的に対してサイトリニューアルという手段だけでは不十分であるケースがたびたび発生していると言える。

結果として「その提案を受け入れた」のは41.2%に留まった。ただし予算や納期の都合でどうしても取り入れられなかっただけで、「たしかに必要な提案内容である」とポジティブに受け止めている人は47.1%存在した。
当調査において、制作会社の75.8%が「目的に対してWebサイト制作の必要がないと感じる案件」に遭遇しており、適宜お断りしていることがわかった。また、「サイトリニューアルだけでなくコンテンツ作成や広告配信にも注力すべき」「全面リニューアルではなく部分リニューアルで十分」といった、RFPとは異なる提案をおこなうケースもたびたび見受けられる。これらは、発注者側が設定した目的と手段がズレている、あるいはそもそも目的が不明瞭であることが多い証拠だ。
いま達成したいことはなにか? そのために「サイト制作」は必要なのか? 制作会社へ相談する前に改めて考えてみよう。もし大目的が売上向上であるならば、営業・マーケティング全体に視野を広げ、適切な手段を取捨選択すべきである。
いざサイト制作を進める場合、RFPは「Webサイトの目的」「納期」「予算」だけでよい。というのも、制作会社の多くは「戦略策定」「総合提案力」を自社の強みと捉えており、「目的達成のための道筋を練り、総合的に提案できる案件」を好む傾向があるからだ。現にRFPの必須項目として半数以上の票が集まったのは上記3つだけである。
ただし、「戦略策定」ではなく「デザイン」や「保守運用」を自社の強みと捉える制作会社も一部存在する。「ぜひ受けたい」と思ってもらうためには「自社の強みが発揮しやすそうな案件」だと認識してもらうことがキーとなるため、発注者側は相手の得意領域を把握するよう心がけよう。
「コンペ」や「受注前におけるデザイン案の提出(デザイン提案)」は一切受けない制作会社が1〜3割存在し、残りの大多数は「ぜひ受注したい企業や案件の場合のみ受ける」と回答している。つまり、制作会社にとってよほど魅力的な案件でなければ「コンペ参加」「デザイン提案」を求めた時点でたいてい断られてしまうということだ。多くのパートナー候補を失うリスクを背負ってでもやる必要があるかどうか、今一度考えるべきである。
制作会社の47.0%は「お客様がこちらからの提案を聞き入れてくれる素振りがなかったから」という理由で、詳細な説明を聞いたあとに案件を断った経験がある。「予算や納期が合っていないから」「リソース不足だから」という理由で断られるのはある程度仕方ないが、コミュニケーションの課題は発注者側の努力で解決できる部分だ。
また、「お客様のコミュニケーションが感情的で疲弊した」「デザイン確定後に新たな確認者が現れてひっくり返された」など納品中に苦しんだ経験を持つ人も多く、こうした苦い思い出が繰り返されそうな案件であれば当然断られる。優秀なパートナーとタッグを組みWebサイトで成果を出したいのなら、「気持ちのよいコミュニケーションがとれる客であること」がもはや必須条件である。
ビジネスにおいて「顧客の気持ちを理解する」というのは必要不可欠なことだと多くのビジネスパーソンは理解しているが、それは自社のビジネスを支援するパートナー企業に対しても同様である。
ウェブサイトのリニューアルや改善を成功に導き、投資に値する成果を得たいのであれば、まずその可能性が高いパートナー選び(制作会社選び)から始めないといけない。その時、パートナーに断られる条件が多い企業ほど、制作会社の選択肢がなくなる。そして成果が得られる可能性は遠のく。
制作会社といっても、多くの企業と同じように、社員の労働環境やメンタル問題に取り組んでいる。売上や利益は重要だが、それだけを見て仕事を請けているわけではない。労働環境や社員のメンタルに悪影響を与える可能性がある仕事の依頼は、例え発注金額が多くとも、避ける傾向にある。コミュニケーションがとりにくい企業、高圧的な企業、話を聞いてくれない企業、発注者意識が強く上下関係にシビアな企業、トップダウンが強すぎて振り回されそうな企業。こうした企業はよほどのブランド力がないと、多くの制作会社は避けるだろう。
また、目的が不明確で、やりがいが感じられない仕事も、社員のモチベーションを下げる可能性があるため、取引に消極的になるだろう。制作会社の中では、こうした時の「失礼のない辞退のテクニック」の情報交換がなされることがある。それほどまでに、顧客選び、仕事選びに対して慎重である。なぜなら、相性の悪い顧客と仕事をすることは、組織の求心力の低下や社員の離職に繋がるからである。
このような背景があった上で、「コンペ」や「デザイン提案」を無償で依頼するほど、自分たちは発注企業として魅力的なのだろうか?ということを自問自答する必要があるだろう。このような相手の立場に立った視点は受発注の関係に限らず、企業間取引における基本である。これを理解していない企業は、回りまわって結局は色々な機会を失っていくはずである。
また、調査の主題であるRFPについて。私も数多くのRFPをこれまで見てきたが、「いいRFPだな」「的を射ているな」と感じたことがほとんどない。特に専門家不在で自社だけで考えたRFPは、大抵的外れな目的が設定されていたりする。
ウェブサイトへの投資は、積み重なると決して安くはない投資になるはずである。その大方針を決めるのであれば、その段階から専門家に入ってもらった方がいいだろう。では、その信頼できる専門家をどう選べばいいのか?という問題に行き着く。おそらくそれはコンペやデザイン提案では選べない。自社の組織体質やネットワークなどを活用して、自社に相応しいアドバイザーを見つけてくるしかないだろう。難しい所だが、手を抜いてはいけないポイントだと思う。医者が不在の状態で手術の方針を決めてしまうことがないようにしたいものである。
Webサイト制作のRFPをいただいても、その大半は読むに値しない。なぜならそこにクライアントの真意はないからである。Webサイト制作やリニューアルとは、予算を獲得するための口実にすぎないことがほとんどだ。「リニューアル」という仕事は、成果物が分かりやすいため、社内で予算を取る合意が得やすい。
担当者はWebサイトのデザインを変えることに何ら興味がなくても、予算を取るために二枚舌三枚舌の嘘をつき、それがRFPに転記されていることがある。予算を取る真の目的は、(1)成果を上げたい、(2)老朽化したシステムを刷新したい、(3)Webサイトの目的を決めたいなどが多い。もちろん、全社リブランディングのために、Webサイトのトンマナ刷新そのものが目的になることもあるが、これはむしろ例外的といえる。
(1)の目的で、成果を上げたい場合、改善すべきページは主要2~3テンプレートのみだ。訪問数の多いページと、フォーム周りだけ改善すれば、CV数が増える。コンテンツを大量に増やせば訪問数も増えるが、これは運用フェーズで行ってもよい。しかしこの成果向上の方針をクライアントが知らず、的外れな依頼がなされている場合も多い。
(2)の目的で、老朽化したシステムを刷新したい場合、当然ながら、できるだけ現行ページはいじらない方がコストがかからない。ただそれだけでは「リニューアルした感」が出ず、上席に叱責される可能性がある。どうせ上司はPC版のトップページしか見ないのだから、その1ページだけ「変わった感」を演出すればよい。これが最適解だが、そこまで割り切ってゴールイメージを持てているクライアントは少ない。
(3)の目的で、Webサイトの目的が分からないので決めたいというケースは、意外に多い。クライアント自身、何のためにWebサイトが存在しているか納得しておらず、KPIも曖昧な状況で、なんとかしたいという思いから、リニューアルを依頼してくる。このケースも、もちろんのことながら、クライアントにゴールイメージは一切ない。
このようにWebサイト制作が依頼される背景を鑑みると、RFPとは、ゴールイメージが曖昧なままに、予算だけ獲得する口実を作ってみましたという、嘘の作文にすぎない。クライアント自身も、社内で予算をかき集めるために、何が嘘だったかもわからなくなっているケースがある。そうなれば、RFPで見るべきは「予算」と「納期」というクライアントの覚悟だけだ。「目的」すらも8割引くらいで見たうえで、クライアントの真意を読み解き、成功へと導くのが制作会社のなすべき仕事である。
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