研究レポート・対談

2022.09.29

「ながら見」が7割。BtoBオンラインイベントの実態調査

調査に至った背景

オンラインイベントはなぜ受注につながりにくいのか

2020年以降、自粛を余儀なくされた展示会やオフラインイベントの代替手段として爆発的に広がった「オンラインイベント」。企業側はリード獲得のために積極的に開催し、参加者側は自宅から1クリックで気軽に参加するようになった。

しかしながら、オンラインイベントに対して「リードは獲得できるものの受注につながらない」と悩む企業は少なくない。その原因を探るべく、実際のところBtoBオンラインイベントはどのように視聴されているのかを調査した。

調査結果 – サマリ

オンラインイベント参加者の93.8%は年3回以上繰り返し参加する

オンラインイベントに1回以上参加したことがある人の93.8%は、1〜2回に留まらず繰り返しオンラインイベントに参加する。経営層であっても大手企業務めであっても、同様の傾向が見受けられる。

オンラインイベント参加目的は圧倒的に「ノウハウを知るため」

ほぼ全員(99.4%)が「業務に役立つノウハウや事例を知るため」にオンラインイベントへ参加したことがあると回答。「商品サービスの導入を検討するため」に参加したことがある人は40.7%に留まった。

イベント開催を知るきっかけは81.5%が「メール」

オンラインイベントの開催を知るきっかけは「メール」が約8割と圧倒的に多い。ハウスリスト外の新たなリードを増やしたいのなら、SNSで露出を増やすか、共催相手のハウスリストからの集客に期待するしかない。

満足度は「求めていた情報」「新たな情報」かどうかで決まる

満足度の高低は「求めていた情報を得られるか否か」「ここでしか知れない新たな情報を得られるか否か」で決まる。「業務に役立つノウハウを求めて参加したのに、商品サービスの紹介ばかりだった」は満足度を下げる典型的なパターンだ。

オンラインイベントは68.5% “ながら見” される

オンラインイベントを終始集中して視聴している人は全体の31.5%しかいない。満足度が高いほど集中して視聴される傾向があり、満足度がとても高い人と普通の人を比較すると「最初から最後まで画面を見ながら集中して聞いた」人の割合には4.07倍も差がある。

満足度が高いと商品サービスの導入意欲が1.51倍高まる

満足度が高いほど、登壇企業の商品サービスに対して「すぐに導入したいと思った」「機会があれば導入したいと思った」といったポジティブな反応を示す人の割合が高まる。満足度がとても高い人の導入意欲は、満足度が普通の人の1.51倍も高い。

約8割が「アーカイブ動画/レポート記事の閲覧経験がある」と回答

イベントアーカイブ動画は約9割、レポート記事は約8割が閲覧/活用したことがあると回答した。これらは「リアルタイム参加できなかった」場合にもっとも閲覧される。

調査結果 – 詳細

調査結果の詳細は、以下3パートに分けてレポートする。

Ⅰ.いままでの人生で参加したイベントに関する調査

Ⅱ.最後に参加したオンラインイベントに関する調査

Ⅲ.イベントアーカイブ動画・レポート記事に関する調査

回答者属性

今回のアンケート回答者162人の属性は以下のとおりだ。

Ⅰ.いままでの人生で参加したイベントに関する調査

オンラインイベントの参加回数と参加目的

オンラインイベントに1回以上参加したことがある人の大多数は、1〜2回に留まらず繰り返しオンラインイベントに参加していることがわかった。年に13回以上=1ヶ月に1回以上の高頻度で参加している人は34.0%も存在する。

役職別に見ていくと、部長や役員層も積極的に参加していることがわかる。

従業員数別で見ても、中小・大手問わず積極的に参加している。とくに101〜1,000人規模の中堅企業におけるオンラインイベント参加が活発だ。

ほぼ全員(99.4%)が「業務に役立つノウハウや事例を知るため」にオンラインイベントへ参加したことがあると回答した。また、「商品サービスの導入を検討するため」に参加したことがある人は40.7%に留まった。

オフラインイベントの参加回数と参加目的

依然としてコロナ禍にある2021〜22年においては、オフラインイベントの参加回数は「0回」が65.4%と圧倒的に多かった。

役職別に見ていくと、オフラインイベントは役職が上がるほど参加回数が伸びる。

従業員数別で見た場合には、特筆する傾向は見受けられなかった。

オンラインイベントと同じく「業務に役立つノウハウや事例を知るため」(74.7%)が一番多いが、続いて「登壇者や参加者と交流するために参加した」と回答した人が40.1%と多く、オンラインイベントの参加目的とはやや傾向が異なる。役職が上がるほど参加回数が多いことにも頷ける結果だ。

満足度の高い/低いオンラインイベント

大多数の人が満足度の高いイベント、低いイベントどちらも経験している。

満足度が高いオンラインイベントのコンテンツとして最も票を集めたのは「業務に役立つ独自のノウハウを紹介する」(75.3%)。満足した理由に「ここでしか知れない貴重な情報だった」(55.6%)が挙がっていることからも、“情報のオリジナリティ” は満足度に寄与すると言えるだろう。

一方、満足度が低いイベントのコンテンツとして最も票を集めたのは「商品サービスを紹介する」(56.8%)だった。

満足度が高い理由と低い理由をセットで見ていくと、満足度の高低は「求めていた情報を得られるか否か」「ここでしか知れない新たな情報を得られるか否か」で決まると言える。「業務に役立つノウハウを求めて参加したのに、商品サービスの紹介ばかりだった」は満足度を下げる典型的なパターンだろう。

ちなみに、満足度が低い「その他」の理由には「配信環境が悪く聞き取りづらかった」「登壇者同士の身内ネタが多かった」などの意見も見受けられた。

なお、「この企業/登壇者はまた同じことを話しているな」とガッカリした経験があると回答した人は60.5%存在した。

1回以上イベントに参加している人は繰り返し他のイベントにも参加する傾向があることを踏まえると、頷ける結果だ。

Ⅱ.最後に参加したオンラインイベントに関する調査

ここから先は “最後に参加したオンラインイベント” に絞り、さらに詳細を調査した。

申し込み理由

イベントを知ったきっかけは「メール」が81.5%と圧倒的に多い。ここには媒体社が提供するメール広告等も含まれるだろうが、基本的にはハウスリストに配信されるメルマガだろう。

この結果は、「オンラインイベントで新たなリードを獲得する手段は限られている」とも捉えられる。SNSで露出を増やすか、あるいは共催相手のハウスリストからの集客に期待するかしかない。

申し込み理由は「業務に役立つ情報を得られると思ったから」が93.2%と圧倒的に多かった。続いて「ユニークでおもしろそうなテーマだったから」「話を聞いてみたい登壇者・登壇企業がいたから」が30%強で並んでいる。

満足度

直近で参加したオンラインイベントに対し、全体の76.5%の人が「満足度は高い/とても高い」と回答した。一方、「満足度は低い/とても低い」と回答した人は2.47%に留まった。

満足度が高い・低い理由に関しては、前半の「いままでの人生でもっとも満足度が高い・低いイベントの理由」と大きく相違なかった。

ちなみに今回、弊社WACUL主催のオンラインイベント参加者に対しても同様のアンケートを実施した。コンテンツ別の満足度は以下のとおりだ。

独自性・エンターテイメント性を重視した「BtoBデジマLIVE診断イベント」は、ありがたいことに特に高い満足度を記録した。

※BtoBデジマLIVE診断イベントの様子はこちら: #1 / #2 / #3

以下の質問に対する回答は、満足度とクロス集計をおこなった。

イベント形式

全体の76.5%が登壇企業2社以上、共催あるいはゲスト登壇型のイベントである。

1社のみ登壇(個社開催)か、2社以上の登壇(共催やゲスト登壇型)で比較すると、2社以上のほうがわずかに満足度が上がる傾向にある。

2社以上の場合、「商品サービスの紹介ばかり」「話が単調で眠くなる」といった、満足度を下げる状況を回避しやすいことが影響しているだろう。

プレゼンテーションのみが54.3%と半数以上を占める。※その他に分類されるのは弊社WACULの「BtoBデジマLIVE診断イベント」である

トーク形式別の満足度に特に傾向はなく、バラつきがあった。

数十名〜数百名規模のオンラインイベントが全体の72.9%を占めた。

規模が大きいほうが比較的満足度が高い傾向がある。規模が大きい=集客力が高いため、コンテンツに魅力があると想定される。

視聴態度

オンラインイベントを終始集中して聞いている人は全体の31.5%に留まり、約7割は「ながら見」している。

こちらの回答は、満足度別に視聴態度がどう変わるのかを深堀りした。

満足度が高いほどしっかり集中して視聴されている傾向が見てとれた。満足度がとても高い人と普通の人を比較すると、「最初から最後まで画面を見ながら集中して聞いた」人の割合は4.07倍も差がある。

購買意欲の変化

「すぐに導入したいと思った」「機会があれば導入したいと思った」など、商品サービスの導入に対してポジティブな反応を示した人は全体の33.9%だった。

こちらも満足度別に深堀りした。

満足度が高いほど、「すぐに導入したいと思った」「機会があれば導入したいと思った」など商品サービスの導入に対してポジティブなリアクションを示す人の割合は高まることが明らかになった。満足度がとても高い人の導入意欲は、満足度が普通の人の1.51倍も高い。

また、せっかく満足度は高いのに「そもそもイベント中に商品サービスの紹介が一切なかった」というケースも見受けられる。商品サービスの紹介に偏重するとイベントの満足度は下がるが、だからといって「一切紹介しない」と機会損失が起きる可能性があると言える。

Ⅲ.イベントアーカイブ動画・レポート記事に関する調査

最後に、イベントアーカイブ動画・レポート記事の実態についても調査した。

アーカイブ動画

イベントレポート記事

アーカイブ動画を閲覧/活用したことがある人は92.6%と、イベントレポート記事(79.0%)よりも多かった。ただしアーカイブ動画の場合、リアルタイム参加の視聴態度よりも「ながら見」率が11.5%も上がっている。

また、いずれも「リアルタイム参加できなかったので閲覧した」という用途が多く、「(イベントの存在は知らなかったが)コンテンツに興味をもって閲覧した」は20%前後に留まる。イベントアーカイブ動画・レポート記事の主な役割は取りこぼし防止にあり、新しい接点を創出するコンテンツとしてはやや弱いと言えるだろう。

調査概要

オンラインイベント参加者を対象に、メルマガやSNSにおいてアンケート協力を依頼した。

本調査からの提言

オンラインイベントは基本 “ながら見” される。画面に集中してほしければ満足度を上げるしかない

オンラインイベント参加者の約7割は「ながら見」している。また、視聴態度と満足度には相関があり、満足度が高いと「最初から最後まで画面を見ながら集中して聞く」割合が高まることがわかった。

会場に拘束されるオフラインイベントであれば、多少講師がだらだら喋ったとしても離席することなく最後まで話を聞くだろう。しかしオンラインイベントの場合、「つまらない」と感じたら即刻別の業務が開始される。画面に集中してもらうためには、満足度を上げるしかないのだ。

商品サービスの導入意欲を高めて受注につなげるためにも、満足度の向上は必須

満足度が高いと、登壇企業の商品サービスに対して「すぐに導入したいと思った」「機会があれば導入したいと思った」といったポジティブな反応を示す人の割合も高まる。満足度がとても高い人の導入意欲は、満足度が普通の人の1.51倍も高い。

つまり受注につなげるためにも、イベント満足度の向上は必須である。

満足度は「求めていた情報」「新たな情報」かどうかで決まる。過度な商品サービス紹介や釣りタイトルはNG

肝心の満足度は、「求めていた情報を得られるか否か」「ここでしか知れない新たな情報を得られるか否か」で決まる。

そもそもオンラインイベントには、大多数の人が「業務に役立つノウハウや事例を知るため」に参加しており、「商品サービスについて知りたい」人は少数派だ。イベント中に商品サービスの説明ばかりおこなえば、満足度は下がって当然である。受注につなげるためによかれと思ってやっていることが、逆効果となっているのだ。

また、「こんな情報が得られるだろう」という参加者側の期待値は、イベントタイトルや告知内容で決まる。集客のために過激でユニークなタイトルをつけたとしても、中身が伴わなければ満足度は下がる一方である。

イベント集客には「メール」「共催」をフル活用せよ

オンラインイベントの開催を知るきっかけは「メール」が約8割と圧倒的に多いため、集客にはハウスリストへのメルマガ配信をフル活用すべきだ。一方、ハウスリストの掘り起こしではなく新たなリードを増やしたいのなら、SNSで露出を増やすか、あるいは共催相手のハウスリストからの集客に期待するしかない。

株式会社才流 代表取締役社長 栗原氏のコメント

満足度の高いイベントは主催企業の商品サービスに対する購買意欲を1.51倍高めるという結果があったが、BtoBマーケティングの実務上で注意したいのは、主催企業の商品サービスに対して「すぐに導入したいと思った」割合が4.3%だったことだ。

4.3%という数字が示す通り、イベントに参加した見込み客が主催企業の商品サービスに対して興味を持ち、すぐに問い合わせや商談、発注を検討する確率は低い。読者の皆さんも、オンラインイベントに参加して、すぐに商品サービスを導入した経験がある方はほとんどいないのではないだろうか。

にも関わらず、イベントを開催した企業が当月や翌月の商談数や受注数で成果を計測し、「オンラインイベントは効果がない」と切り捨ててしまうケースを数多く目にしてきた。

企業がイベント施策で成果を出すためには、本レポートで明らかになったように見込み客に対して「求めていた情報」「新たな情報」を提供することに加えて、見込み客との継続的かつ段階的なコミュニケーションが重要になる(当社で『階段設計』というフレームワークで説明している)。

具体的には、商品サービスを認知してから購入に至るまでの各フェーズにおいて見込み客が抱える課題感や情報ニーズに対して、応えていく必要がある。

さらに見込み客の情報収集源はオンラインイベントだけではないことを忘れないようにしたい。見込み客は、書籍や記事コンテンツ、展示会、知人、懇意の営業パーソンなど様々なチャネルで、業務に役立つ情報収集や商品サービス導入の検討を行っている。マーケターとして事業に貢献するためには、オンラインイベントを含む様々なチャネルで、見込み客に満足してもらえるような「求めていた情報」「新たな情報」を提供し、自社が選ばれる確率を最大化することが重要だ。

株式会社JX通信社 松本健太郎氏のコメント

コロナ禍をキッカケに、わずか2年で「月1回以上ウェビナーを視聴している人が”3分の1”もいる時代」となりました。世は正に大ウェビナー時代!主催者としても参加者としても、身体的・精神的にウェビナーは「楽」ですよね。こうしたイベントに関しては、コロナ前に戻れなさそうです。

一方で「手軽さ」ゆえか、「情報のオリジナリティ不足」「登壇者のネタ不足」すなわち「造り込みの甘さ」が目立ちます。私はこれを「急にブレイクした若手芸人現象」と呼びます。TV露出は増える、しかし大爆笑を呼ぶネタが限られる、結果的に数少ないネタを擦り続けるが故に満足度が下がり、飽きられてしまうのです。(最近はそれに備えて、あえて露出数をコントロールする芸人さんも増えてますね)

なにより、ウェビナーが乱立して主催者も登壇者も摩耗していませんか? 調査によると、流入の大半は新規顧客ではないと分かりました。満足度の高くないウェビナーはむしろ逆効果だと分かりました。量だけでなく質、単なるサービス紹介だけでなく新知識・新発見に変化すべきでしょう。これからますます「聴衆から選ばれる」時代です。今回の調査結果は、方針を見直すキッカケになるのではないでしょうか。

WACUL 代表取締役 垣内のコメント

このレポートで一番重要な点は「満足度の高いウェビナーは、サービス導入に繋がりやすい」ことが証明されたということだ。逆に言えば、有名な登壇者を寄せ集めただけの「客寄せイベント」は売上に繋がらない。共催相手の顧客リストから、COLDリストがシェアされるだけである。

最近は同じようなテーマのウェビナーが溢れている。テーマを尖らせれば集客しやすいが、期待値も高まるため「求めていた情報を得られた」という感想は出づらくなる。視聴者の期待値を下回れば、即座に「ながら見」されてしまう。イベント主催者側に求められるのは、兎にも角にもコンテンツの磨き込みだ。視聴者の役に立ち、動画として面白い「作品」に仕上げなければならない。

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